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第六章その14 ~私しかおらんのだ!~ 最強女神の覚醒編

新しい創世記。偉大な女神の姉妹によって

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 やがて激しい祝福の嵐が落ち着いた時。

 天照大御神は、その両手を胸の前に上げた。眩しい光がたなごころの上に輝いている。

 そこに言葉では言い表せぬ程の霊力が渦巻いている事を、岩凪姫は感じ取った。

「今度の国産みは、あなた達姉妹の手で始めなさい、新しい創世記を……この未曾有みぞうの危機を乗り越えた、新たな日の本の第一歩を……!」

「…………かしこまりました」

 天照大御神の言葉に、岩凪姫は覚悟を決めた。

 妹の佐久夜姫を見つめると、佐久夜姫も頷く。

 姉妹は向かい合い、その間に光の玉が降りて来た。

 そのまま2人は目を閉じて、互いの手と手を合わせた。

 無理やりに例えるなら、十和田湖とわだこの乙女の像のポーズを、両手で行う感じだろうか。

 2人は意識を集中し、霊気の波長を合わせていく。

 姉妹神だからこそ可能な、2柱の神の霊気が一体化した状態。循環する力の輪。

 そのぐるぐる巡る霊気の中、光の玉はどんどん輝きを強めていった。

 やがて2人は口ずさむ。長い祝福の言葉を、代わる代わる唱えていくのだ。



数多あまたよろづに耐えたる日の本のつちよ」

浮寝うきねの時を閉じ、今日けうこそ若草のを開け」

四苦しくをさみ、仕合しあわせを手繰たぐり、諸々もろもろの息吹きでよ」

「この豊葦原とよあしはら中津国なかつくにが、貴方あなたのようにすこやかで」

其方そなたのように美しく」

 最後に2人は声を合わせる。

幾久いくひさしくさかゆる事をかなたまえ……!!!』
 そして光は溢れたのだ。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 声にならない無数の声。音にならない大音量。

 温かいような、それでいて涼やかな風が吹き乱れ、日本全土を駆け巡った。

 草木は茂り、生き物が蘇り……黄金色の稲穂や、様々な作物が実っていく。

 かと思えば、無数の桜花が野山を埋め尽くし、風に揺れながら花びらを振りまいているのだ。

 女神2人は手を離し、自分達が再生した大地を見渡した。

「少しやり過ぎたかな? 今は冬だったのだが」

「いいじゃない。今年は特別に、春を長くしちゃえばね」

 ……だが、再生されたのは日の本の大地だけではなかった。

 青紫の光の玉が無数に浮かび、ゆっくりと漂っていくのだ。

 鶴はしばらく目で追っていたが、やがてこちらに振り返る。

「ナギっぺ、サクちゃん。これ……」

「……邪神達の魂だ。今は陽炎かげろう程度の存在だがな。力を取り戻すまでかなりかかるだろうが、いずれ復活するだろう」

 鶴は不満げに尋ねてくる。

「どうしてあいつらも助けたの?」

「助けたわけではないのだよ。邪神と言えど神なのだ。滅ぼせば、それに応ずる何かが消える。川が枯れて大地が腐る。それでお前達は幸せか?」

「うーん……まあ生きてれば、敵がいるのは当たり前だものね。うまいこと付き合うしかないわ」

 鶴は腕組みして納得した。

「大丈夫、私そういうの得意だもの」

 鶴が気軽に言うので、女神達は笑った。



 やがて天を埋め尽くす神々は姿を消した。

 戦場に集った人々は、ようやく帰り支度を始める。

 神々の降臨と共に傷は癒えていたし、人間達の表情は明るい。

 魔族の鬼―ズ、熊襲なども負傷して倒れていたが、岩凪姫が片手を振るうと、たちまち魔族達の傷は癒えていたのだ。

 彼らは女神に気付いて縮こまり、冷や汗を流して怯えている。

「気にするな、もう戦いは終わったのだ」

 だが女神がそう言った時、悲鳴のような叫びが響いた。

 あの鬼神族の姫君……今は望月もちづきカノンと名乗る少女が発したものだ。

「どうした、何があったのだ」

 岩凪姫が問いただすと、カノンは必死に訴えかけてくる。

「そっ、それが……あいつ、あいつが、あの人がっ……!!!」

 カノンはうまく言葉が出てこないようだが、指で必死に指し示していた。

 大地に座した白い人型重機・心神……あの黒鷹が駆っていた機体だったが、今はその操縦席が開いている。

 そしてそこには、誰も乗っていなかったのだ。
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