上 下
137 / 160
第六章その14 ~私しかおらんのだ!~ 最強女神の覚醒編

闇の魔王の復活

しおりを挟む
「お、終わった……?」

 鳳は恐る恐る声を上げた。

 4体の邪神は打ち倒され、魔界の大軍勢も神雷によって撃退された。

 最早この地に、恐るべき相手はいないように思われたのだ。

「やった、やったで! 磐長姫いわながひめ様の勝利や!」

 先ほどまで倒れていた神使達も、喜びの声を上げた。

 神使達を抱き上げ、鳳も感情を爆発させる。

「やりましたね! さすがは代行様ですっ!」

 ……………………だがその時である。

 不意に恐ろしい衝撃が走った。

 地の底で、巨大な何かが動いているような振動だった。

 もう1度同じ衝撃。もう1度、もう1度。

 それはどんどん激しさを増し、まるで地底から魔物が這い上がってくるかのようだ。

「まさか………!?」

 口ではそう言いながら、もう鳳は理解していた。それは神使達も同じである。

 やがて大地がひび割れ、その隙間から黒い何かが溢れ出た。

 肌がちりつくような猛烈な邪気が、凄まじい濃度で噴き出しているのだ。

 息を潜め、祈るように事態を見守る鳳だったが……やがて『それ』は姿を現した。

 大地を砕き、伸ばされた巨大な腕。その後にのぞく顔。

 全てが黒く、ざわざわとうごめく何かに表面を覆われている。

 その1粒1粒が凄まじく強力な呪いであり、それが幾億も集まって、この恐るべき存在を形作っているのだ。

 そして『その存在』は、この地上に顕現した。

 黒き巨体は、最早どのぐらいの大きさがあるのかも分からない。

 その体の一部に、何人かの邪神がからめ取られているのが見えたし、驚いた事に、その中には仄宮の姿もあった。

 仄宮はもがくように蠢いていたが、やがてずぶずぶと黒い体に沈んでいった。

 自らのきさきですら餌とするこの存在こそ、邪神軍団の総大将。

 あらゆる絶望の送り主であり、闇の中の闇。

 常夜命とこよのみこと…………正式には、常夜常日断命とこよつねひたちのみことであった。

「……………………」

 鳳達も、神使達も言葉を失っていた。

 最早これは、戦ってどうこうなる相手ではなかった。

 その身を形作る邪気の総量が、そのかもし出す気配が……皆に絶望を教えていたからだ。

 邪神であろうと何だろうと、この魔王の前では無力であり、その命を吸われてしまう。

 顕現けんげんした時点で敗北、勝ち目など皆無。

 恐らくは天地開闢てんちかいびゃく以来、地の底に沈んだあらゆる負の気を吸い取って成長したのだろう。

 その力の凄まじさは、霊感を持たぬ一般の兵も理解していた。

 誰もがあきらめ、皆が呆然と邪神の王を見上げていた。

 …………ただ1人の女神を除いてだ。

「大丈夫だ、まだ終わっていないっっっ!!!!!」

 絶望に包まれた人々に、磐長姫いわながひめは力強く叫んだ。

「諦めるな、私がいるではないか!!!!!」

 闇に包まれた世界の中で、彼女の光は衰えていなかったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

VTuberなんだけど百合営業することになった。

kattern
キャラ文芸
【あらすじ】  VTuber『川崎ばにら』は人気絶頂の配信者。  そんな彼女は金盾配信(登録者数100万人記念)で、まさかの凸待ち事故を起こしてしまう。  15分以上誰もやって来ないお通夜配信。  頼りになる先輩は炎上やらかして謹慎中。  同期は企業案件で駆けつけられない。  後悔と共に配信を閉じようとしていたばにら。  しかし、その時ついにDiscordに着信が入る。  はたして彼女のピンチに駆けつけたのは――。 「こんバニこんバニ~♪ DStars三期生の、『川崎ばにら』バニ~♪」 「ちょっ、人の挨拶パクらんでもろて!」 「でゅははは! どうも、DStars特待生でばにらちゃんの先輩の『青葉ずんだ』だよ!」  基本コラボNG&VTuber屈指の『圧』の使い手。  事務所で一番怖い先輩VTuber――『青葉ずんだ』だった。  配信事故からの奇跡のコラボが話題を呼び、同接は伸びまくりの、再生数は回りまくりの、スパチャは舞いまくり。  気が付けば大成功のうちに『川崎ばにら』は金盾配信を終えた。  はずだったのだが――。 「青葉ずんだ、川崎ばにら。君たちにはこれからしばらくふたりで活動してもらう。つまり――『百合営業』をして欲しい」  翌日、社長室に呼ばれた二人は急遽百合営業を命じられるのだった。  はたしてちぐはぐな二人の「百合営業」はうまくいくのか? 【登場人物】 川崎ばにら : 主人公。三期生。トップVTuber。ゲーム配信が得意。コミュ障気味。 青葉ずんだ : ヒロイン。特待生。和ロリほんわか娘のガワで中身は「氷の女王」。 網走ゆき  : 零期生。主人公&ヒロイン共通の友人。よく炎上する。 生駒すず  : 一期生。現役JKの実力派VTuber。 羽曳野あひる: 二期生。行動力の化身。ツッコミが得意。 秋田ぽめら : 特待生。グループのママ。既婚者。 津軽りんご : 特待生。ヒロインの親友。現在長期休業中。 八丈島うみ : 三期生。コミュ力お化けなセンシティブお姉たん。 出雲うさぎ : 三期生。現役女子大生の妹系キャラ。 石清水しのぎ: 三期生。あまあまふわふわお姉さん。どんとこい太郎。 五十鈴えるふ: 三期生。真面目で三期生の調整役。癒し枠。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※ 下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。 毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。 しかし、飛んで仙になるだけだと思っていた冬弥はさらなる試練を受けるべく、空高く舞い上がったまま消えてしまった。 下宿屋は一体どうなるのか! そして必ず戻ってくると信じて待っている、残された雪翔の高校生活は___ ※※※※※ 下宿屋東風荘 第二弾。

異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました

雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。 女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。 強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。 くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。

お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……

ma-no
キャラ文芸
 お兄ちゃんの前世が猫のせいで、私の生まれた家はハチャメチャ。鳴くわ走り回るわ引っ掻くわ……  このままでは立派な人間になれないと妹の私が奮闘するんだけど、私は私で前世の知識があるから問題を起こしてしまうんだよね~。  この物語は、私が体験した日々を綴る物語だ。 ☆アルファポリス、小説家になろう、カクヨムで連載中です。  この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。  1日おきに1話更新中です。

SIX RULES

黒陽 光
キャラ文芸
 六つのルールを信条に裏の拳銃稼業を為す男・五条晴彦ことハリー・ムラサメに舞い込んだ新たな依頼は、とある一人の少女をあらゆる外敵から護り抜けというモノだった。  行方不明になった防衛事務次官の一人娘にして、己のルールに従い校則違反を犯しバーテンのアルバイトを続ける自由奔放な少女・園崎和葉。彼と彼女がその道を交えてしまった時、二人は否応なしに巨大な陰謀と謀略の渦に巻き込まれていくことになる……。  交錯する銃火と、躍動する鋼の肉体。少女が見るのは、戦い疲れた男の生き様だった。  怒りのデストロイ・ハード・アクション小説、此処に点火《イグニッション》。 ※小説家になろう、カクヨムと重複掲載中。

BLACK BLOOD

邦幸恵紀
キャラ文芸
時は21世紀。闇に妖魔が跋扈して人を食い殺す時代。 妖魔を専門に狩る人々は〝妖魔ハンター〟と呼ばれていた。 その一人である北山俊太郎は、同業者で幼なじみの友部正隆となりゆきで組んで仕事をしている。 しかし、彼とは人には言えない因縁があった。

転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜

万実
キャラ文芸
う、嘘でしょ。 こんな生き物が、こんな街の真ん中に居ていいの?! 私の目の前に現れたのは二本の角を持つ鬼だった。 バイトを首になった私、雪村深月は新たに見つけた職場『赤星探偵事務所』で面接の約束を取り付ける。 その帰り道に、とんでもない事件に巻き込まれた。 鬼が現れ戦う羽目に。 事務所の職員の拓斗に助けられ、鬼を倒したものの、この人なんであんな怖いのと普通に戦ってんの? この事務所、表向きは『赤星探偵事務所』で、その実態は『赤星陰陽師事務所』だったことが判明し、私は慄いた。 鬼と戦うなんて絶対にイヤ!怖くて死んじゃいます! 一度は辞めようと思ったその仕事だけど、超絶イケメンの所長が現れ、ミーハーな私は彼につられて働くことに。 はじめは石を投げることしかできなかった私だけど、式神を手に入れ、徐々に陰陽師としての才能が開花していく。

処理中です...