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第六章その10 ~決戦開始よ!~ 作戦名・日はまた昇る編
邪霊なんか怖くない…!
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鳳は群がる邪霊どもを睨み付けていた。
奴らは航空戦艦を取り巻き、不気味な叫びを上げて飛び交っている。その数は増える一方だ。
一応船体には結界が張られていたが、それもいつまで持ち堪えられるかは分からない。
霊力を持たぬ人には分からないだろうが、この黒い邪霊達は、それぞれ1体ずつが超強力な怨霊だ。
それが群れを為して航空戦艦を狙い、結界を突破しようとしているのである。
兵達は勇敢に己の任務を全うしているが、それでも窓を叩き、艦橋を覗き見る邪霊どもの姿を見ると、耐え難い恐怖を覚えるのだろう。
「大丈夫、私達が守ります……!」
恐怖から手を止めそうになっていた女性兵士の隣に立ち、鳳は声をかけた。
「もし入ってきたら私が斬ります。あなたはあなたの務めを、どうか……!」
「はっ、はいっ!」
女性兵士は再び自らの作業に集中するが、その時、艦に激しい衝撃が走った。
船の表面を覆っていた光が弱まり、邪霊どもが中へ入り込もうとしていたのだ。
「……結界はこれまでですね。それでは次に移りましょう」
鳳の言葉とほぼ同時に、艦に再び衝撃が走った。
重い衝撃というよりは、無数の小さな生き物が、艦にポコポコ着地したような感覚である。
次の瞬間、艦内に入ろうとしていた邪霊に、神使のキツネが飛び蹴りしていた。
「さあ、ワイらの出番やで! みんな気合い入れろや!」
リーダーのコン三郎が叫ぶと、一気に他のキツネ達が艦内になだれ込んできた。
「稲荷大明神様のご命令やぞ! 思う存分暴れて、悪霊どもをコテンパンにしてやるんや!」
おう!と可愛い声で叫ぶと、キツネ達は邪霊に襲いかかった。
キックしたりビンタしたり、頭に乗ってひっぱたいたり。
他の艦も同じような状況らしく、無数の狛犬や牛、猿達が奮戦している。
龍の神使は一際パワフルで、1人で何体もの邪霊を捕まえ、ヌンチャクのように振り回していた。
逃げ惑う邪霊の1つが艦橋内に入り込んだが、鳳は瞬時に間合いを詰め、太刀を抜いて切り払った。
鳳は振り返り、先ほどの女性兵士に優しく言った。
「大丈夫です。私達が守りますから」
「……はいっ!」
女性兵士はなぜか顔を赤らめ、懸命に作業を続けてくれた。
もちろん邪霊どもの攻撃は、あらゆる艦に及んでいる。
どうしても神使の手が足りないし、実際に船団長の佐々木の元にも、隙を見て邪霊が押し寄せていた。
だが佐々木は彼らを威嚇する。
「ええい、いくら脅そうとも無駄だっ! 最早わしに溶ける胃など残ってないぞっ!!!」
あまりの気合いに邪霊達は後ずさり、しばし顔を見合わせていたが、気を取り直して襲ってくる。
佐々木は内心死を覚悟した。
(くっ、さすがにわしもここまでか……でもわし頑張ったよね? 自分維新は成し遂げたよね?)
だが佐々木の覚悟が天に通じたのだろうか。
天井から大量の?マークが現れ、襲い掛かる邪霊にドロップキックしていたのだ。
さらにはモアイや弥五郎どん、ヤシの木のぬいぐるみなども参戦し、邪霊どもを蹴散らしていく。
よく見ると、そうめんの束、椿油やしょうゆの瓶、マンゴーまでもが手足を生やして戦っていた。
「た、助かりましたぞっ!」
佐々木は身を起こしながら、?マークとハイタッチした。
何が何だか分からないが、頼もしい事は確かなのだ。
奴らは航空戦艦を取り巻き、不気味な叫びを上げて飛び交っている。その数は増える一方だ。
一応船体には結界が張られていたが、それもいつまで持ち堪えられるかは分からない。
霊力を持たぬ人には分からないだろうが、この黒い邪霊達は、それぞれ1体ずつが超強力な怨霊だ。
それが群れを為して航空戦艦を狙い、結界を突破しようとしているのである。
兵達は勇敢に己の任務を全うしているが、それでも窓を叩き、艦橋を覗き見る邪霊どもの姿を見ると、耐え難い恐怖を覚えるのだろう。
「大丈夫、私達が守ります……!」
恐怖から手を止めそうになっていた女性兵士の隣に立ち、鳳は声をかけた。
「もし入ってきたら私が斬ります。あなたはあなたの務めを、どうか……!」
「はっ、はいっ!」
女性兵士は再び自らの作業に集中するが、その時、艦に激しい衝撃が走った。
船の表面を覆っていた光が弱まり、邪霊どもが中へ入り込もうとしていたのだ。
「……結界はこれまでですね。それでは次に移りましょう」
鳳の言葉とほぼ同時に、艦に再び衝撃が走った。
重い衝撃というよりは、無数の小さな生き物が、艦にポコポコ着地したような感覚である。
次の瞬間、艦内に入ろうとしていた邪霊に、神使のキツネが飛び蹴りしていた。
「さあ、ワイらの出番やで! みんな気合い入れろや!」
リーダーのコン三郎が叫ぶと、一気に他のキツネ達が艦内になだれ込んできた。
「稲荷大明神様のご命令やぞ! 思う存分暴れて、悪霊どもをコテンパンにしてやるんや!」
おう!と可愛い声で叫ぶと、キツネ達は邪霊に襲いかかった。
キックしたりビンタしたり、頭に乗ってひっぱたいたり。
他の艦も同じような状況らしく、無数の狛犬や牛、猿達が奮戦している。
龍の神使は一際パワフルで、1人で何体もの邪霊を捕まえ、ヌンチャクのように振り回していた。
逃げ惑う邪霊の1つが艦橋内に入り込んだが、鳳は瞬時に間合いを詰め、太刀を抜いて切り払った。
鳳は振り返り、先ほどの女性兵士に優しく言った。
「大丈夫です。私達が守りますから」
「……はいっ!」
女性兵士はなぜか顔を赤らめ、懸命に作業を続けてくれた。
もちろん邪霊どもの攻撃は、あらゆる艦に及んでいる。
どうしても神使の手が足りないし、実際に船団長の佐々木の元にも、隙を見て邪霊が押し寄せていた。
だが佐々木は彼らを威嚇する。
「ええい、いくら脅そうとも無駄だっ! 最早わしに溶ける胃など残ってないぞっ!!!」
あまりの気合いに邪霊達は後ずさり、しばし顔を見合わせていたが、気を取り直して襲ってくる。
佐々木は内心死を覚悟した。
(くっ、さすがにわしもここまでか……でもわし頑張ったよね? 自分維新は成し遂げたよね?)
だが佐々木の覚悟が天に通じたのだろうか。
天井から大量の?マークが現れ、襲い掛かる邪霊にドロップキックしていたのだ。
さらにはモアイや弥五郎どん、ヤシの木のぬいぐるみなども参戦し、邪霊どもを蹴散らしていく。
よく見ると、そうめんの束、椿油やしょうゆの瓶、マンゴーまでもが手足を生やして戦っていた。
「た、助かりましたぞっ!」
佐々木は身を起こしながら、?マークとハイタッチした。
何が何だか分からないが、頼もしい事は確かなのだ。
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