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第六章その5 ~恐怖の助っ人!?~ ディアヌスとの再会編
もしもし、こちら鬼ーズです
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『……じゃい! こちら……じゃい!』
誠は一瞬、神使のガンパチ……つまり眼帯を付けた狛犬の声かと思った。
だが彼は、前足を腕組みして目を閉じ、なおも思案を続けている。
「ガンパチ、お前の声じゃないよな?」
「??? ワシは何も言っとらんぞ」
ガンパチは不思議そうに首を傾げるが、声はまだ続いていた。
『……じゃい! ……聞こえるか、こちら……じゃい!』
誠はそこで気が付いた。
「あ、そっか、音じゃないんだ」
声は頭の中から聞こえており、女神の魂の欠片による通信のようだ。
やがて声は次第にはっきり聞こえ始めた。
『やい、こちら剛角じゃい! 聞こえとるか?』
「ご、剛角……!?」
誠は若干混乱しながら、傍らの鶴に言う。
「ひ、ヒメ子、よく分からないけど、鬼―ズから連絡が来てる。岩凪姫の魂経由だけど、霊力で映せるか?」
「任せて黒鷹」
鶴が頷くと、室内のモニターに鬼達が映し出された。
少しウェーブのかかった髪を伸ばした、勝気な印象の刹鬼姫。
巨体でがっしりした体格の剛角。
そして童のような外見の紫蓮である。
「おおおっ、良かった、ようやく通じたぞ!」
鬼達は少し安堵したようだったが、再び慌てて声を上げる。
「いや違うっ、まだ安心じゃない! ちょっと説明が出来んが、とにかく大変がおおごとなんじゃいっ!」
剛角はとにかく混乱している。
「いや、大変ってどういう……」
誠は言いかけて固まった。
隊員達も、鳳や神使も。佐々木や雪菜も硬直していた。
鬼達の後ろにいる人影?に気付いたからだ。
黒い外皮に首から下を覆われた巨体は、紛れも無くあのディアヌスだった。
今はあちこち負傷している彼女?は、牙の生えた口元を開き、機嫌悪げに唸っている。
誠は思わず大声を出した。
「ディ、ディアヌスっ!? 何でお前達と一緒に!?」
「そっそうよ! あんた達、里抜けしたんじゃなかったの!?」
カノンもたまらず身を乗り出す。
「い、いや、それが姉上。我らはあの後、島で暮らしてたんだが……いきなり光が飛んできてな。見に行ったらディアヌス様だったわけで」
刹鬼姫は懸命に事態を説明してくれた。
それから唇をかみ締め、目を閉じて唸るように言う。
「い、言いにくい……しこたま言いにくいんだが……姉上。ディアヌス様、そっちでかくまってくれないか……?」
『えええええっっっ!!!???』
その場の全員が声を上げた。
あの魔王ディアヌスをかくまう? いや無理だ、絶対に無理だ。
罠かもしれないし、いつ襲われるかも分からない。
ただでさえ邪神軍団との戦いに苦心してるのに、その上でこんな厄介事を招き入れるなんて、考えただけで恐ろしかった。
誠は間髪入れずに断ろうとするのだったが、そこで鶴が身を乗り出した。
「面白い、乗ったわ!」
『えええええっっっ!!!???』
誠達は飛び上がった。参謀方の1人からカツラが飛んだが、今そんな事はどうでもいい。
「い、いやヒメ子、魔王だぞ!? 魔王のディアヌスなんだぞ!? いくら何でもこれだけは……」
「そうねえ、確かに危険でしょう。ああうん、まったくもって危険だわ」
鶴は物分かり良く頷いたのだが。
「でも乗るわっ!!!」
『えええええっっっ!!!???』
一同は再び飛び上がり、多数のカツラが宙に舞ったが、鶴は自信満々で言った。
「誰が何と言おうと、この鶴ちゃんが許可するわ! すぐに迎えをよこして頂戴! ていうか黒鷹、私達が行きましょうっ!」
「い、いやいや、いやいやいやいや……!!!」
誠は首をぶんぶん振るのだったが、鶴は船団長の佐々木に怒鳴った。
「佐々木っちゃん、勝つにはこれしかないわ! 迎えの飛行機をお願い、早く!」
「わ、分かりましたぞ、鶴ちゃんさん。もうどうなっても知りませんが……」
佐々木は目を白黒させながら、急ぎ輸送機の手配をしてくれた。
「す、すぐ迎えを寄越すから……そこで待っててくれ」
誠は鬼達にそれだけ言うと、輸送機で北海道を後にしたのだ。
誠は一瞬、神使のガンパチ……つまり眼帯を付けた狛犬の声かと思った。
だが彼は、前足を腕組みして目を閉じ、なおも思案を続けている。
「ガンパチ、お前の声じゃないよな?」
「??? ワシは何も言っとらんぞ」
ガンパチは不思議そうに首を傾げるが、声はまだ続いていた。
『……じゃい! ……聞こえるか、こちら……じゃい!』
誠はそこで気が付いた。
「あ、そっか、音じゃないんだ」
声は頭の中から聞こえており、女神の魂の欠片による通信のようだ。
やがて声は次第にはっきり聞こえ始めた。
『やい、こちら剛角じゃい! 聞こえとるか?』
「ご、剛角……!?」
誠は若干混乱しながら、傍らの鶴に言う。
「ひ、ヒメ子、よく分からないけど、鬼―ズから連絡が来てる。岩凪姫の魂経由だけど、霊力で映せるか?」
「任せて黒鷹」
鶴が頷くと、室内のモニターに鬼達が映し出された。
少しウェーブのかかった髪を伸ばした、勝気な印象の刹鬼姫。
巨体でがっしりした体格の剛角。
そして童のような外見の紫蓮である。
「おおおっ、良かった、ようやく通じたぞ!」
鬼達は少し安堵したようだったが、再び慌てて声を上げる。
「いや違うっ、まだ安心じゃない! ちょっと説明が出来んが、とにかく大変がおおごとなんじゃいっ!」
剛角はとにかく混乱している。
「いや、大変ってどういう……」
誠は言いかけて固まった。
隊員達も、鳳や神使も。佐々木や雪菜も硬直していた。
鬼達の後ろにいる人影?に気付いたからだ。
黒い外皮に首から下を覆われた巨体は、紛れも無くあのディアヌスだった。
今はあちこち負傷している彼女?は、牙の生えた口元を開き、機嫌悪げに唸っている。
誠は思わず大声を出した。
「ディ、ディアヌスっ!? 何でお前達と一緒に!?」
「そっそうよ! あんた達、里抜けしたんじゃなかったの!?」
カノンもたまらず身を乗り出す。
「い、いや、それが姉上。我らはあの後、島で暮らしてたんだが……いきなり光が飛んできてな。見に行ったらディアヌス様だったわけで」
刹鬼姫は懸命に事態を説明してくれた。
それから唇をかみ締め、目を閉じて唸るように言う。
「い、言いにくい……しこたま言いにくいんだが……姉上。ディアヌス様、そっちでかくまってくれないか……?」
『えええええっっっ!!!???』
その場の全員が声を上げた。
あの魔王ディアヌスをかくまう? いや無理だ、絶対に無理だ。
罠かもしれないし、いつ襲われるかも分からない。
ただでさえ邪神軍団との戦いに苦心してるのに、その上でこんな厄介事を招き入れるなんて、考えただけで恐ろしかった。
誠は間髪入れずに断ろうとするのだったが、そこで鶴が身を乗り出した。
「面白い、乗ったわ!」
『えええええっっっ!!!???』
誠達は飛び上がった。参謀方の1人からカツラが飛んだが、今そんな事はどうでもいい。
「い、いやヒメ子、魔王だぞ!? 魔王のディアヌスなんだぞ!? いくら何でもこれだけは……」
「そうねえ、確かに危険でしょう。ああうん、まったくもって危険だわ」
鶴は物分かり良く頷いたのだが。
「でも乗るわっ!!!」
『えええええっっっ!!!???』
一同は再び飛び上がり、多数のカツラが宙に舞ったが、鶴は自信満々で言った。
「誰が何と言おうと、この鶴ちゃんが許可するわ! すぐに迎えをよこして頂戴! ていうか黒鷹、私達が行きましょうっ!」
「い、いやいや、いやいやいやいや……!!!」
誠は首をぶんぶん振るのだったが、鶴は船団長の佐々木に怒鳴った。
「佐々木っちゃん、勝つにはこれしかないわ! 迎えの飛行機をお願い、早く!」
「わ、分かりましたぞ、鶴ちゃんさん。もうどうなっても知りませんが……」
佐々木は目を白黒させながら、急ぎ輸送機の手配をしてくれた。
「す、すぐ迎えを寄越すから……そこで待っててくれ」
誠は鬼達にそれだけ言うと、輸送機で北海道を後にしたのだ。
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