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第六章その6 ~最後の仕上げ!~ 決戦前のドタバタ編
邪神達は意外と単純
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高嶺は行動を開始した。
『同じ山神や自然神に報せ、味方に引き入れるのだ。ただし群山に近しい者は避けろ』
そんな肥河の言葉どおり、自然神達に話をした。先の映像も全て見せた。
当然彼らは衝撃を受け、また怒りを顕にした。
「夜祖に感づかれる、今は動くな。だが不満を持つ同志は多い。時が来れば、我と共にあれ」
高嶺の言葉に、彼らは頷くのだった。
肥河の欠片は、更に次の手を示してきた。
『自然神以外にも不満を持つ者はごまんといる。手柄を餌に掻き乱してやれ』
高嶺は宴会場に舞い戻った。
部屋の奥に陣取る華々しい面々が狙いではない。隅で面白くなさそうにしていた、はぐれ者達が目当てなのだ。
彼らは邪神の序列で言えば末端・末席、つまり権力争いに負けた連中である。
この日の本を奪還しても、閑職に追いやられるのは明白だったし、その事を不満に思っているのだ。
高嶺は彼らを室外に誘い、言葉巧みに語りかけた。
「実は、探らせていた配下から情報が入った。人間どもが攻め上ってくるのだ」
「……何だと?」
邪神達は途端に目をぎらつかせる。
「放置すれば、いずれここまで来るだろうが……ここには千里眼と桐壺がいる。他の名だたる武神もいる。だから秘密裏にうって出るのだ」
「我らから出向くだと?」
「そうとも、我らの手で人の軍勢を討ち果たすのだ。さすれば手柄は我々だけのもの。常夜命が戻られれば、必ず取り立てて下さるだろう」
「おおお……これは絶好の好期よ!」
高嶺の提案に、邪神達は喜んだ。
「この件くれぐれも内密に。秘密が漏れれば、手柄が消えると思え」
「分かっているぞ、ここだけの話にしよう」
邪神達は嬉しげに何度も頷いた。
力や魔力は強くとも、彼らは極めて単純なのだ。
高嶺は更に、六道王子にも声をかけた。
「ここに居れば狩りは出来ぬ。だが行けば狩り放題だ。抜け駆けして我々だけで楽しみ、ついでに手柄を上げようではないか」
「おおおっ、待ってたぜ! ずっとこんな所で待つなんぞ、俺の性に合わないんでな!」
六道王子は、手にした杯を放り投げながら立ち上がった。
彼は他の邪神に輪をかけて単純で、二つ返事で引っかかったのだ。
「親父殿に言えば止められるだろう。誰にも言うな、特に夜祖には」
「任せとけや!」
六道王子は金棒を取り出し、肩に担ぎながら答えた。
目はらんらんと輝き、全身に激しい邪気が渦巻いている。
高嶺はその様を静かに見つめた。
(……こいつは口が軽い、演技も下手だ。だが強さはケタ外れで、こいつがいると目的を果たせないだろう)
多少の危険を負ってでも、彼を館から引き離さねばならないのだ。
高嶺は更にトドメの手を打った。
この館の最高権力者たる仄宮にである。
「……というわけで、この館はあまりに無粋で不細工であります。これで常夜命様をお迎えするのは非礼にあたりましょう」
高嶺は胸に手を当て、わざとらしく演技しながら言った。
「あの不細工な壁と櫓が邪魔です。そもそも神々が集うこの場所に、あのような備えが必要でしょうか?」
「確かにそうであるな」
仄宮は館の外を眺めた。
「あれらが眺めを邪魔しております。そこでどうでしょう。あれを取り払えば、我々山神達が総出で、美しい花を咲かせましょう。さすれば更に眺めが良くなります」
「おお、それは良い、実に良いぞ! 早速取り払わせるのじゃ!」
仄宮は子供のように喜ぶと、傍らの女神に言った。
「すぐに夜祖に伝え、不細工な備えを取り払わせよ。美しいわらわの一存じゃ、反論は許さぬとな」
『同じ山神や自然神に報せ、味方に引き入れるのだ。ただし群山に近しい者は避けろ』
そんな肥河の言葉どおり、自然神達に話をした。先の映像も全て見せた。
当然彼らは衝撃を受け、また怒りを顕にした。
「夜祖に感づかれる、今は動くな。だが不満を持つ同志は多い。時が来れば、我と共にあれ」
高嶺の言葉に、彼らは頷くのだった。
肥河の欠片は、更に次の手を示してきた。
『自然神以外にも不満を持つ者はごまんといる。手柄を餌に掻き乱してやれ』
高嶺は宴会場に舞い戻った。
部屋の奥に陣取る華々しい面々が狙いではない。隅で面白くなさそうにしていた、はぐれ者達が目当てなのだ。
彼らは邪神の序列で言えば末端・末席、つまり権力争いに負けた連中である。
この日の本を奪還しても、閑職に追いやられるのは明白だったし、その事を不満に思っているのだ。
高嶺は彼らを室外に誘い、言葉巧みに語りかけた。
「実は、探らせていた配下から情報が入った。人間どもが攻め上ってくるのだ」
「……何だと?」
邪神達は途端に目をぎらつかせる。
「放置すれば、いずれここまで来るだろうが……ここには千里眼と桐壺がいる。他の名だたる武神もいる。だから秘密裏にうって出るのだ」
「我らから出向くだと?」
「そうとも、我らの手で人の軍勢を討ち果たすのだ。さすれば手柄は我々だけのもの。常夜命が戻られれば、必ず取り立てて下さるだろう」
「おおお……これは絶好の好期よ!」
高嶺の提案に、邪神達は喜んだ。
「この件くれぐれも内密に。秘密が漏れれば、手柄が消えると思え」
「分かっているぞ、ここだけの話にしよう」
邪神達は嬉しげに何度も頷いた。
力や魔力は強くとも、彼らは極めて単純なのだ。
高嶺は更に、六道王子にも声をかけた。
「ここに居れば狩りは出来ぬ。だが行けば狩り放題だ。抜け駆けして我々だけで楽しみ、ついでに手柄を上げようではないか」
「おおおっ、待ってたぜ! ずっとこんな所で待つなんぞ、俺の性に合わないんでな!」
六道王子は、手にした杯を放り投げながら立ち上がった。
彼は他の邪神に輪をかけて単純で、二つ返事で引っかかったのだ。
「親父殿に言えば止められるだろう。誰にも言うな、特に夜祖には」
「任せとけや!」
六道王子は金棒を取り出し、肩に担ぎながら答えた。
目はらんらんと輝き、全身に激しい邪気が渦巻いている。
高嶺はその様を静かに見つめた。
(……こいつは口が軽い、演技も下手だ。だが強さはケタ外れで、こいつがいると目的を果たせないだろう)
多少の危険を負ってでも、彼を館から引き離さねばならないのだ。
高嶺は更にトドメの手を打った。
この館の最高権力者たる仄宮にである。
「……というわけで、この館はあまりに無粋で不細工であります。これで常夜命様をお迎えするのは非礼にあたりましょう」
高嶺は胸に手を当て、わざとらしく演技しながら言った。
「あの不細工な壁と櫓が邪魔です。そもそも神々が集うこの場所に、あのような備えが必要でしょうか?」
「確かにそうであるな」
仄宮は館の外を眺めた。
「あれらが眺めを邪魔しております。そこでどうでしょう。あれを取り払えば、我々山神達が総出で、美しい花を咲かせましょう。さすれば更に眺めが良くなります」
「おお、それは良い、実に良いぞ! 早速取り払わせるのじゃ!」
仄宮は子供のように喜ぶと、傍らの女神に言った。
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