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~グランドフィナーレ~ もう一度、何度でも!

結婚式と手作りの宴会。ささやかな宴……のはずが

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 結婚式……とは言うものの、そこまで盛大なものではなかった。

 あまりお金も無かったし、故郷・大三島の大山祗神社で式を挙げ、すぐ隣にある観光用の飲食広場に、手作りの料理を持ち込んで宴を行うのだ。

 誠は緊張しまくっていたため、式の内容は正直あまり覚えていない。

 白無垢しろむくに白い綿帽子わたぼうしを被り……しかし髪型は長いポニーテールの鶴は、本当に美しく見えた。

 イタズラばかりの普段とは違い、静かな表情で歩を進める彼女は、態度も仕草も文句なしに武家のご令嬢だったのだ。

 神使達が雅楽器ががっきを持ち、みやびな音色を奏でていたし、拝殿の奥に並んだ椅子には、中央に巨体の大山積神おおやまつみのかみ、その両隣に娘の祝凪姫いわなぎひめ佐久夜姫さくやひめが腰掛けていた。

 大山積神おおやまつみのかみは相変わらず寡黙かもくだったが、式の直前には祝凪姫いわなぎひめの頭をぐりぐり撫でていた。

 救国の戦いで娘が大活躍し、皆に認められたのが余程嬉しかったのだろう。

 撫でられる祝凪姫は恥ずかしげだったが、こちらもまんざらではなさそうであり、そんな2人を見守る佐久夜姫も、本当に幸せそうだったのだ。



 宴会場に移動した途端、宮島は大きく伸びをした。

「ああ終わった、緊張したぜ! さあ飯だな!」

「何で宮島が緊張するんだ。ま、隊長もガチガチだったがな?」

 香川はツッコミを入れながら、誠の方にウインクしてくる。

 難波やカノンは先ほどから姿が見えなかったが、地元の女性陣が鶴の周りに集まり、綺麗だねえ、ええお嫁さんやわ、などと褒め称えている。

 鶴はおすましを続けながらも、さもありなん、と満足げだ。



 ともかく一同は宴の準備を進めていく。

 神使達がつまみ食いしながら運んでくる大皿には、定番の鶏やタコのから揚げ。

 炊き上がって湯気を立てる鯛めしやタコ飯。

 蒸した瀬戸貝やムール貝、牡蠣がうず高く積み上げられ、真っ赤にゆだった海老やカニが、風呂上りのような顔で皿に陣取っていた。

 更には大盛りの枝豆、刺身の大皿や鍋料理もどんどん運ばれてくる。

 一見して豪華な食事のようにも見えるが、食材のほとんどは海産物であり、地元の頼れるおじさん達が獲ってきてくれたもの。

 更にそれを経験豊富なおばさんズが調理してくれたため、とにかくお金のかからない宴だったのだ。

 昔の結婚式はこうだったというし、こういう気取らない形の方が、誠も緊張しなくて助かる。

 一応他の船団の面々にも声をかけたのだが、彼らも忙しいらしく、あまり返事はかんばしくなかった。

 それも仕方がないと誠は思う。復興はまだ始まったばかりであり、みんな必死に故郷を再建中なのだ。

 それをこちらの祝い事で長時間拘束するのも気の毒というもの……そんなふうに思ったのだが。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 いきなり轟音が響き渡った。

 テーブルに乗った稲荷寿司も皿ごと跳ね上がり、神使達が協力してキャッチしている。

「な、なんだ!? また敵襲か!?」

 素早く立ち上がり、外に駆け出す誠。宮島、香川も続くのだったが、そこで3人は目を丸くした。

 宴会場からほど近く……公園や観光駐車場のある辺りに、航空輸送機が降り立っていたのだ。

 属性添加機によって垂直離着陸が可能なタイプなのだが……それも1機だけじゃなく、何機も何機も降りてくるのだ。

「なっ、何だこりゃ……航空輸送機? なんでこんなとこに……」

 誠は引き気味で呟くが、たちまち輸送機の後部傾斜板ランプ・ドアが開き、中から人々が飛び出てきた。

 先頭には日に焼けた小柄な少年・壮太がおり、飛び跳ねて手を振っている。

「いよう、待たせたなっ! 志布志隊の壮太様が、サプライズで登場だぜ!」

 彼は巨大な食材ワゴンをガラガラ押している。

「お待たせー、まあ驚かせようと思ったから、待ってはないと思うけどね」

 仲居姿の湯香里が言うと、後ろからマンゴーのワゴンを押した八千穂も顔をのぞかせる。

「そ、そそそうですっ、ほんとは最初から行きたかったんですけど、壮太君が内緒にしようって……!」

 その後ろには晶、キャシー、ヘンダーソンの姿も見える。

「まったく壮太ときたら、考える事が子供だからな」

「でもいいデース、楽しい事は後にとっとくものデスよ!」

「俺達だけかと思ってたが、他の船団も、考える事は同じらしい」

 ヘンダーソンの言葉通り、他の航空機の中からは、各地の人々が降り立ってきた。

 皆、口々に叫んでは手を振って、誰が何を言っているのかは分からない。

 全神連のパイロット達が霊力を使い、空に「おめでとう」の文字を輝かせると、東北のド根性部隊は大漁旗を振っている。

 関東の個性派エース軍団は相変わらず目立っていたが、うち1人はナマズのきぐるみを着ていた。

 白衣のマッドサイエンティスト・筑波つくばは航空機の上で高笑いしていたが、龍恋たつこに引き倒され、ジャイアントスイングで振り回されている。

 ガンマンの柄がデザインされた航空機からは、ひよりとなぎさが飛び出してきて、シチューのおたまを振り上げていた。

 どんな場所にいても目立つこころは、玄太と千春を肩に担いでにこにこしている。

 更には輸送ヘリも降りてきて、迷彩服を着た旧自衛官達が飛び出してきた。

「席が足りない分は、我々がテントを設営するよ。全部任せてくれたまえ」

 池谷中佐……今は大佐だったが、彼は敬礼しながらウインクした。

 たちまち付近の更地や駐車場に張り巡らされたテントには、沢山の調理器具と食材が運び込まれ、おいしそうな料理が作られていく。

 壮太はねじり鉢巻をし、じゃばらに折りたたんだ手紙をさっと開いた。

 それは九州奪還の同盟会議で、鶴が読み上げた料理の目録もくろくである。

 まずは博多とんこつラーメン、とんかつ、佐世保バーガー、からしれんこん、もつ鍋、ちゃんぽん、しっぽく料理……他にもどんどん続いている。

「言っただろ。日本を取り戻したら、うんと食べさせてやるって!」

 壮太が言うと、隣で湯香里が飛び跳ねた。

「そうそう、グルメサミットね! 10年ぶりに開いちゃうんだから!」

「沖縄とアメリカングルメも忘れちゃ駄目デース!」

「日米グルメサミットだな!」

 キャシーとヘンダーソンの言葉に、周囲の人々は大いに盛り上がった。

 向こうでは船団長の佐々木氏、彼と同郷の宇部ちゃんがたらいを掲げ、その中で見事なふぐが踊っている。

「ふぐ、もとい、ふくの調理師免許取りましたよ!」

「そうですとも、不遇を転じて福と為す、それが長州魂ですぞ!」

 佐々木の隣には阿波丸と秘書がいたし、彼らの肩には狸が阿波踊りの格好で乗っていた。

 もうみんなやりたい放題である。
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