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~グランドフィナーレ~ もう一度、何度でも!
音が鳴るならぜんぶ琵琶よ♪
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復興は急ピッチで進み、誠達の生活は目覚しく変化した。
忙しくも嬉しい、充実した日々を送っていたのだが……少し困った事もある。それは鶴との結婚手続きだ。
これはもう何と言うか、全てがなし崩し的に進んだ。逃げられないというのは、まさにこういう事を言うのだろう。
……いや、もちろん逃げるつもりもないし、鶴本人がこの話題を口にするのはいいのだ。照れながらであるし、それは可愛い催促だ。
楽しみね、お世継ぎは5万人ぐらい欲しいわ、などとわけのわからない事を言っているが、それもまだいいのである。問題は、周囲からの苛烈極まるプレッシャーだ。
ディアヌスとの戦い、そして最終決戦を経て、誠の知名度は恐ろしく上がっていたし、それによって会う人会う人が『お姫様とはいつ?』と聞いてくるのだ。
更には元隊員からの連日の電話、特に難波によるシモネタ攻撃。
神使達は誠の肩や頭に乗り、壊れたテープレコーダーのように『姫様と祝言をあげろ~』と囁いてくる。
『稲荷寿司も頼むで~』『モウ待ち切れません』とか言っているので、こいつらはご馳走を食べたいだけなのだろうが、夜な夜な枕元で囁かれる身としてはたまらない。
だがそれらに増して怖いのは、神々からの催促である。
岩凪姫や佐久夜姫はまだマイルドだったが、一番きびしいのは厳島神社の女神三姉妹だった。
あまりにも毎日おいでになるので、鳳さんが誠の家に専用の上座(神座?)を作ってくれたほどだ。
「それでライブ……もとい、式はいつなの勇者くん?」
厳島の女神様がたは上座に座り、いつものようにプレッシャーをかけてくる。
向かって右に座り、熱心に作曲を続けているのが長女の田心姫命。海霧を象徴する神であり、周囲にはうっすらとミストが浮かんでいる。
あの餓霊の毒々しい霧とは違い、朝日を浴びたように輝く霧は神々しかったが、ご本人は琴やらキーボードやらをいじりつつ、満足げに帳面に曲を書き込んでいた。
真ん中の少しイタズラっぽく微笑む女神は、次女の市杵島姫命。弁天様としても知られる通り、日本でもダントツに有名な女神である。
常に琵琶……というか和風のギターらしきものを持ち、大人っぽくてかっこいい女神だが、誠への追及はぶっちぎりで厳しい。
そして左端に座り、腕組みして目を閉じているのが湍津姫命。少しワイルドというかキリッとした印象で、肩には着物を羽織っている。一番長女な見た目なのに、この方が三姉妹の末っ子なのだ。
彼女がぼそっと呟くたびに、後ろに荒波のオーラが見える。このへんは潮流を司る神だからなのだろう。なお彼女は太鼓担当らしく、傍には和太鼓やらドラムの類が置いてあった。
更に女神様がたの席のそばには、神使の鹿がキセルをくわえて香箱座りでくつろいでいる。こいつも完全に他人事なのだ、と誠はうらやましく思うのだ。
いい曲書けたわ、これで式が楽しみね、などとおっしゃる長女の田心姫をよそに、次女の市杵島姫は追及を続ける。
「若いんだから、もう情熱任せで式あげちゃえばいいの。考えたら結婚なんて出来ないし、人生ロックみたいなもんだから」
その言葉を受け、三女の湍津姫は「そう、人生はロック」と呟いてうんうん頷いている。
誠は正座したまま「ええ、はい、それは……」としどろもどろになり、何とか話を逸らそうと試みた。
「そ、それにしてもいいギターですね」
「ありがと、琵琶よ。それでね、」
市杵島姫はウインクして微笑むものの、追及の手は緩めない。
琵琶?をギュインギュイン鳴らしているので、ほんとは式で演奏したいだけなんじゃないかとも思えたが、この三姉妹の神々には、鶴の神器の鏡をくれた大恩があった。
何度も危機を救ってくれた鏡の送り主なので、むげにするわけにいかないのだ。
「……そ、そちらはさすがにキーボードですよね?」
「琵~琶。それはともかく、式場は厳島? それとも大三島?」
そうこうするうちに、三女の湍津姫がとんでもない事を言い出した。
「迷ってるなら、父さまに意見聞くといい」
「と、父さまですか……?」
「スサノオ様だぜ」
鹿がしれっと怖い事を言うので、誠は全身から滝のように冷や汗が流れた。
これは間違いなく殺される。言い逃れをしていたら、秒で叩き殺されてしまうだろう。
「父さま、いつも即決。情熱的」
満足げに頷く湍津姫をよそに、誠はとうとう観念したのだ。
鶴へのプロポーズの場面は……思い出すと恥ずかしすぎるので、また後日語ろうとは思う。
忙しくも嬉しい、充実した日々を送っていたのだが……少し困った事もある。それは鶴との結婚手続きだ。
これはもう何と言うか、全てがなし崩し的に進んだ。逃げられないというのは、まさにこういう事を言うのだろう。
……いや、もちろん逃げるつもりもないし、鶴本人がこの話題を口にするのはいいのだ。照れながらであるし、それは可愛い催促だ。
楽しみね、お世継ぎは5万人ぐらい欲しいわ、などとわけのわからない事を言っているが、それもまだいいのである。問題は、周囲からの苛烈極まるプレッシャーだ。
ディアヌスとの戦い、そして最終決戦を経て、誠の知名度は恐ろしく上がっていたし、それによって会う人会う人が『お姫様とはいつ?』と聞いてくるのだ。
更には元隊員からの連日の電話、特に難波によるシモネタ攻撃。
神使達は誠の肩や頭に乗り、壊れたテープレコーダーのように『姫様と祝言をあげろ~』と囁いてくる。
『稲荷寿司も頼むで~』『モウ待ち切れません』とか言っているので、こいつらはご馳走を食べたいだけなのだろうが、夜な夜な枕元で囁かれる身としてはたまらない。
だがそれらに増して怖いのは、神々からの催促である。
岩凪姫や佐久夜姫はまだマイルドだったが、一番きびしいのは厳島神社の女神三姉妹だった。
あまりにも毎日おいでになるので、鳳さんが誠の家に専用の上座(神座?)を作ってくれたほどだ。
「それでライブ……もとい、式はいつなの勇者くん?」
厳島の女神様がたは上座に座り、いつものようにプレッシャーをかけてくる。
向かって右に座り、熱心に作曲を続けているのが長女の田心姫命。海霧を象徴する神であり、周囲にはうっすらとミストが浮かんでいる。
あの餓霊の毒々しい霧とは違い、朝日を浴びたように輝く霧は神々しかったが、ご本人は琴やらキーボードやらをいじりつつ、満足げに帳面に曲を書き込んでいた。
真ん中の少しイタズラっぽく微笑む女神は、次女の市杵島姫命。弁天様としても知られる通り、日本でもダントツに有名な女神である。
常に琵琶……というか和風のギターらしきものを持ち、大人っぽくてかっこいい女神だが、誠への追及はぶっちぎりで厳しい。
そして左端に座り、腕組みして目を閉じているのが湍津姫命。少しワイルドというかキリッとした印象で、肩には着物を羽織っている。一番長女な見た目なのに、この方が三姉妹の末っ子なのだ。
彼女がぼそっと呟くたびに、後ろに荒波のオーラが見える。このへんは潮流を司る神だからなのだろう。なお彼女は太鼓担当らしく、傍には和太鼓やらドラムの類が置いてあった。
更に女神様がたの席のそばには、神使の鹿がキセルをくわえて香箱座りでくつろいでいる。こいつも完全に他人事なのだ、と誠はうらやましく思うのだ。
いい曲書けたわ、これで式が楽しみね、などとおっしゃる長女の田心姫をよそに、次女の市杵島姫は追及を続ける。
「若いんだから、もう情熱任せで式あげちゃえばいいの。考えたら結婚なんて出来ないし、人生ロックみたいなもんだから」
その言葉を受け、三女の湍津姫は「そう、人生はロック」と呟いてうんうん頷いている。
誠は正座したまま「ええ、はい、それは……」としどろもどろになり、何とか話を逸らそうと試みた。
「そ、それにしてもいいギターですね」
「ありがと、琵琶よ。それでね、」
市杵島姫はウインクして微笑むものの、追及の手は緩めない。
琵琶?をギュインギュイン鳴らしているので、ほんとは式で演奏したいだけなんじゃないかとも思えたが、この三姉妹の神々には、鶴の神器の鏡をくれた大恩があった。
何度も危機を救ってくれた鏡の送り主なので、むげにするわけにいかないのだ。
「……そ、そちらはさすがにキーボードですよね?」
「琵~琶。それはともかく、式場は厳島? それとも大三島?」
そうこうするうちに、三女の湍津姫がとんでもない事を言い出した。
「迷ってるなら、父さまに意見聞くといい」
「と、父さまですか……?」
「スサノオ様だぜ」
鹿がしれっと怖い事を言うので、誠は全身から滝のように冷や汗が流れた。
これは間違いなく殺される。言い逃れをしていたら、秒で叩き殺されてしまうだろう。
「父さま、いつも即決。情熱的」
満足げに頷く湍津姫をよそに、誠はとうとう観念したのだ。
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