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第六章その11 ~時代絵巻!?~ 過去の英雄そろい踏み編
なんか動きがスース―するの
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「張り切ってるな、つかさもヒカリもっ!」
「そう? ヒカリが振り回してるだけに見えるけどっ!」
船渡と嵐山は、懸命に戦いながらも周囲に目を配っていた。長年部隊を率いてきた2人は、そうする事が自然な習慣になっていたからだ。
この隊を率いる隊長と副隊長であり、常に冷静であらねばならない……それは分かっていたのだが、もう気持ちを抑える事が出来なかった。
耐え難い長い時間、若者達が傷つくのをただ見続けてきたからだ。
自分達は18の時まで普通の青春を送れた。
でも若者達は、はるかに幼い歳で戦場に駆り出されたのだ。
それがどんなに恐ろしくて、どんなに苦しい事だったのか、想像するだけで胸が張り裂けそうになる。
…………だからもう、そんな思いは沢山なのだ。
目の前に一際巨大な敵が立ちふさがり、刀のような6本腕を掲げたが、船渡は機体で大地を踏み締める。
絶対下がるつもりは無い。後ろには、傷つき倒れた後輩達がいるのだから。
!!!!!!!!!!!!!!!!!
猛烈な斬撃が加えられたが、頑強な船渡の機体『陸王』が、腕部装甲で敵の攻撃を全て叩き落とした。
その隙に嵐山が正確無比な射撃を行い、相手の急所を射抜いていくのだ。
最強の矛と盾、単純にして終着点。
まだ人型重機のフットワークが鈍かった頃、2人が行き着いた戦いの結論だった。
激しい戦闘を続けながら、ふと嵐山が不安げに呟いた。
「な、なんか動きがスースーする……軽すぎて落ち着かない感じ」
「補助モーターも全部取っ払ったからな。こんだけ身軽なら、被弾の心配も無さそうだけど」
船渡もそう同意する。
2人の機体は、つい先日まで人工筋肉に加えて補助モーターを搭載していた。
人工筋肉の出力が安定しなかった頃の不安から、どうしても外す気にならなかったのだが……今の2人の人型重機は、それらを全て取っ払っていたのだ。
だからこそ動きが軽いのだったが、その動きの軽さこそが、2人を不安にさせてしまう。
迫る餓霊を軽々といなし、叩き潰しつつ船渡は尋ねた。
「にしても、何で急に外そうって言い出したんだ?」
「だって、いつまでも不安がってらんないもん……!」
嵐山も奮戦しながら答える。
「みんな新しい人生に向かってるでしょ。あたし達だって、負けてらんないじゃない?」
「ま、まあ一応、結婚したわけだしな」
こんな状況にも関わらず、2人は顔を赤らめた。
だがそこでタイミング悪く、画面上にヒカリが映った。
「いかんなあチミ達ぃ、またチュッチュ、チュッチュとやってたのかね」
『してないっ!!!』
2人は同時にツッコミを入れた。
それから微笑み、餓霊の群れに突っ込んで行ったのだ。
「そう? ヒカリが振り回してるだけに見えるけどっ!」
船渡と嵐山は、懸命に戦いながらも周囲に目を配っていた。長年部隊を率いてきた2人は、そうする事が自然な習慣になっていたからだ。
この隊を率いる隊長と副隊長であり、常に冷静であらねばならない……それは分かっていたのだが、もう気持ちを抑える事が出来なかった。
耐え難い長い時間、若者達が傷つくのをただ見続けてきたからだ。
自分達は18の時まで普通の青春を送れた。
でも若者達は、はるかに幼い歳で戦場に駆り出されたのだ。
それがどんなに恐ろしくて、どんなに苦しい事だったのか、想像するだけで胸が張り裂けそうになる。
…………だからもう、そんな思いは沢山なのだ。
目の前に一際巨大な敵が立ちふさがり、刀のような6本腕を掲げたが、船渡は機体で大地を踏み締める。
絶対下がるつもりは無い。後ろには、傷つき倒れた後輩達がいるのだから。
!!!!!!!!!!!!!!!!!
猛烈な斬撃が加えられたが、頑強な船渡の機体『陸王』が、腕部装甲で敵の攻撃を全て叩き落とした。
その隙に嵐山が正確無比な射撃を行い、相手の急所を射抜いていくのだ。
最強の矛と盾、単純にして終着点。
まだ人型重機のフットワークが鈍かった頃、2人が行き着いた戦いの結論だった。
激しい戦闘を続けながら、ふと嵐山が不安げに呟いた。
「な、なんか動きがスースーする……軽すぎて落ち着かない感じ」
「補助モーターも全部取っ払ったからな。こんだけ身軽なら、被弾の心配も無さそうだけど」
船渡もそう同意する。
2人の機体は、つい先日まで人工筋肉に加えて補助モーターを搭載していた。
人工筋肉の出力が安定しなかった頃の不安から、どうしても外す気にならなかったのだが……今の2人の人型重機は、それらを全て取っ払っていたのだ。
だからこそ動きが軽いのだったが、その動きの軽さこそが、2人を不安にさせてしまう。
迫る餓霊を軽々といなし、叩き潰しつつ船渡は尋ねた。
「にしても、何で急に外そうって言い出したんだ?」
「だって、いつまでも不安がってらんないもん……!」
嵐山も奮戦しながら答える。
「みんな新しい人生に向かってるでしょ。あたし達だって、負けてらんないじゃない?」
「ま、まあ一応、結婚したわけだしな」
こんな状況にも関わらず、2人は顔を赤らめた。
だがそこでタイミング悪く、画面上にヒカリが映った。
「いかんなあチミ達ぃ、またチュッチュ、チュッチュとやってたのかね」
『してないっ!!!』
2人は同時にツッコミを入れた。
それから微笑み、餓霊の群れに突っ込んで行ったのだ。
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