106 / 160
第六章その12 ~魔王を止めろ!~ 決死の柱突入編
最強姉妹のそろい踏み!
しおりを挟む
「あっあんた達、なんで……!!?」
何とか言葉をしぼり出したカノンに、刹鬼姫が答えた。
「……さあ、何でだろうね? あたしもさっぱり分からないけど」
嘯く刹鬼姫に、剛角がツッコミを入れる。
「素直じゃないのお。心配でしょうがなかったけん、船にこっそり潜り込んだんじゃろうが」
「余計な事言うな剛角っ!」
刹鬼姫がゲンコツを放ち、剛角の鎧の頭に命中する。
「とっとにかく、あたしは腹が立ってたんだっ! このクソボケどもをぶん殴るには、今がチャンスと思っただけだっ!」
「…………そうね」
カノンはそこで機体を起こした。
「だったら、あたしと同じだわ……!」
あの愛しい人がしていたように、ゆっくり手を開閉すると、何とか痺れは回復してきている。
だが隊員達はまだ動けないはず。彼らより頑丈な自分が、少しでも時を稼がなければ。
そこで刹鬼姫の顔が画面に映り、にやりと笑った。
「無理しなくていいぞ姉上。足手まといは無用だ」
「生意気言えるようになったわね。ずっとお姉ちゃんお姉ちゃんってついて来てたのに」
「そっ、そういう事は言わなくていいのだっ!」
刹鬼姫は真っ赤になって慌てるが、カノンは彼女のそばに機体を寄せた。
「……それじゃ、久々にやってみる?」
「……上等だ姉上。遅れをとるなよ?」
瞬間、2人は前に駆けていた。
巨大な鎧との間合いを詰め、2人同時に刀を振るう。
それぞれ片足ずつを狙ったのだが、硬い衝撃が機体の手に跳ね返ってきた。
『無駄だ、そんな攻撃で我らが……!』
老鬼達は言いかけるが、カノン達はそのままの勢いで駆け抜けていく。
待ち受ける剛角と紫蓮の鎧が腰を屈めており、2人は同時に彼らの肩に飛び乗った。
「そりゃ行くぞ紫蓮っ!!!」
「おうとも剛角っ!!!」
ジャンプした剛角と紫蓮の鎧が、空中でカノンと刹鬼姫を放り投げる。
真横にかっ飛んだその先には、五老鬼の鎧の頭があった。
「いくぞ姉上!」
「任せてっ!」
空中で突進しながら、カノンは機体の右手を、刹鬼姫は鎧の左手を振りかぶる。
そのまま鎧の顔のうち、後ろの1つを2人同時に殴りつけた。
機体がカノンの思念に呼応したのか、想定を遥かに上回る威力で、相手の顔はひび割れている。
だがこれだけでは終わらない。
体勢もそのままに、カノンが機体の太刀を振るうと、反対側から刹鬼姫の太刀も弧を描いていた。
再び、衝撃。
左右から挟みこむように斬撃が決まり、頭部の顔の残り2つを叩き割っていたのだ。
『ぐっ、ぐおおおっっ!!?』
巨大な鎧はよろめいて、頭を掻き毟るように手を動かす。
「へっ、ざまあ見やがれ、クソどもがっ!」
刹鬼姫が牙を剥き出して咆えるが、それはカノンも同じだった。鬼の闘争心が爆発し、拳を握って叫んでしまう。
「思い知ったかっ、こんくそボケっ! ………あっ!」
つい素が出たカノンだったが、そこで隊員達も起き上がってくる。
「ナイスやカノっち、それに鬼―ズ。全員うちらの部隊に入らへん?」
「あいつと再戦させるなら考えてやるぞっ!」
剛角の顔も画面に映り、皆は思わずニヤついた。
だがそんな一同をよそに、五老鬼の鎧は体勢を立て直していた。
『許さぬ……絶対に許さぬぞ。よくも何度も何度も牙を剥きおったな……!』
「やかましいぞ負け犬っ! そこで大人しくしとれ、この紫蓮様がとどめをさしてやる!」
「おうよ紫蓮、やってやれ!」
画面上であかんべをする紫蓮、はやし立てる剛角だったが、次の瞬間、彼らの表情が固まった。
老鬼達の鎧から、黒い何かが大量に噴き出してきたからだ。
悪臭を放つ腐れ水のような……けれどただの汚水ではない。
その液体が駆け巡ると、老鬼どもの鎧に、凄まじい呪詛の力が満ち始めたのだ。
何とか言葉をしぼり出したカノンに、刹鬼姫が答えた。
「……さあ、何でだろうね? あたしもさっぱり分からないけど」
嘯く刹鬼姫に、剛角がツッコミを入れる。
「素直じゃないのお。心配でしょうがなかったけん、船にこっそり潜り込んだんじゃろうが」
「余計な事言うな剛角っ!」
刹鬼姫がゲンコツを放ち、剛角の鎧の頭に命中する。
「とっとにかく、あたしは腹が立ってたんだっ! このクソボケどもをぶん殴るには、今がチャンスと思っただけだっ!」
「…………そうね」
カノンはそこで機体を起こした。
「だったら、あたしと同じだわ……!」
あの愛しい人がしていたように、ゆっくり手を開閉すると、何とか痺れは回復してきている。
だが隊員達はまだ動けないはず。彼らより頑丈な自分が、少しでも時を稼がなければ。
そこで刹鬼姫の顔が画面に映り、にやりと笑った。
「無理しなくていいぞ姉上。足手まといは無用だ」
「生意気言えるようになったわね。ずっとお姉ちゃんお姉ちゃんってついて来てたのに」
「そっ、そういう事は言わなくていいのだっ!」
刹鬼姫は真っ赤になって慌てるが、カノンは彼女のそばに機体を寄せた。
「……それじゃ、久々にやってみる?」
「……上等だ姉上。遅れをとるなよ?」
瞬間、2人は前に駆けていた。
巨大な鎧との間合いを詰め、2人同時に刀を振るう。
それぞれ片足ずつを狙ったのだが、硬い衝撃が機体の手に跳ね返ってきた。
『無駄だ、そんな攻撃で我らが……!』
老鬼達は言いかけるが、カノン達はそのままの勢いで駆け抜けていく。
待ち受ける剛角と紫蓮の鎧が腰を屈めており、2人は同時に彼らの肩に飛び乗った。
「そりゃ行くぞ紫蓮っ!!!」
「おうとも剛角っ!!!」
ジャンプした剛角と紫蓮の鎧が、空中でカノンと刹鬼姫を放り投げる。
真横にかっ飛んだその先には、五老鬼の鎧の頭があった。
「いくぞ姉上!」
「任せてっ!」
空中で突進しながら、カノンは機体の右手を、刹鬼姫は鎧の左手を振りかぶる。
そのまま鎧の顔のうち、後ろの1つを2人同時に殴りつけた。
機体がカノンの思念に呼応したのか、想定を遥かに上回る威力で、相手の顔はひび割れている。
だがこれだけでは終わらない。
体勢もそのままに、カノンが機体の太刀を振るうと、反対側から刹鬼姫の太刀も弧を描いていた。
再び、衝撃。
左右から挟みこむように斬撃が決まり、頭部の顔の残り2つを叩き割っていたのだ。
『ぐっ、ぐおおおっっ!!?』
巨大な鎧はよろめいて、頭を掻き毟るように手を動かす。
「へっ、ざまあ見やがれ、クソどもがっ!」
刹鬼姫が牙を剥き出して咆えるが、それはカノンも同じだった。鬼の闘争心が爆発し、拳を握って叫んでしまう。
「思い知ったかっ、こんくそボケっ! ………あっ!」
つい素が出たカノンだったが、そこで隊員達も起き上がってくる。
「ナイスやカノっち、それに鬼―ズ。全員うちらの部隊に入らへん?」
「あいつと再戦させるなら考えてやるぞっ!」
剛角の顔も画面に映り、皆は思わずニヤついた。
だがそんな一同をよそに、五老鬼の鎧は体勢を立て直していた。
『許さぬ……絶対に許さぬぞ。よくも何度も何度も牙を剥きおったな……!』
「やかましいぞ負け犬っ! そこで大人しくしとれ、この紫蓮様がとどめをさしてやる!」
「おうよ紫蓮、やってやれ!」
画面上であかんべをする紫蓮、はやし立てる剛角だったが、次の瞬間、彼らの表情が固まった。
老鬼達の鎧から、黒い何かが大量に噴き出してきたからだ。
悪臭を放つ腐れ水のような……けれどただの汚水ではない。
その液体が駆け巡ると、老鬼どもの鎧に、凄まじい呪詛の力が満ち始めたのだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
占星術師アーサーと彼方のカフェ
不来方しい
キャラ文芸
【※第6回キャラ文芸大賞奨励賞受賞】アルバイト先の店長は、愛に生きる謎多き英国紳士だった。
道案内をした縁があり、アーサーの元でアルバイトをすることになった月森彼方。そこは、宝石のようなキラキラしたスイーツと美味しい紅茶を出す占いカフェだった。
彼の占いを求めてやってくる人は個性豊かで、中には人生を丸々預けようとする人も。アーサーは真摯に受け止め答えていくが、占いは種も仕掛けもあると言う。
──私は、愛に生きる人なのです。
彼はなぜ日本へやってきたのか。家族との確執、占いと彼の関係、謎に満ちた正体とは。
英国紳士×大学生&カフェ×占星術のバディブロマンス!
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
龍神のつがい~京都嵐山 現世の恋奇譚~
河野美姫
キャラ文芸
天涯孤独の凜花は、職場でのいじめに悩みながらも耐え抜いていた。
しかし、ある日、大切にしていた両親との写真をボロボロにされてしまい、なにもかもが嫌になって逃げ出すように京都の嵐山に行く。
そこで聖と名乗る男性に出会う。彼は、すべての龍を統べる龍神で、凜花のことを「俺のつがいだ」と告げる。
凜花は聖が住む天界に行くことになり、龍にとって唯一無二の存在とされる〝つがい〟になることを求められるが――?
「誰かに必要とされたい……」
天涯孤独の少女
倉本凜花(20)
×
龍王院聖(年齢不詳)
すべての龍を統べる者
「ようやく会えた、俺の唯一無二のつがい」
「俺と永遠の契りを交わそう」
あなたが私を求めてくれるのは、
亡くなった恋人の魂の生まれ変わりだから――?
*アルファポリス*
2022/12/28~2023/1/28
※こちらの作品はノベマ!(完結済)・エブリスタでも公開中です。
約束のあやかし堂 ~夏時雨の誓い~
陰東 愛香音
キャラ文芸
高知県吾川郡仁淀川町。
四万十川に続く清流として有名な仁淀川が流れるこの地には、およそ400年の歴史を持つ“寄相神社”と呼ばれる社がある。
山間にひっそりと佇むこの社は仁淀川町を静かに見守る社だった。
その寄相神社には一匹の猫が長い間棲み付いている。
誰の目にも止まらないその猫の名は――狸奴《りと》。
夜になると、狸奴は人の姿に変わり、寄相神社の境内に立ち神楽鈴を手に舞を踊る。
ある人との約束を守る為に、人々の安寧を願い神楽を舞う。
ある日、その寄相神社に一人の女子大生が訪れた。
彼女はこの地域には何の縁もゆかりもない女子大生――藤岡加奈子。
神社仏閣巡りが趣味で、夏休みを利用して四国八十八か所巡りを済ませて来たばかりの加奈子は一人、地元の人間しか知らないような神社を巡る旅をしようと、ここへとたどり着く。
**************
※この物語には実際の地名など使用していますが、完全なフィクションであり実在の人物や団体などとは関係ありません。
下宿屋 東風荘 2
浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※
下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。
毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。
しかし、飛んで仙になるだけだと思っていた冬弥はさらなる試練を受けるべく、空高く舞い上がったまま消えてしまった。
下宿屋は一体どうなるのか!
そして必ず戻ってくると信じて待っている、残された雪翔の高校生活は___
※※※※※
下宿屋東風荘 第二弾。
【中華ファンタジー】天帝の代言人~わけあって屁理屈を申し上げます~
あかいかかぽ
キャラ文芸
注意*主人公は男の子です
屁理屈や言いがかりにも骨や筋はきっとある!?
道士になるべく育てられていた少年、英照勇。
ある冬の夜、殺し屋に命を狙われて、たまたま出会った女侠に助けられたものの、彼女が言うには照勇は『皇孫』らしいのだ……。
は? そんなの初耳なんですけど……?。
屁理屈と言いがかりと詭弁と雄弁で道をひらく少年と、わけあり女侠と涙もろい詐欺師が旅する物語。
後宮が出てこない、漂泊と変転をくりかえす中華ファンタジー。
一応女性向けにしています。
VTuberなんだけど百合営業することになった。
kattern
キャラ文芸
【あらすじ】
VTuber『川崎ばにら』は人気絶頂の配信者。
そんな彼女は金盾配信(登録者数100万人記念)で、まさかの凸待ち事故を起こしてしまう。
15分以上誰もやって来ないお通夜配信。
頼りになる先輩は炎上やらかして謹慎中。
同期は企業案件で駆けつけられない。
後悔と共に配信を閉じようとしていたばにら。
しかし、その時ついにDiscordに着信が入る。
はたして彼女のピンチに駆けつけたのは――。
「こんバニこんバニ~♪ DStars三期生の、『川崎ばにら』バニ~♪」
「ちょっ、人の挨拶パクらんでもろて!」
「でゅははは! どうも、DStars特待生でばにらちゃんの先輩の『青葉ずんだ』だよ!」
基本コラボNG&VTuber屈指の『圧』の使い手。
事務所で一番怖い先輩VTuber――『青葉ずんだ』だった。
配信事故からの奇跡のコラボが話題を呼び、同接は伸びまくりの、再生数は回りまくりの、スパチャは舞いまくり。
気が付けば大成功のうちに『川崎ばにら』は金盾配信を終えた。
はずだったのだが――。
「青葉ずんだ、川崎ばにら。君たちにはこれからしばらくふたりで活動してもらう。つまり――『百合営業』をして欲しい」
翌日、社長室に呼ばれた二人は急遽百合営業を命じられるのだった。
はたしてちぐはぐな二人の「百合営業」はうまくいくのか?
【登場人物】
川崎ばにら : 主人公。三期生。トップVTuber。ゲーム配信が得意。コミュ障気味。
青葉ずんだ : ヒロイン。特待生。和ロリほんわか娘のガワで中身は「氷の女王」。
網走ゆき : 零期生。主人公&ヒロイン共通の友人。よく炎上する。
生駒すず : 一期生。現役JKの実力派VTuber。
羽曳野あひる: 二期生。行動力の化身。ツッコミが得意。
秋田ぽめら : 特待生。グループのママ。既婚者。
津軽りんご : 特待生。ヒロインの親友。現在長期休業中。
八丈島うみ : 三期生。コミュ力お化けなセンシティブお姉たん。
出雲うさぎ : 三期生。現役女子大生の妹系キャラ。
石清水しのぎ: 三期生。あまあまふわふわお姉さん。どんとこい太郎。
五十鈴えるふ: 三期生。真面目で三期生の調整役。癒し枠。
神様お願い!~神様のトバッチリで異世界に転生したので心穏やかにスローライフを送りたい~
きのこのこ
ファンタジー
旧題:神様お願い!〜神様のトバッチリを受けた定年おっさんは異世界に転生して心穏やかにスローライフを送りたい〜
突然白い発光体の強い光を浴びせられ異世界転移?した俺事、石原那由多(55)は安住の地を求めて異世界を冒険する…?
え?謎の子供の体?謎の都市?魔法?剣?魔獣??何それ美味しいの??
俺は心穏やかに過ごしたいだけなんだ!
____________________________________________
突然謎の白い発光体の強い光を浴びせられ強制的に魂だけで異世界転移した石原那由多(55)は、よちよち捨て子幼児の身体に入っちゃった!
那由多は左眼に居座っている神様のカケラのツクヨミを頼りに異世界で生きていく。
しかし左眼の相棒、ツクヨミの暴走を阻止できず、チート?な棲家を得て、チート?能力を次々開花させ異世界をイージーモードで過ごす那由多。「こいつ《ツクヨミ》は勝手に俺の記憶を見るプライバシークラッシャーな奴なんだ!」
そんな異世界は優しさで満ち溢れていた(え?本当に?)
呪われてもっふもふになっちゃったママン(産みの親)と御親戚一行様(やっとこ呪いがどうにか出来そう?!)に、異世界のめくるめくグルメ(やっと片鱗が見えて作者も安心)でも突然真夜中に食べたくなっちゃう日本食も完全完備(どこに?!)!異世界日本発福利厚生は完璧(ばっちり)です!(うまい話ほど裏がある!)
謎のアイテム御朱印帳を胸に(え?)今日も平穏?無事に那由多は異世界で日々を暮らします。
※一つの目的にどんどん事を突っ込むのでスローな展開が大丈夫な方向けです。
⭐︎第16回ファンタジー小説大賞にて奨励賞受賞を頂きました!読んで投票して下さった読者様、並びに選考してくださったスタッフ様に御礼申し上げますm(_ _)m今後とも宜しくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる