上 下
152 / 160
~グランドフィナーレ~ もう一度、何度でも!

冷蔵庫、何台買うの?

しおりを挟む
「いよっ、色男っ!」

「スケールがデカいっ!」

「大家族っ! 冷蔵庫、何台買うのっ!」

 周囲の人々は酔っ払って拍手したし、皆がやんやとはやし立てている。

 掛け声は段々ボディービル大会のようになり、神使の龍がつられて筋肉ポーズをとり始めた。

「な、なんなんだよ、このさらし者感は……」

 誠は真っ赤になって震えていたが、そこで難波がヘッドロックをかけてきた。

「観念しいや鳴っち。何でも言う事聞いてくれる約束やろ?」

「あーっ……あったな、そういうの」

 誠はされるがままで頷いた。

 白無垢姿の花嫁にヘッドロックされる……一体どんな絵面なんだ、と考える誠だったが、そこであの北海道の倉庫の事を思い出した。

(んっ……!!?)

 誠は急激に青ざめる。

 もしかして……もしかしなくてもだ。あの時難波も思いを告げようとしていたのではないか?

「うわっ! ごっ、ごめん難波、俺、てっきり難波は違うかと思って」

「……あかん。一生許さへん」

 難波は誠を解放し、少し潤んだ目で微笑む。

「覚えときや。こういう娘っ子が、いちばん嫁にええんやで?」

 難波はそっと誠の頬にキスしてきた。

 最後まで気持ちを隠し続けた、照れ屋な彼女らしい口付けである。



 次に声をかけてきたのは鳳である。

「く、黒鷹様っ……!」

 彼女は指を組み合わせ、おずおずと、祈るようにこちらを見つめる。

「あ、あの……実は黒鷹様に、嘘をついておりまして。本当の事を言わねばと」

「ええっ……!?」

 誠は正直警戒したが、鳳は消え入るような声で言う。

「あっ、あのですね……ほんとは私、ぜんぜん今風ナウくないですし……干し柿とか大好きなんですっ……!」

「…………………………」

 誠はしばし固まったが、何とか言葉を搾り出す。

「そっ、それは……予想外ですね」

「ごめんなさい。お詫びにめはり寿司、いっぱい作りますから……!」

 鳳は顔を赤らめて微笑んだ。



「えっと、鳴瀬……くん?」

「は、はいっ……!」

 恐る恐る呼びかける雪菜に、誠も慌てて振り返った。

 彼女の花嫁姿は……ああ、本当に女神様のように綺麗だった。ずっとこの人のこんな姿が見たくて、生きてきたような気がするのだ。

 雪菜は赤い顔で、遠慮がちに尋ねてくる。

「驚いた……?」

「驚きました」

 誠は素直に頷いた。

「でもその、安心しました。やっぱりその……罪悪感が凄かったので」

「まあ、お姉さんを泣かせたんだもの。それぐらいはね?」

 雪菜は満足げに微笑むと、片手の人差し指を立てる。

「こら少年? これからも師弟だから、ビシバシ指導するわよ?」

「はいっ、先生」

 そう言って、誠も雪菜も笑うのだった。



 そこで横手から、ピヨピヨと鳥のさえずりが聞こえた。

 振り返ると、もじもじと遠慮がちな天草が、肩にアマビエを乗せて俯いているのだ。

「え、えっと……その、私もなぜかいるわけだけど」

 天草はもじもじしていた。もじもじもじもじ、もじもじしていた。

 鉄血の才女だとか、鎮西のジャンヌダルクとか呼ばれていたが、結局この人が一番恥ずかしがりなのだ。

 だからアマビエが代わりに呼びかけてきたというわけだ。

「その、お邪魔だったかな……?」

 恐る恐る尋ねる天草に、誠は首を振った。

「大歓迎ですよ、天草さんも、アマビエも」

「……良かった。ちゃんと確かめないとね」

 天草は安堵して微笑み、アマビエは嬉しそうに飛び回り始めた。

 平和になって霊力が回復し、エネルギーも満タンなのだ。

 彼?は天草の肩にとまり、キューティクル、とさえずった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...