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第六章その12 ~魔王を止めろ!~ 決死の柱突入編

最強姉妹のそろい踏み!

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「あっあんた達、なんで……!!?」

 何とか言葉をしぼり出したカノンに、刹鬼姫が答えた。

「……さあ、何でだろうね? あたしもさっぱり分からないけど」

 うそぶく刹鬼姫に、剛角がツッコミを入れる。

「素直じゃないのお。心配でしょうがなかったけん、船にこっそり潜り込んだんじゃろうが」

「余計な事言うな剛角っ!」

 刹鬼姫がゲンコツを放ち、剛角の鎧の頭に命中する。

「とっとにかく、あたしは腹が立ってたんだっ! このクソボケどもをぶん殴るには、今がチャンスと思っただけだっ!」

「…………そうね」

 カノンはそこで機体を起こした。

「だったら、あたしと同じだわ……!」

 あの愛しい人がしていたように、ゆっくり手を開閉すると、何とかしびれは回復してきている。

 だが隊員達はまだ動けないはず。彼らより頑丈な自分が、少しでも時を稼がなければ。

 そこで刹鬼姫の顔が画面に映り、にやりと笑った。

「無理しなくていいぞ姉上。足手まといは無用だ」

「生意気言えるようになったわね。ずっとお姉ちゃんお姉ちゃんってついて来てたのに」

「そっ、そういう事は言わなくていいのだっ!」

 刹鬼姫は真っ赤になって慌てるが、カノンは彼女のそばに機体を寄せた。

「……それじゃ、久々にやってみる?」

「……上等だ姉上。遅れをとるなよ?」

 瞬間、2人は前に駆けていた。

 巨大な鎧との間合いを詰め、2人同時に刀を振るう。

 それぞれ片足ずつを狙ったのだが、硬い衝撃が機体の手に跳ね返ってきた。

『無駄だ、そんな攻撃で我らが……!』

 老鬼達は言いかけるが、カノン達はそのままの勢いで駆け抜けていく。

 待ち受ける剛角と紫蓮の鎧が腰を屈めており、2人は同時に彼らの肩に飛び乗った。

「そりゃ行くぞ紫蓮っ!!!」

「おうとも剛角っ!!!」

 ジャンプした剛角と紫蓮の鎧が、空中でカノンと刹鬼姫を放り投げる。

 真横にかっ飛んだその先には、五老鬼の鎧の頭があった。

「いくぞ姉上!」

「任せてっ!」

 空中で突進しながら、カノンは機体の右手を、刹鬼姫は鎧の左手を振りかぶる。

 そのまま鎧の顔のうち、後ろの1つを2人同時に殴りつけた。

 機体がカノンの思念に呼応したのか、想定を遥かに上回る威力で、相手の顔はひび割れている。

 だがこれだけでは終わらない。

 体勢もそのままに、カノンが機体の太刀を振るうと、反対側から刹鬼姫の太刀も弧を描いていた。

 再び、衝撃。

 左右から挟みこむように斬撃が決まり、頭部の顔の残り2つを叩き割っていたのだ。

『ぐっ、ぐおおおっっ!!?』

 巨大な鎧はよろめいて、頭をむしるように手を動かす。

「へっ、ざまあ見やがれ、クソどもがっ!」

 刹鬼姫が牙を剥き出して咆えるが、それはカノンも同じだった。鬼の闘争心が爆発し、拳を握って叫んでしまう。

「思い知ったかっ、こんくそボケっ! ………あっ!」

 ついが出たカノンだったが、そこで隊員達も起き上がってくる。

「ナイスやカノっち、それに鬼―ズ。全員うちらの部隊に入らへん?」

「あいつと再戦させるなら考えてやるぞっ!」

 剛角の顔も画面に映り、皆は思わずニヤついた。

 だがそんな一同をよそに、五老鬼の鎧は体勢を立て直していた。

『許さぬ……絶対に許さぬぞ。よくも何度も何度も牙を剥きおったな……!』

「やかましいぞ負け犬っ! そこで大人しくしとれ、この紫蓮様がとどめをさしてやる!」

「おうよ紫蓮、やってやれ!」

 画面上であかんべをする紫蓮、はやし立てる剛角だったが、次の瞬間、彼らの表情が固まった。

 老鬼達の鎧から、黒い何かが大量に噴き出してきたからだ。

 悪臭を放つ腐れ水のような……けれどただの汚水ではない。

 その液体が駆け巡ると、老鬼どもの鎧に、凄まじい呪詛の力が満ち始めたのだ。
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