98 / 160
第六章その11 ~時代絵巻!?~ 過去の英雄そろい踏み編
なんか動きがスース―するの
しおりを挟む
「張り切ってるな、つかさもヒカリもっ!」
「そう? ヒカリが振り回してるだけに見えるけどっ!」
船渡と嵐山は、懸命に戦いながらも周囲に目を配っていた。長年部隊を率いてきた2人は、そうする事が自然な習慣になっていたからだ。
この隊を率いる隊長と副隊長であり、常に冷静であらねばならない……それは分かっていたのだが、もう気持ちを抑える事が出来なかった。
耐え難い長い時間、若者達が傷つくのをただ見続けてきたからだ。
自分達は18の時まで普通の青春を送れた。
でも若者達は、はるかに幼い歳で戦場に駆り出されたのだ。
それがどんなに恐ろしくて、どんなに苦しい事だったのか、想像するだけで胸が張り裂けそうになる。
…………だからもう、そんな思いは沢山なのだ。
目の前に一際巨大な敵が立ちふさがり、刀のような6本腕を掲げたが、船渡は機体で大地を踏み締める。
絶対下がるつもりは無い。後ろには、傷つき倒れた後輩達がいるのだから。
!!!!!!!!!!!!!!!!!
猛烈な斬撃が加えられたが、頑強な船渡の機体『陸王』が、腕部装甲で敵の攻撃を全て叩き落とした。
その隙に嵐山が正確無比な射撃を行い、相手の急所を射抜いていくのだ。
最強の矛と盾、単純にして終着点。
まだ人型重機のフットワークが鈍かった頃、2人が行き着いた戦いの結論だった。
激しい戦闘を続けながら、ふと嵐山が不安げに呟いた。
「な、なんか動きがスースーする……軽すぎて落ち着かない感じ」
「補助モーターも全部取っ払ったからな。こんだけ身軽なら、被弾の心配も無さそうだけど」
船渡もそう同意する。
2人の機体は、つい先日まで人工筋肉に加えて補助モーターを搭載していた。
人工筋肉の出力が安定しなかった頃の不安から、どうしても外す気にならなかったのだが……今の2人の人型重機は、それらを全て取っ払っていたのだ。
だからこそ動きが軽いのだったが、その動きの軽さこそが、2人を不安にさせてしまう。
迫る餓霊を軽々といなし、叩き潰しつつ船渡は尋ねた。
「にしても、何で急に外そうって言い出したんだ?」
「だって、いつまでも不安がってらんないもん……!」
嵐山も奮戦しながら答える。
「みんな新しい人生に向かってるでしょ。あたし達だって、負けてらんないじゃない?」
「ま、まあ一応、結婚したわけだしな」
こんな状況にも関わらず、2人は顔を赤らめた。
だがそこでタイミング悪く、画面上にヒカリが映った。
「いかんなあチミ達ぃ、またチュッチュ、チュッチュとやってたのかね」
『してないっ!!!』
2人は同時にツッコミを入れた。
それから微笑み、餓霊の群れに突っ込んで行ったのだ。
「そう? ヒカリが振り回してるだけに見えるけどっ!」
船渡と嵐山は、懸命に戦いながらも周囲に目を配っていた。長年部隊を率いてきた2人は、そうする事が自然な習慣になっていたからだ。
この隊を率いる隊長と副隊長であり、常に冷静であらねばならない……それは分かっていたのだが、もう気持ちを抑える事が出来なかった。
耐え難い長い時間、若者達が傷つくのをただ見続けてきたからだ。
自分達は18の時まで普通の青春を送れた。
でも若者達は、はるかに幼い歳で戦場に駆り出されたのだ。
それがどんなに恐ろしくて、どんなに苦しい事だったのか、想像するだけで胸が張り裂けそうになる。
…………だからもう、そんな思いは沢山なのだ。
目の前に一際巨大な敵が立ちふさがり、刀のような6本腕を掲げたが、船渡は機体で大地を踏み締める。
絶対下がるつもりは無い。後ろには、傷つき倒れた後輩達がいるのだから。
!!!!!!!!!!!!!!!!!
猛烈な斬撃が加えられたが、頑強な船渡の機体『陸王』が、腕部装甲で敵の攻撃を全て叩き落とした。
その隙に嵐山が正確無比な射撃を行い、相手の急所を射抜いていくのだ。
最強の矛と盾、単純にして終着点。
まだ人型重機のフットワークが鈍かった頃、2人が行き着いた戦いの結論だった。
激しい戦闘を続けながら、ふと嵐山が不安げに呟いた。
「な、なんか動きがスースーする……軽すぎて落ち着かない感じ」
「補助モーターも全部取っ払ったからな。こんだけ身軽なら、被弾の心配も無さそうだけど」
船渡もそう同意する。
2人の機体は、つい先日まで人工筋肉に加えて補助モーターを搭載していた。
人工筋肉の出力が安定しなかった頃の不安から、どうしても外す気にならなかったのだが……今の2人の人型重機は、それらを全て取っ払っていたのだ。
だからこそ動きが軽いのだったが、その動きの軽さこそが、2人を不安にさせてしまう。
迫る餓霊を軽々といなし、叩き潰しつつ船渡は尋ねた。
「にしても、何で急に外そうって言い出したんだ?」
「だって、いつまでも不安がってらんないもん……!」
嵐山も奮戦しながら答える。
「みんな新しい人生に向かってるでしょ。あたし達だって、負けてらんないじゃない?」
「ま、まあ一応、結婚したわけだしな」
こんな状況にも関わらず、2人は顔を赤らめた。
だがそこでタイミング悪く、画面上にヒカリが映った。
「いかんなあチミ達ぃ、またチュッチュ、チュッチュとやってたのかね」
『してないっ!!!』
2人は同時にツッコミを入れた。
それから微笑み、餓霊の群れに突っ込んで行ったのだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる