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第六章その4 ~ようこそ蝦夷地へ!~ スケールでかすぎ北海道上陸編
まさかの最強来訪者。鬼達もびっくり
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「……とんでもない事になってきたね。まさか封印が開いて、邪神どもが出てくるなんてさ」
焼きあがった猪肉にかぶりつきながら、刹鬼姫は呟いた。
目の前には、焚き火を囲む2人の仲間……巨体の剛角と、小柄な童のような紫蓮がいた。
場所は瀬戸内海に浮かぶ大三島、その海辺にある駐車場だ。
平和な頃は道の駅と呼ばれたらしく、崩れかけた巨大な吊り橋の残骸が、海上のあちらこちらに見受けられた。
あのパイロットや鶴姫と別れた後、天敵・渡辺の追跡から逃れた一同は、そのままこの島で過ごしていたのだ。
この先どうするかしばらく考えよう……というのが当初の理由だったが、暮らしてみると獲物が多く、大変都合が良かったのである。
この島に熊はいないらしいが、サメが噛んでも傷1つ負わない鬼にとって、野宿に1ミリの危険も無かった。
そのため寝起きは山なのだが、火事になったら元も子もないので、火だけは広い駐車場で焚いていたのだ。
「……そうじゃのう姫さん。里抜けした以上、双角天様も敵って事じゃし、もっと遠くに逃げた方がええかもしれん」
巨体の剛角は、そう言って腕組みしながら白い板にもたれる。
ガードレールとかいう物らしいが、こんなうすっぺらい鉄板、赤子の鬼でも引き裂くだろう。これで一体何を防ぐつもりなのかは、正直よく分からなかった。
「いや剛角、双角天様より、その御子の方がやっかいじゃろ」
そこで紫蓮が口を挟んだ。
「双角天様やわしらは、よっぽどでなきゃ逃げる相手に興味が無い……が、あの六道王子は違う。弱かろうが逃げようが、面白がって殺すらしい」
紫蓮は猪の肉を、肋骨ごと噛み砕きながらそう言う。
「ま、いずれにしても、里抜けしたあたしらが見つかれば殺されるさ。双角天様だって、掟を破った配下を見逃すわけないだろうし……」
刹鬼姫はそこで、あの人間達の事を思った。
一緒に楽しく飯を食い、共に笑いあった以上、どうしても情が湧くのだ。
「……あいつら、無事に逃げたかな。姉上もいるから大丈夫だとは思うが……」
だが、刹鬼姫がそこまで言った時だった。
不意に夜空が、明々と輝いた。
真昼かと疑うほどの光だったが、それが魔法によるもので、更には強い威力を宿している事を、鬼達は瞬時に感じ取った。
「剛角っ、紫蓮っ、逃げるよっ!!!」
剛角が焚き火を踏み砕くと、3人は夜の闇へと駆け出した。
しかし光は3人を狙ったものではなかった。走る一同を置き去りにして、空の彼方に飛び去ったのだ。
刹鬼姫は木の上に飛び上がり、手を翳して彼方を見つめる。
紫蓮、剛角も次々別の木に駆け上がったが、体重が重すぎ、剛角の乗った木は砕け散った。
「なんだいありゃ? とんでもない邪気と速さだったけど」
「……分からん。分からんが、相当強い邪神じゃろな。この辺でドンパチの気配もなかったし、戦場は相当遠くじゃ。なのにあの速さと威力ですっ飛んでくる……相当の化け物の仕業じゃろ」
紫蓮は真剣な顔でそう言った。
長い黒髪は少女のようにつやつやして、一見して可愛い子供のようだが、鬼にしてはかなり頭がいい方なのだ。
「分かった。じゃあしばらく危険は無いって事だね」
刹鬼姫は木から飛び降り、半ば埋まっていた剛角に言った。
「一応見に行くよ。厄介な呪いでもあれば、水場が汚れるかも知れないし。消せる呪詛なら早めに消す」
「よっしゃ姫さん」
紫蓮も木から降りてきて、一同はひた走った。道を横切り、山の斜面を飛び越えて身を躍らせる。
やがて3人は現場に到着した。
木々をなぎ倒し……というより、瞬時に焼き切りながら落下した光は、山火事すら起こしていない。
燃える暇すら与えず消滅させた、というのが恐らく正しいだろう。
もうもうと噴き上げる煙を払いながら進む刹鬼姫達だったが……そこで驚愕したのだ。
「えっ、ディ、ディアヌス様っっ!!?」
「肥河之大神様じゃと!? なんでこんな所に!」
えぐれた斜面に背を預け、座り込んで項垂れるのは、立ち上がれば4メートル近い巨体の持ち主。
紛れも無く魔王ディアヌスであり、神代の昔に暴れまわった八岐大蛇が、人型に転じた姿だった。
ディアヌスはしばらく呻いていたが、やがて牙を剥き出して咆えた。
「ぐっ……ううおおおおおおっっっ!!!」
凄まじい咆哮に空が震え、一同は耳を押さえてよろめいた。
「に、逃げた方がいいか……!? あたし達を追ってきたのか?」
刹鬼姫は混乱したが、すぐにディアヌスは静かになった。
よく見ると、鎧のような外皮はあちこち裂けて、全身傷だらけだったのだ。
「こ、こりゃー酷いぞ紫蓮。このままじゃ危ないかもしれん」
「じゃがここじゃどうにもならんぞ? どこかにお連れするか?」
慌てる一同だったが、そこでふと刹鬼姫の眼前に、何か小さなものがよぎった。
直径数センチ程の光の玉が、ふわふわと雪のように降下しては、再び宙に舞い上がっていくのだ。
「な、何だいこりゃ」
刹鬼姫はしばらく警戒していたが、光はなおもこちらの前を飛び回っている。まるで何かを語りかけているかのようだ。
刹鬼姫はそこで気付いた。
「そうかこの光、あの女神のものか……!」
これはあの岩凪姫という女神の、砕けた魂の一部である。だとしたら……
「これを使えば、もしかして通じるかも知れないね」
刹鬼姫は意を決し、光に向かって語りかけたのだ。
焼きあがった猪肉にかぶりつきながら、刹鬼姫は呟いた。
目の前には、焚き火を囲む2人の仲間……巨体の剛角と、小柄な童のような紫蓮がいた。
場所は瀬戸内海に浮かぶ大三島、その海辺にある駐車場だ。
平和な頃は道の駅と呼ばれたらしく、崩れかけた巨大な吊り橋の残骸が、海上のあちらこちらに見受けられた。
あのパイロットや鶴姫と別れた後、天敵・渡辺の追跡から逃れた一同は、そのままこの島で過ごしていたのだ。
この先どうするかしばらく考えよう……というのが当初の理由だったが、暮らしてみると獲物が多く、大変都合が良かったのである。
この島に熊はいないらしいが、サメが噛んでも傷1つ負わない鬼にとって、野宿に1ミリの危険も無かった。
そのため寝起きは山なのだが、火事になったら元も子もないので、火だけは広い駐車場で焚いていたのだ。
「……そうじゃのう姫さん。里抜けした以上、双角天様も敵って事じゃし、もっと遠くに逃げた方がええかもしれん」
巨体の剛角は、そう言って腕組みしながら白い板にもたれる。
ガードレールとかいう物らしいが、こんなうすっぺらい鉄板、赤子の鬼でも引き裂くだろう。これで一体何を防ぐつもりなのかは、正直よく分からなかった。
「いや剛角、双角天様より、その御子の方がやっかいじゃろ」
そこで紫蓮が口を挟んだ。
「双角天様やわしらは、よっぽどでなきゃ逃げる相手に興味が無い……が、あの六道王子は違う。弱かろうが逃げようが、面白がって殺すらしい」
紫蓮は猪の肉を、肋骨ごと噛み砕きながらそう言う。
「ま、いずれにしても、里抜けしたあたしらが見つかれば殺されるさ。双角天様だって、掟を破った配下を見逃すわけないだろうし……」
刹鬼姫はそこで、あの人間達の事を思った。
一緒に楽しく飯を食い、共に笑いあった以上、どうしても情が湧くのだ。
「……あいつら、無事に逃げたかな。姉上もいるから大丈夫だとは思うが……」
だが、刹鬼姫がそこまで言った時だった。
不意に夜空が、明々と輝いた。
真昼かと疑うほどの光だったが、それが魔法によるもので、更には強い威力を宿している事を、鬼達は瞬時に感じ取った。
「剛角っ、紫蓮っ、逃げるよっ!!!」
剛角が焚き火を踏み砕くと、3人は夜の闇へと駆け出した。
しかし光は3人を狙ったものではなかった。走る一同を置き去りにして、空の彼方に飛び去ったのだ。
刹鬼姫は木の上に飛び上がり、手を翳して彼方を見つめる。
紫蓮、剛角も次々別の木に駆け上がったが、体重が重すぎ、剛角の乗った木は砕け散った。
「なんだいありゃ? とんでもない邪気と速さだったけど」
「……分からん。分からんが、相当強い邪神じゃろな。この辺でドンパチの気配もなかったし、戦場は相当遠くじゃ。なのにあの速さと威力ですっ飛んでくる……相当の化け物の仕業じゃろ」
紫蓮は真剣な顔でそう言った。
長い黒髪は少女のようにつやつやして、一見して可愛い子供のようだが、鬼にしてはかなり頭がいい方なのだ。
「分かった。じゃあしばらく危険は無いって事だね」
刹鬼姫は木から飛び降り、半ば埋まっていた剛角に言った。
「一応見に行くよ。厄介な呪いでもあれば、水場が汚れるかも知れないし。消せる呪詛なら早めに消す」
「よっしゃ姫さん」
紫蓮も木から降りてきて、一同はひた走った。道を横切り、山の斜面を飛び越えて身を躍らせる。
やがて3人は現場に到着した。
木々をなぎ倒し……というより、瞬時に焼き切りながら落下した光は、山火事すら起こしていない。
燃える暇すら与えず消滅させた、というのが恐らく正しいだろう。
もうもうと噴き上げる煙を払いながら進む刹鬼姫達だったが……そこで驚愕したのだ。
「えっ、ディ、ディアヌス様っっ!!?」
「肥河之大神様じゃと!? なんでこんな所に!」
えぐれた斜面に背を預け、座り込んで項垂れるのは、立ち上がれば4メートル近い巨体の持ち主。
紛れも無く魔王ディアヌスであり、神代の昔に暴れまわった八岐大蛇が、人型に転じた姿だった。
ディアヌスはしばらく呻いていたが、やがて牙を剥き出して咆えた。
「ぐっ……ううおおおおおおっっっ!!!」
凄まじい咆哮に空が震え、一同は耳を押さえてよろめいた。
「に、逃げた方がいいか……!? あたし達を追ってきたのか?」
刹鬼姫は混乱したが、すぐにディアヌスは静かになった。
よく見ると、鎧のような外皮はあちこち裂けて、全身傷だらけだったのだ。
「こ、こりゃー酷いぞ紫蓮。このままじゃ危ないかもしれん」
「じゃがここじゃどうにもならんぞ? どこかにお連れするか?」
慌てる一同だったが、そこでふと刹鬼姫の眼前に、何か小さなものがよぎった。
直径数センチ程の光の玉が、ふわふわと雪のように降下しては、再び宙に舞い上がっていくのだ。
「な、何だいこりゃ」
刹鬼姫はしばらく警戒していたが、光はなおもこちらの前を飛び回っている。まるで何かを語りかけているかのようだ。
刹鬼姫はそこで気付いた。
「そうかこの光、あの女神のものか……!」
これはあの岩凪姫という女神の、砕けた魂の一部である。だとしたら……
「これを使えば、もしかして通じるかも知れないね」
刹鬼姫は意を決し、光に向かって語りかけたのだ。
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