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~グランドフィナーレ~ もう一度、何度でも!

参上! 白無垢ーズ!

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 大歓声、大宴会!

 阿波踊りを伴奏ばんそう代わりに繰り広げられる、美味しさとめでたさの嵐・嵐・嵐!

 10年我慢したぶん、皆喜びを爆発させていたし、日本各地の海の幸・山の幸はどれも素晴らしかった。

 ぷりぷりした海産物は新鮮の極みで、食べるだけで全身の細胞が復活しそうだったし、お肉はお肉で食欲にターボをかけてくれた。

 大三島名物と化したワイルドな猪料理・なっちゃん焼きも人気だったが、料理の開発者であるカノンは、なぜか姿が見えなかった。

「カノン……難波達もそうだけど、さっきからいないな」

 誠はさすがに心配になってきた。

 式には出席してくれていたのに、宴会になると姿を消したのだ。

 雪菜さんや鳳さんもそうだったし……やっぱり内心辛かったのだろう。

(招待しないのもあれかと思ったけど……悪い事したかもな)

 そう考える誠の肩に、鶴がそっと手を置いた。

「大丈夫よ黒鷹。みんなは心配いらないわ」

「ヒメ子……」

 誠は鶴を見つめ、改めて彼女の存在に感謝する。

 いつも明るくほがらかな彼女は、常に誠を励ましてくれたし、そんな彼女と共に、自分はこの日本奪還のいくさを駆け抜けてきたのだ。

 …………だが誠がそう思った時だった。

 不意に誠の視界に、奇妙な集団が映った。

 鶴と同じく綿帽子を被った白無垢の花嫁が、何人も移動するのが見えたのだ。

「えっ……!?」

 誠は一瞬混乱したが、そこでやっと思い出した。

 鶴はそもそも、霊気を使って分身するのが得意だったのだ。

「な、何だヒメ子、分身してたのか。会場が広いから、みんなに挨拶してたんだな」

 だが鶴はにこにこしながら首を振る。

「してないわ!」

「えっ!? じゃ、じゃああれは……???」

 硬直する誠に、白無垢―ズしろむくーずは近寄ってくる。

 皆が顔を伏せていたが、綿帽子からのぞく髪はそれぞれに特徴的だ。

 ショートカットの栗色の髪と、ややウェーブのかかった赤い髪。

 輝くような金髪ロングと、それとは対照的な黒髪のくせっ毛。

 同じく長い黒髪でも、うなじで1本にしばったものもあった。

 そのいずれも誠が見知ったものであり、つまり彼女達の正体は……

 そこで難波がたまらず顔を上げた。

「あっはっは、何やの鳴っち、鳩がマシンガン食ったみたいな顔して」

 カノン、雪菜さん、天草さん、鳳さんも顔を上げ、おかしそうに微笑んでいる。

「えっ……ええええっ!? 何やってんだ難波、仮装でもやってるのか!?」

 戸惑う誠だったが、そこで女神達が姿を見せた。

「こういう事なの黒鷹くん。あなたがその気にさせた女性陣、実はとっても傷ついててね。調べてみたら、前に会ってたみたいなのよ」

 佐久夜姫が手を振るうと、虚空に幾つかのタブレット画面が現れた。

 そこに映し出されたのは、それぞれ別の時代の女性のようだったが……その女性陣の顔ぶれは、居並ぶ白無垢―ズにそっくりだった。

 古墳時代の巫女衣裳を着た鳳さん、獣の皮をまとった石器時代の難波などなど……

 やがてそれぞれの映像は続き、ドラマチックな別れのシーンとなった。

 どうも戦いにおもむく場面のようだが……相手役の男の顔は、なぜか全て誠だったのだ。

「えっ、えええええっ!? 全部俺ですか!?」

 驚く誠をよそに、佐久夜姫は話を続ける。

「ヒドいと思わない? 今生だけじゃなくて、いっぱいこの子達を泣かせてきたのよ? 毎回毎回、自分だけが先に死んで、大事な人を置き去りにして」

 ひどいヤツやで、と神使達が言うのを満足げに聞きながら、佐久夜姫は続けた。

「そうそう、酷いのよ。責任をとってもらいたいんだけど、黒鷹くんはもう生まれ変わらないでしょう? だから今生で全部まとめちゃうわけよ」

「いっいや、悪いとは思うんですけど、それは前世とか、前世の前世の事ですし……」

「そういう理屈は、神の前では通じません」

 佐久夜姫は人差し指を立て、イタズラっぽく微笑んだ。

「もちろん今生が終わった後も、みんな黒鷹くんと一緒がいいそうだから。みんなで日本を守ってね?」

 鶴も誇らしげに誠に言う。

「私が言ったのよ黒鷹。お世継ぎが絶えるといけないし、このおみくじの通りなのよ」

「そっ、それって……あの時のくじか」

 鶴が差し出したおみくじを、誠は恐る恐る受け取る。

 それはかつて鶴が引いたおみくじもどき……クイズ霊界百選である。戦国時代の風習たる、側室制度について書かれたものだ。

「で、でも婚姻届は……役所が無理でしょこういうのは」

 だがそこで、会場の上座から声がかかった。

「ヒック! いやその件ですが、確かに受理しましたぞ!」

 第5船団の船団長の佐々木氏であり、今は上機嫌で酔っ払っていた。

 手には誠の書いた婚姻届を持っている。

 更に驚くべき事に、彼の傍には島津さんをはじめ、嵐山さん、船渡さん、伊能さん、二風谷さんといった船団長が勢ぞろいしている。

 彼らは一様に婚姻届を振りながら、赤い顔で叫んでいる。

「ヒック、さすがは三島大明神さんの作った酒だねえ。口当たりが良くて、いっくらでも飲めるってもんだ」

 ボルサリーノ帽を被った伊能がニヤリと笑うと、他の船団長も騒ぎだした。

 ヒック、ヒックと連呼して、もう誰も誠の話を聞いていない。

「困ったわねえ、間違ってそれぞれの船団に受理されちゃったわ。でもしょうがないわよね、政府が6つもあるんだもの」

 佐久夜姫はもう満面の笑みだった。

 息をのむ程の美しさでありながら、お花見の宴のようにおふざけをする時もある。

 桜をつかさどる女神の本領発揮であるが、とにかく誠は翻弄されまくったのだ。

 誠は助けを求めるように岩凪姫を見るが、彼女は口元を笑みの形にした。

「…………ま、そういう事もあるだろうさ」

 そう言って杯を傾ける女神と、手の平のおみくじもどきを交互に見つめ、誠はとうとう観念した。

(だからくじは苦手なんだよっ……)
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