上 下
130 / 160
第六章その14 ~私しかおらんのだ!~ 最強女神の覚醒編

神はいつも祈りの中に…!

しおりを挟む
 立ち並ぶ4体の邪神を、鳳は呆然と見上げていた。

 双角天は周囲の気を探り、六道王子の末路を悟ったようだ。

せがれがやられたか。魂は……完全に砕けてはおらんな。復活に数千年はかかるだろうが、まずは落とし前をつけてもらおう……!」

 次の瞬間、双角天が振り下ろした金棒が地を打ち付ける。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 剛力で名を馳せた神の一撃に、大地は割れ、周囲の山が姿を変えた。

 倒れた人々も、残った車両や人型重機も、滅茶苦茶に振り回されたのだ。

 それでも人々は抵抗を試みた。

 まだ戦闘可能な航空戦艦から、そして車両や人型重機から、最後の攻撃が繰り出される。

 しかし邪神は微動だにせず、バカにしたように見下ろすだけだ。

「……うるさいはえども。少し大人しくしておれ」

 熊襲御前くまそごぜんが扇であおぐと、強烈な熱風が巻き起こり、人間達に襲いかかった。

 800度を越える灼熱の風に、人々は肌を焼かれ、喉を押さえて転げ回った。

「あ……ああっ……あっ……」

 鳳はその様を呆然と見つめていた。

 これは本当にこの世の光景なのだろうか。

 ひっくり返った車両が、地割れに飲み込まれた人型重機が……そして声にならない悲鳴を上げる人々が。全てが現実感の無い幻のようだった。

 だが熱波はすぐにこちらに殺到、鳳は神使と共に吹き飛ばされたのだ。

 残された霊気で防御し、即死は免れたものの、露出した肌のあちこちが焼けただれた。

「…………っ!」

 薄れ行く意識で、鳳は最後に祈った。

(都合の良い願いである事は百も承知です。けれどどうか……どうか天よ。人々をお守り下さい……!)

 最早ろくに動かない手を握り、すがるように祈り続ける。

(勇敢なる人々を……姫様を。そして黒鷹様を、どうかお守り下さい……!)



 太古の昔、人が飢えや病に圧倒されていた頃。人々は神に手を合わせた。

 目に見えぬ神の存在にすがり、祈る事で心の平穏を得てきた。

 けれど時代は進むのだ。

 文明が発達するにつれ、その存在を信じる者はまれになった。

 …………だがこれだけは言えるだろう。

 どんなに時が流れようと、どんなに世の中が変わろうと。

 己の力ではどうしようもない事態に襲われた時……そして這い上がる事すら叶わぬどん底に落とされた時。

 神を信じぬ者ですら、手を合わせて祈るのだ。

 もし神が再び現れるとするなら、その祈りの中にこそあるのだ……!



 鳳の必死の祈りとほぼ同じ頃。

 倒れた鶴のかたわらに、輝く2つの光があった。

 1つは小さな守り鈴。鶴が現世に来る際に、女神が渡した物である。

 もう1つは肌守り。やはり女神が夏木に与えた物だ。

 愛する教え子むすめと、愛してくれた人……その両者に渡した加護の品は、普通のお守りとしては、いささか強い霊力を宿していた。

 ……もちろんそれだけでは、あの奇跡は起こらなかっただろう。

 だが今は特別だった。

 あの反魂の術の余波が溢れ、周囲の岩場はまだ虹色に輝いていたからだ。

 何度も何度も……まるで脈動するかのように輝く岩場。

 そして鈴とお守りは、どんどんその光を強めていった。

 最後の引き金は、倒れた鶴のうわ言だった。

「ナギっぺ……ごめんなさい……!」

 鶴の言葉が言霊ことだまとなり、彼女が夢現ゆめうつつで描いた女神の姿を映し出したのだ。

 そしてお守り達が宙に浮かんだ。

 映し出された岩凪姫は、2つのお守りを受け止めた。

 復活というにはあまりにか弱い、陽炎かげろうのような女神の姿。

 けれど岩凪姫は地を踏みしめる。

 世にいかな嵐がふきすさむとも、決して倒れぬいわおの神が、絶望の大地に降り立ったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

天満堂へようこそ 6

浅井 ことは
キャラ文芸
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚ 寂れた商店街から発展を遂げ、今やTVでCMも流れるほどに有名になった天満堂薬店。 その薬は人間のお客様は、天満堂薬店まで。 人外の方はご予約の日に、本社横「BAR TENMAN」までお越しください。 どんなお薬でもお作りします。 ※材料高価買取 ※口外禁止 ※現金のみ取り扱い(日本円のみ可) ※その他診察も致します 天界で王子のお披露目の最中に起こった出来事。 新王子奏太が襲われ、犯人は過去に捕えられ狭間の世界へと送りこまれたリアムだったが…… 天満堂へようこそ5の続編となります。 ♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚

【全33話/10万文字】絶対完璧ヒロインと巻き込まれヒーロー

春待ち木陰
キャラ文芸
全33話。10万文字。自分の意志とは無関係かつ突発的に「数分から数時間、下手をすれば数日単位で世界が巻き戻る」という怪奇現象を幼い頃から繰り返し経験しているせいで「何をしたってどうせまた巻き戻る」と無気力な性格に育ってしまった真田大輔は高校二年生となって、周囲の人間からの評判がすこぶる良い長崎知世と同じクラスになる。ひょんな事からこの長崎知世が「リセット」と称して世界を巻き戻していた張本人だと知った大輔は、知世にそれをやめるよう詰め寄るがそのとき、また別の大事件が発生してしまう。大輔と知世は協力してその大事件を解決しようと奔走する。

皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜

菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。 まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。 なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに! この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。

このたび、小さな龍神様のお世話係になりました

一花みえる
キャラ文芸
旧題:泣き虫龍神様 片田舎の古本屋、室生書房には一人の青年と、不思議な尻尾の生えた少年がいる。店主である室生涼太と、好奇心旺盛だが泣き虫な「おみ」の平和でちょっと変わった日常のお話。 ☆ 泣き虫で食いしん坊な「おみ」は、千年生きる龍神様。だけどまだまだ子供だから、びっくりするとすぐに泣いちゃうのです。 みぇみぇ泣いていると、空には雲が広がって、涙のように雨が降ってきます。 でも大丈夫、すぐにりょーたが来てくれますよ。 大好きなりょーたに抱っこされたら、あっという間に泣き止んで、空も綺麗に晴れていきました! 真っ白龍のぬいぐるみ「しらたき」や、たまに遊びに来る地域猫の「ちびすけ」、近所のおじさん「さかぐち」や、仕立て屋のお姉さん(?)「おださん」など、不思議で優しい人達と楽しい日々を過ごしています。 そんなのんびりほのぼのな日々を、あなたも覗いてみませんか? ☆ 本作品はエブリスタにも公開しております。 ☆第6回 キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました! 本当にありがとうございます!

後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~

絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。 ※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。

♀→♂への異世界転生~年上キラーの勝ち組人生、姉様はみんな僕の虜~

高嶺 蒼
ファンタジー
痴情のもつれ(?)であっさり29歳の命を散らした高遠瑞希(♀)は、これまたあっさりと異世界転生を果たす。生まれたばかりの超絶美形の赤ん坊・シュリ(♂)として。 チートらしきスキルをもらったはいいが、どうも様子がおかしい。 [年上キラー]という高威力&変てこなそのスキルは、彼女を助けてくれもするが厄介ごとも大いに運んでくれるスキルだった。 その名の通り、年上との縁を多大に結んでくれるスキルのおかげで、たくさんのお姉様方に過剰に愛される日々を送るシュリ。 変なスキルばかり手に入る日々にへこたれそうになりつつも、健全で平凡な生活を夢見る元女の非凡な少年が、持ち前の性格で毎日をのほほんと生きていく、そんなお話です。 どんなに変てこなお話か、それは読んでみてのお楽しみです。 感想・ブックマーク・評価などなど、気が向いたらぜひお願いします♪ 頂いた感想はいつも楽しみに読ませていただいています!!! ※ほんのりHな表現もあるので、一応R18とさせていただいてます。 ※前世の話に関しては少々百合百合しい内容も入ると思います。苦手な方はご注意下さい。 ※他に小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しています。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

処理中です...