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第六章その7 ~みんなで乾杯!~ グルメだらけの大宴会編
何かいい事ありました?
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「感動のところ悪いんですけど、私達もお邪魔しまーす」
『!!?』
突然の声に驚き、一同は周囲を見回した。
声は間近から聞こえた気がしたが、他に誰もいないのである。
「駄目だよ湖南、隠れのまじないしたままじゃん」
「あっ、そうね! ついうっかり」
「全く湖南ときたら、これだからまだまだ心配なのです」
声同士は勝手に会話していたが、やがて彼らは姿を現した。
藤色の髪を伸ばし、手にそろばんを持った少女・湖南。
まだ幼く、おかっぱ頭の上品そうな少年・才次郎。
巫女のような白装束に身を包む、落ち着いた印象の女性・津和野。
いずれも能登半島で共闘した、第4船団のパイロット達だったが、彼らは全神連のメンバーでもある。
「いやあ、まともに来ると怒られそうなんで、こっそり来るつもりが。軽いホラーでしたねえ」
湖南はそう言いながら、楽しそうに透明ラップに包んだ大皿を取り出した。
「そんでもって差し入れです、なんとビワマスの握り寿司ですよ! このご時勢、すんごい貴重なんですから」
湖南はそろばんを弾きながら説明する。
才次郎と津和野も、次々に袋から差し入れを出してくれた。
「僕はもっと上品さ。加賀百万石の和菓子、きんつばに最中だよ」
「出雲のおそばなんですが、お口に合うでしょうか」
コマは津和野の肩に飛び乗って尋ねる。
「津和野さん、ケガはもういいの?」
「ええ。魔法傷ですので時間がかかりましたが、問題ありませんわ」
津和野はそう答えるが、誠達は何となく違和感を感じた。
(おかしい……変に余裕があるというのか、肌つやがいいというのか……)
以前のガツガツしたオーラが無いのである。
誠は皆を代表して尋ねた。
「津和野……さん? 何かいい事ありました?」
「いっいいえっ、特に何も……さっさあっ、おそばがのびますので!」
津和野は焦って話題をそらしたが、確かにそばは素晴らしい味だった。
一口噛むごとにしっかりした歯ごたえがたまらず、山葵がぴりっときいたつゆにぴったりである。
つゆで塩辛くなった口直しには、加賀の和菓子が最高だったし、ビワマスの寿司は脂でとろけるようなおいしさだった。
「ああ、久しぶりの小豆だわ。食べるのが勿体無いなあ……」
カノンは味わいながら食べていたが、宮島は何も気にせずぱくついている。
「いやー、全部うまいな! それにしても贅沢だぜ、日本中旅行してるみてーだ!」
宮島は子供のように喜んだが、そこで頭上から声が聞こえた。
「ちょっとちょっと、あたい達のを食べてないのに、日本中ってどういう事さ!」
誠達が見上げると、しばらく屋根の上で足音が響いた。
やがて天井付近の窓が開き、長いロープが垂らされると、数名の少年少女がスルスル降りてきたのだ。
「いや、どっから来るねん。屋根の上とか寒かったやろ」
「平気さ、あたいら寒さは慣れてるからね」
床に降り立った先頭の少女は、腰に手を当てて白い歯を見せた。
長い髪をポニーテールに束ね、シンプルなジャージ姿の彼女は凛子。
隣にはスタジャン姿の少年・恭介もいたし、物静かだが意志の強そうな孝二もいた。
頬が紅色の純朴そうな少女は、方言の抜けきらないしぐれである。
いずれも東北のド根性部隊『雪月花』に属するメンバーであり、誠達のピンチに命がけで駆けつけてくれた、心から頼れる戦友だった。
彼らは背負っていた風呂敷を広げる。
『うっ、うわああっっっ!!!』
誠達は声を上げた。
凛子達の荷物には、それぞれ大量の海産物が入っていたのだ。
見事に脂が乗ったマグロの切り身、蛤のように丸々したホッキ貝。
他にもホタテ、牡蠣、ウニにハタハタなど、見ているだけで楽しくなる山盛りの海の幸だった。
「北海道なら、東北は目と鼻の先だかんね。ひとっ走りごちそうとって来たってわけ! 許可取ってるから、密漁じゃないからね」
凛子はてきぱきマグロを刺身にしていき、他のメンバーは大鍋で豪快に素材を煮込んでいく。
たちまち出来上がったのは、豪華極まるマグロの刺身と、東北の海の幸をてんこ盛りにしたハイパー鍋である。
『うわあああっ、うまいぃぃっっっ!!!』
一同はすぐにその味の虜になった。
「やばい、貝も魚も旨みがすごいっ! 北国の魚介はまた独特だな」
誠が言うと、凛子が嬉しそうに肩を組んできた。
「なっ、だから言ったろ! 東北は寒いから、食べ物も根性あるのが多いんだって! ほらどんどん食え、食え!」
しぐれは風呂敷からぬいぐるみを取り出すと、コマの前に差し出した。
「コマくんに、完成したぬいぐるみ持ってきたべ」
「わあ、ありがとう! 嬉しい、良く出来てるよ!」
コマは飛び上がって喜び、しぐれの肩に飛び乗った。
「実はこれも起き上がり小法師になってるべな」
びょんびょん起き上がるぬいぐるみに笑う一同だったが、そうこうするうちに、格納庫の扉がドンドン叩かれた。
コマはぬいぐるみの自分と並んで扉を見つめる。
「誰だろうね鶴、こんな時間に」
「知らないけどみんな、隠れる準備よ!」
「ちょ、ちょっと待ちや鶴っち、鍋もあるんや、そんな簡単に……」
鶴の言葉に、一同は右往左往するのだったが。
こちらの返事も待たず、強引に扉は開け放たれた。
『!!?』
突然の声に驚き、一同は周囲を見回した。
声は間近から聞こえた気がしたが、他に誰もいないのである。
「駄目だよ湖南、隠れのまじないしたままじゃん」
「あっ、そうね! ついうっかり」
「全く湖南ときたら、これだからまだまだ心配なのです」
声同士は勝手に会話していたが、やがて彼らは姿を現した。
藤色の髪を伸ばし、手にそろばんを持った少女・湖南。
まだ幼く、おかっぱ頭の上品そうな少年・才次郎。
巫女のような白装束に身を包む、落ち着いた印象の女性・津和野。
いずれも能登半島で共闘した、第4船団のパイロット達だったが、彼らは全神連のメンバーでもある。
「いやあ、まともに来ると怒られそうなんで、こっそり来るつもりが。軽いホラーでしたねえ」
湖南はそう言いながら、楽しそうに透明ラップに包んだ大皿を取り出した。
「そんでもって差し入れです、なんとビワマスの握り寿司ですよ! このご時勢、すんごい貴重なんですから」
湖南はそろばんを弾きながら説明する。
才次郎と津和野も、次々に袋から差し入れを出してくれた。
「僕はもっと上品さ。加賀百万石の和菓子、きんつばに最中だよ」
「出雲のおそばなんですが、お口に合うでしょうか」
コマは津和野の肩に飛び乗って尋ねる。
「津和野さん、ケガはもういいの?」
「ええ。魔法傷ですので時間がかかりましたが、問題ありませんわ」
津和野はそう答えるが、誠達は何となく違和感を感じた。
(おかしい……変に余裕があるというのか、肌つやがいいというのか……)
以前のガツガツしたオーラが無いのである。
誠は皆を代表して尋ねた。
「津和野……さん? 何かいい事ありました?」
「いっいいえっ、特に何も……さっさあっ、おそばがのびますので!」
津和野は焦って話題をそらしたが、確かにそばは素晴らしい味だった。
一口噛むごとにしっかりした歯ごたえがたまらず、山葵がぴりっときいたつゆにぴったりである。
つゆで塩辛くなった口直しには、加賀の和菓子が最高だったし、ビワマスの寿司は脂でとろけるようなおいしさだった。
「ああ、久しぶりの小豆だわ。食べるのが勿体無いなあ……」
カノンは味わいながら食べていたが、宮島は何も気にせずぱくついている。
「いやー、全部うまいな! それにしても贅沢だぜ、日本中旅行してるみてーだ!」
宮島は子供のように喜んだが、そこで頭上から声が聞こえた。
「ちょっとちょっと、あたい達のを食べてないのに、日本中ってどういう事さ!」
誠達が見上げると、しばらく屋根の上で足音が響いた。
やがて天井付近の窓が開き、長いロープが垂らされると、数名の少年少女がスルスル降りてきたのだ。
「いや、どっから来るねん。屋根の上とか寒かったやろ」
「平気さ、あたいら寒さは慣れてるからね」
床に降り立った先頭の少女は、腰に手を当てて白い歯を見せた。
長い髪をポニーテールに束ね、シンプルなジャージ姿の彼女は凛子。
隣にはスタジャン姿の少年・恭介もいたし、物静かだが意志の強そうな孝二もいた。
頬が紅色の純朴そうな少女は、方言の抜けきらないしぐれである。
いずれも東北のド根性部隊『雪月花』に属するメンバーであり、誠達のピンチに命がけで駆けつけてくれた、心から頼れる戦友だった。
彼らは背負っていた風呂敷を広げる。
『うっ、うわああっっっ!!!』
誠達は声を上げた。
凛子達の荷物には、それぞれ大量の海産物が入っていたのだ。
見事に脂が乗ったマグロの切り身、蛤のように丸々したホッキ貝。
他にもホタテ、牡蠣、ウニにハタハタなど、見ているだけで楽しくなる山盛りの海の幸だった。
「北海道なら、東北は目と鼻の先だかんね。ひとっ走りごちそうとって来たってわけ! 許可取ってるから、密漁じゃないからね」
凛子はてきぱきマグロを刺身にしていき、他のメンバーは大鍋で豪快に素材を煮込んでいく。
たちまち出来上がったのは、豪華極まるマグロの刺身と、東北の海の幸をてんこ盛りにしたハイパー鍋である。
『うわあああっ、うまいぃぃっっっ!!!』
一同はすぐにその味の虜になった。
「やばい、貝も魚も旨みがすごいっ! 北国の魚介はまた独特だな」
誠が言うと、凛子が嬉しそうに肩を組んできた。
「なっ、だから言ったろ! 東北は寒いから、食べ物も根性あるのが多いんだって! ほらどんどん食え、食え!」
しぐれは風呂敷からぬいぐるみを取り出すと、コマの前に差し出した。
「コマくんに、完成したぬいぐるみ持ってきたべ」
「わあ、ありがとう! 嬉しい、良く出来てるよ!」
コマは飛び上がって喜び、しぐれの肩に飛び乗った。
「実はこれも起き上がり小法師になってるべな」
びょんびょん起き上がるぬいぐるみに笑う一同だったが、そうこうするうちに、格納庫の扉がドンドン叩かれた。
コマはぬいぐるみの自分と並んで扉を見つめる。
「誰だろうね鶴、こんな時間に」
「知らないけどみんな、隠れる準備よ!」
「ちょ、ちょっと待ちや鶴っち、鍋もあるんや、そんな簡単に……」
鶴の言葉に、一同は右往左往するのだったが。
こちらの返事も待たず、強引に扉は開け放たれた。
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