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第六章その10 ~決戦開始よ!~ 作戦名・日はまた昇る編
ディアヌスの奮闘
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(ざまは無い、桐壺よ。この我を舐め腐るからだ……!)
崩れ落ちる岩の館を睨め据えて、ディアヌスは歓喜していた。
因縁の女神・桐壺を撃破したからであるが、それもこれも、あの神人の娘が反魂の術を行い、見事桐壷の結界を弱らせたからだった。
それも船が現れてからのごく短時間、瞬きほどの刹那にだ。
多少ふざけたところもあるが、さすがは高天原がよこした聖者であり、あの岩凪姫の弟子である。
あの女神は、どこかその態度に引け目のような物が見え隠れし、自らの力に蓋をしている様子があったが……本来の素質は恐ろしく高いものだった。
そのせいなのかどうなのか、奴が育てた神人や、鳴瀬とかいう人族の勇者も、興味深いほどの実力者に育っていたのだ。
ともかく勝利の感覚を味わうディアヌスだったが、まだ最大の狙いが残っていた。
この戦いの策を練る際、人間に言わなかった事がある。それは夜祖の居所だ。
もちろん聞かれなかった所為もある。人間どもはまさか、夜祖が館の外れにおり、しかも一箇所から動かぬなど思わなかったのだろう。
だが自分はその理由からして完璧に分かっていた。
(ヤツは他の頭の悪い邪神どもを毛嫌いしている。よって交わる事はないし、奇襲をかければ必ず『あそこ』に居るはずだ。邪神どもと離れ、かつ外を見渡せるあの場所にだ)
ディアヌスは連続して刀を振るい、刀気を飛ばして館の外れを攻撃した。
一撃目は恐らく外れた。
二撃目は……確実に命中しただろう。
夜祖の分霊の気があっけなく消滅したのを、ディアヌスははっきりと感じ取ったのだ。
「まずは分霊だ。この場を切り抜ければ、本体の方も始末してやる」
ディアヌスは笑みを浮かべ、刀を握る手に力を込めた。
「そして夜祖がいるなら、連吹もいるだろう?」
更に付近の屋根を立て続けに薙ぎ払うと、雁之連吹神が姿を現した。
恐らくかすっただけだろうが、手にした笛は折れて砕け、かなりの深手をおったようだ。そもそもが戦いに向かぬ邪神だったし、奴の魂もその大半が復活していないのだ。
「ぐっ……!」
連吹は瓦礫を蹴って舞い上がるが、そこを更なる太刀筋で追撃した。
激しい爆発と共に、連吹の分霊も消滅せしめた。
「どうだ夜祖よ! 貴様がこちらを知るように、我も貴様を知り尽くしているのだ……!」
ディアヌスは剣を地に突き立て、高らかに咆える。
「さあ、出て来い腰抜けども! この肥河が首を刈り取りに来てやったぞ!」
ディアヌスの言葉からしばし後、黒き岩の館より、巨大な弓を携えた邪神が舞い上がった。
千里巌徹之神……通称千里眼である。
館を出た途端、体は見る間に巨大化していく。
彼は弓を引き絞ると、矢継ぎ早に光条を放った。
速く、強く、どんな回避も許さない必殺必中の攻撃である。
「ぐううっ!!!」
ディアヌスは剣を構え、その攻撃を受け止めた。
以前より、更に強力無比な射撃である。
(おのれ蚊蜻蛉が、近づけばなますに斬り刻んでやるものを……!)
ディアヌスは歯噛みしたが、この状況は最初から分かりきっていた事だ。
相手は遠距離戦なら天下無敵、この距離で勝てるはずがない。
……だが、奴はまだ気付かぬはずだ。
わざとこちらが派手な剣撃を連発した事を。
わざと土煙を巻き上げ、館の中にいた千里眼に外が見えないようにした事を。
(もうじきだ……もうじき貴様の最後となるのだ……!)
立て続けに襲ってくる射撃を防ぎながら、ディアヌスは笑みを浮かべた。
自らのすべき事は、背後に居並ぶ人間どもの航空戦艦に矢が当たらぬように守る事。
ただそれだけで、千里眼はじきに打ち倒されるのだ。
崩れ落ちる岩の館を睨め据えて、ディアヌスは歓喜していた。
因縁の女神・桐壺を撃破したからであるが、それもこれも、あの神人の娘が反魂の術を行い、見事桐壷の結界を弱らせたからだった。
それも船が現れてからのごく短時間、瞬きほどの刹那にだ。
多少ふざけたところもあるが、さすがは高天原がよこした聖者であり、あの岩凪姫の弟子である。
あの女神は、どこかその態度に引け目のような物が見え隠れし、自らの力に蓋をしている様子があったが……本来の素質は恐ろしく高いものだった。
そのせいなのかどうなのか、奴が育てた神人や、鳴瀬とかいう人族の勇者も、興味深いほどの実力者に育っていたのだ。
ともかく勝利の感覚を味わうディアヌスだったが、まだ最大の狙いが残っていた。
この戦いの策を練る際、人間に言わなかった事がある。それは夜祖の居所だ。
もちろん聞かれなかった所為もある。人間どもはまさか、夜祖が館の外れにおり、しかも一箇所から動かぬなど思わなかったのだろう。
だが自分はその理由からして完璧に分かっていた。
(ヤツは他の頭の悪い邪神どもを毛嫌いしている。よって交わる事はないし、奇襲をかければ必ず『あそこ』に居るはずだ。邪神どもと離れ、かつ外を見渡せるあの場所にだ)
ディアヌスは連続して刀を振るい、刀気を飛ばして館の外れを攻撃した。
一撃目は恐らく外れた。
二撃目は……確実に命中しただろう。
夜祖の分霊の気があっけなく消滅したのを、ディアヌスははっきりと感じ取ったのだ。
「まずは分霊だ。この場を切り抜ければ、本体の方も始末してやる」
ディアヌスは笑みを浮かべ、刀を握る手に力を込めた。
「そして夜祖がいるなら、連吹もいるだろう?」
更に付近の屋根を立て続けに薙ぎ払うと、雁之連吹神が姿を現した。
恐らくかすっただけだろうが、手にした笛は折れて砕け、かなりの深手をおったようだ。そもそもが戦いに向かぬ邪神だったし、奴の魂もその大半が復活していないのだ。
「ぐっ……!」
連吹は瓦礫を蹴って舞い上がるが、そこを更なる太刀筋で追撃した。
激しい爆発と共に、連吹の分霊も消滅せしめた。
「どうだ夜祖よ! 貴様がこちらを知るように、我も貴様を知り尽くしているのだ……!」
ディアヌスは剣を地に突き立て、高らかに咆える。
「さあ、出て来い腰抜けども! この肥河が首を刈り取りに来てやったぞ!」
ディアヌスの言葉からしばし後、黒き岩の館より、巨大な弓を携えた邪神が舞い上がった。
千里巌徹之神……通称千里眼である。
館を出た途端、体は見る間に巨大化していく。
彼は弓を引き絞ると、矢継ぎ早に光条を放った。
速く、強く、どんな回避も許さない必殺必中の攻撃である。
「ぐううっ!!!」
ディアヌスは剣を構え、その攻撃を受け止めた。
以前より、更に強力無比な射撃である。
(おのれ蚊蜻蛉が、近づけばなますに斬り刻んでやるものを……!)
ディアヌスは歯噛みしたが、この状況は最初から分かりきっていた事だ。
相手は遠距離戦なら天下無敵、この距離で勝てるはずがない。
……だが、奴はまだ気付かぬはずだ。
わざとこちらが派手な剣撃を連発した事を。
わざと土煙を巻き上げ、館の中にいた千里眼に外が見えないようにした事を。
(もうじきだ……もうじき貴様の最後となるのだ……!)
立て続けに襲ってくる射撃を防ぎながら、ディアヌスは笑みを浮かべた。
自らのすべき事は、背後に居並ぶ人間どもの航空戦艦に矢が当たらぬように守る事。
ただそれだけで、千里眼はじきに打ち倒されるのだ。
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