新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

朝倉矢太郎(BELL☆PLANET)

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第六章その2 ~あきらめないわ!~ 不屈の本州脱出編

夏休みの宿題。泣きながら最終日にやるもの

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 誠達を乗せたコマは、風のように駆け抜けていく。

 急に元気になってきた鶴は、道すがら楽しげに語りかけてきた。

「色々思い出すわ。鎮西ちんぜいでもこうやって、遠慮なく町に潜入したわね」

「鹿児島か……大変だったけど、今思えば懐かしいよな」

 誠が言うと、コマが走りながら付け足してきた。

「ていうか、北陸で敵の砦に潜り込んだ時もこうだったよ」

「そうそう、あの時も楽しかったわ」

「そ、そりゃあヒメ子は楽しかっただろうけど、こっちはヒヤヒヤもんだったぞ? ヒメ子がいきなり、敵に焼き芋ご馳走になったりして」

「ところがドスコイ、あれはおいしかったのよ」

「味の話はしてないよ鶴っ」

 そんな会話を楽しむうちに、誠達は目的の施設にたどり着いた。

 せいぜい10坪ほどの白く四角い建物であり、例のごとくカギを霊力でこじ開けると、中には所狭しと箱型の機械が据えつけてあった。

 機械には無数のランプが点滅し、さながら蛍の群生地に辿り着いたようだ。

 誠達は元の大きさに戻り、さっそく機器に駆け寄った。

「良かった、ちゃんと生きてるぞ。電源が落ちてまだ数時間だし、バックアップもとれてるはずだ」

 誠はとりあえず安堵し、蓄積されたデータの種類を確認していく。

 データは多岐に渡っていて、気温や風向きなどの基本情報に加えて、震度計や電磁波、音波の測定など、餓霊の侵攻を判断するのに必要な物が揃っている。

 コマが誠の肩に飛び乗り、心配そうに尋ねてきた。

「……どう黒鷹、役に立ちそう?」

「いけるさコマ。有線ケーブルで同タイプの観測所と繋がってる。連携してデータをとってるから、どこまで敵が来てるか分かるぞ」

 誠はデータを端末に抜き取りながら答えた。

「戦いが終わって、油断してもおかしくなかったのに……もしもに備えてくれてたんだな」

「しっかり者もいるものだわ、きっと佐賀のひゅうかもんね。こんな事もあろうかと、備えあれば嬉野市うれしのしよ」

「佐賀県の防災キャッチコピーじゃないんだから」

 したり顔で頷く鶴、ツッコミを入れるコマをよそに、誠はデータの抜き取りを終えた。

 再び打ち出の小槌で小さくなると、鶴とともにコマの背にまたがる。

「ハイヨーコマ、それじゃ戻るわよ!」

「よしきた!」

 コマは一目散に元来た道を駆け戻った。



 誠達が戻ってみると、皆は忙しく走り回って準備をしている。

 輸送車の荷台に座る人型重機は、操縦席の隔壁コクピットハッチを開いて整備の真っ最中だったし、車両も補修を行っていた。

 必死に作業する音羽隊に混じって、神使達も手伝っているのが可愛らしい。

 操縦席に座り、機体の調整を行っていた難波は、誠達を見て手を振った。

「超早かったやんか、お目当ては見つかったんか?」

「それはもちろん、大収穫よ!」



「うーわ……こりゃまたひでー感じだよなあ。夏休みの宿題思い出すぜ」

 テーブルに積まれていく用紙の山に、宮島は引きつった顔で感想を述べた。

 誠が持ち帰ったデータをプリントアウトし、神使達がせっせと積み重ねているのだったが……その枚数たるや、ちょっと数えるのも嫌になる程である。

「ドン引きや、よおこんだけ紙があったわ」

 難波が呆れたように言うと、後ろで音羽氏が答える。

「当班は被災者への補給も任務ですから、伝達事項を配るために用意してたんです。端末も電源も使えなくなったら、最後の最後は紙ですからね」

 香川も冷や汗を流しながら、手を合わせて紙の山を拝んでいる。

「ま、まあ、データがあるだけ有難いんだが……唐で学んだ弘法大師が、持ち帰った経典ぐらいあるんじゃないか?」

「天神様に、白紙に戻して欲しいわね」

 カノンもげっそりした様子で頷く。

 894年、菅原道真すがわらのみちざね公が遣唐使を廃止した事にちなんだ洒落だったが、牛は喜んでカノンの頭に飛び乗った。

「さすが角のある同士、天神様の素晴らしさが分かっていますね!」

白紙894に戻そう遣唐使』のプラカードを掲げ、カノンの角でポールダンスのように回転する牛、それに拍手する他の神使をよそに、鶴が腰に手を当てて言った。

「さあ、こうなったら時間との勝負よ! みんな、ひたすらがんばって!」

「いやいや、君も頑張ろうよ」

 コマは慌ててツッコミを入れるが、そこで難波がニヤニヤしながら鳳を見る。

「まあうちら、前にも天守閣で缶詰めしたもんなあ?」

 そこで全員がぴんときて、鳳に視線を集中させた。

「うっ……! な、なんとなく分かりますが……同じ事を言えばいいのでしょうか?」

 鳳は虚空から太刀を取り出し、赤い顔で一同に言った。

「オッホン……ではこれより、無駄口は厳禁としますが……別に斬ったりしませんよ?」
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