新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

朝倉矢太郎(BELL☆PLANET)

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第六章その2 ~あきらめないわ!~ 不屈の本州脱出編

天神様の合格合宿

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「うおおおおおおおっ!!!」

 一同はデータの山と格闘した。

 なぜか『めざせ合格』と書かれた垂れ幕がかかっていたし、牛が天満宮の合格お守りを配ったりしているが、とにもかくにも頑張った。

 無数の観測所で記録されたデータを繋ぎ合わせ、敵がどう動き、どう侵攻しようとしているのかを解析するのだ。

 解析結果は大きな地図に皆で書き込んでいく形だ。

 振動や電磁波の乱れから、敵の動きが見られる所に×印を描き、誠がそれらを線で繋いでいく。

 邪気の反応が強いところほどペンの色を変えていったので、地図上にはまるで気温や海水温の分布図のようなラインが描かれていった。

 緑が邪気が薄く、黄色やオレンジが中間レベル。赤や紫、更に黒が邪気がかなり強い場所だ。

「ようし、段々見えてきたぞ……!」

 誠は興奮しながら線で結んでいくが、右上の方にやけに独立した×が並んでおり、結ぶと
『たこやき』の文字になった。

 他にも神使達の似顔絵なども発見され、誠はたまらず怒鳴った。

「お前ら、いい加減にしろよっ!」

「ええやんか鳴っち、ちょっとリラックスした方がええねんで」

「そうよ黒鷹、力を抜いて。成功にリラックスは不可欠よ」

「いつ緊張するんだよ君は」

 ワカメの着ぐるみでゆらゆら揺れる鶴に、コマが慌ててツッコミを入れている。

「まあ冗談はともかく……どうしてかしら、けっこういびつになってるけど。このへんとか特に地形に差が無いのに、敵の広がりがかなり違うし……」

 カノンは頭に牛を乗せ、怪訝そうに考えている。

 コマは前足を上げて説明した。

「多分地脈の流れとか、山の霊気とかの影響だよ。あとは神社みたいに、清い気が強めに残ってるとかね」

「……この邪気が薄い場所は、強い敵がいないって事だよな?」

 誠が念のため尋ねると、コマは頷いた。

「そうだよ黒鷹。強い餓霊や邪神が活動するには、相当濃い邪気で覆われてないといけない。だから地図で言えば……邪神が来るのは、この真っ黒い所だけだね。紫と赤ぐらいなら、強い餓霊とか、黄泉醜女ヨモツシコメも出てくると思うよ」

「なるほどな。狙うなら当然邪気の薄いところだけど……完全に安全地帯が続いてるわけじゃないか」

 地図を見ると、邪気が比較的薄いエリアの先にも、どうしても濃い場所があったりする。

 完全に安全地帯だけを突っ切るわけにはいかず、やはり多少の危険は付きまとうのが現実だった。

 そこで音羽氏が恐る恐る手を上げた。

「あ、あの、発言いいでしょうか……ひっ!?」

「ええで!」

「なんじゃい!」

 キツネ、そして眼帯を付けた狛犬に飛び乗られ、怯える音羽氏だったが、なんとか頑張って意見を言う。

「そ、それでは……うわっ、猿も来た! え、ええとですね、あれからリストを調べてたんですが……丁度その邪気が薄いあたりに、建設中の大型居住区があるんです。自分も何度か物資を配送したんですが」

「どれどれ音ちゃん、ちょっと動かないでね」

 鶴が音羽氏の頭に手をかざし、霊力で記憶を映し出した。

 すると通信車のモニターには、巨大な居住区予定地が映されたのだ。

「こりゃーすごいで、マンモス居住区って感じや」

「そうです、地下貯水槽もかなり深くて、相当大規模なんですが」

「あっ、そうか!」

 誠はそこでぴんときた。

「分かっていただけましたか、鳴瀬少尉」

 音羽氏は嬉しそうにニヤリと笑う。

「多分な。てかさすが輸送工作班、こういう事のスペシャリストだ」

 誠が言うと、難波がジト目で睨んでくる。

「いやいや鳴っち、何さっきから2人で通じあっとんねん。うちらにも説明しいや」

 そこで誠は音羽氏と協力し、一同に作戦を説明した。

「……と、いうわけだ。もちろん100パーうまくいくとは限らないけど、今はこれしか手が無いと思う。ヒメ子も元気になってきたし、またヒメ子頼りになって悪いけどさ」

「平気よ黒鷹。私ほど真面目な娘っ子なら、どうしても頼られてしまうものよ」

 よくもそんな事を、とツッコミを入れるコマをよそに宮島が言った。

「まあ隊長の無茶には、俺ら慣れっこだもんな?」

「そうそう、よく今までお陀仏にならなかったと不思議なくらいだ」

 香川は両手を合わせ、祈るようなポーズでウインクした。

「特に宮島がいると、意味無く敵のボスを引き寄せてくれるし。欲にまみれて、モテモテウハウハとか言い出して」

「言うなあ香川、今回は無いぜ。もう彼女出来たし、モテる必要ないんだもんよ」

「ほな、宮島がフラれない事を祈っとるで。ほんならうちらは安全やし……なんなら恋愛指南のアドバイスしたるか、カノっち」

「……あのねこのみ。それ、500年1人だったあたしに言う?」

 カノンが拗ねたように難波を睨み、一同は思わず笑った。

「なんだかいつもの皆さんに戻られましたね」

 鳳も嬉しそうに微笑んでいる。

「こうなった時の皆さんは、ほんっとに強いですから。私も勝利を信じています」

「よーし、やったるでー! みんなで悪党にぎゃふんと言わせるんや!」

 キツネがジャンプして叫び、一同はおお、と気合いを入れる。

 音羽氏は席を立ち、急ぎ車外に出ようとした。

「それじゃ大至急、残りの準備を整えますね。整備や修理が終わり次第、作戦決行という事で」

「それならこっちも、出来るだけ小道具そろえないと。敵の目を引くためにも」

 誠が言うと、そこで鶴が着物の袖口をまさぐった。

「そう、あとは準備よね。そこで鶴ちゃんにナイスアイデアがあるのよ」

「またろくな事じゃないんだろうね」

 コマのジト目をよそに、鶴は黒い何かを取り出した。

 とても袖に入っていたとは思えないサイズのそれは、よくテレビの撮影などに使われる大型カメラであった。

 鶴はそれをバズーカ砲のように担ぎ、自信満々に言い放つ。

「せっかくだから、私達の頑張りをキャメラで撮るわ。これは国守る神話だし、いつかナギっぺやサクちゃんのお社を直して、そこでこれを上映するの。みんなの活躍をドヤ顔で流して、2人の度肝を抜いてやるわ」

「……それはいいね。お2方とも、きっと喜んで下さると思うよ」

 コマはそう言って、ちょっと前足で涙を拭った。

「そういう事なら神使達ぼくたちも協力するよ。小さいカメラもあるなら、交代で持つしさ」

「それじゃスタート、撮影開始よ!」

 一同は席を立ち、急ぎ準備に走り回った。
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