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第六章その1 ~絶対勝てない!?~ 無敵の邪神軍団編
味方からの報せ。困った時はホントに嬉しい!
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「近くに逃げ遅れの隊がいないか探ってたんですが、偶然これが入ってきまして」
車内の機器を操作しながら、木崎少佐は説明を続ける。
本来なら通信兵が行うべき作業なのに、よほど嬉しかったのだろう。
彼の肩に乗るコマもそれは同じで、さっきから少佐を何度も急かしている。
「これだけ邪気が強いのに、よく通信出来たね。さ、早く聞かせてよ」
「い、いや、そんなクリアな通信じゃないよ。途切れ途切れなんだが」
初めて見る生狛犬に戸惑いながら、少佐は音声を再生する。
色濃い邪気のせいだろう、激しいノイズが何度も入ったが、やがて人の声らしき音が聞こえてきた。
『こちら……旧陸上……所属……初山…です。現在、ポイント806……東海……北部を避難中……安全な……避難……路を発見…………付近の……は、…………連絡されたし……』
再生しながらも、少佐の顔は輝いていた。
「この初山ってやつ、旧陸自からの馴染みなんです。確か近くの新設避難区にいたはずですし、早めに避難を開始してたとしたら、多少の余裕もあったはずです。その時間的な猶予で、避難経路を割り出しててもおかしくありませんから……!」
まだ30歳ぐらいの少佐は、はやる気持ちを抑えきれないように言った。
「こうなったら、いつまでもへこんでられませんよ。夏木の分も俺達がしっかりしないと……!」
「えらいっ、偉いよお兄さん!」
コマが喜び、前足で顔をバンバン叩いてくるので、木崎少佐は困っている。
「うっ、アグレッシブなワンちゃんだな……と、とにかく、すぐに合流しましょう」
待ち望んでいた希望だったため、話を聞いた一同は盛り上がった。
だがそこで佐久夜姫が提案する。
「…………ちょっと待って。一度先行して、状況を確認した方がいいわ」
佐久夜姫は腕組みし、少し考えながら言葉を紡ぐ。
「そこ自体は安全でも、周りに待ち伏せてる事もあるし。通信にも邪気の影響がかなり出てるし、敵が近くにいる可能性もあるでしょう?」
こういう時の彼女の顔は、姉である岩凪姫に良く似ていた。
「それでは先に偵察隊を派遣しましょう。その間に車両の補修や移動の準備を進めます。鳴瀬少尉、音羽隊も……」
「もちろん行けます!」
「こちらもであります!」
誠も、そして輸送班の音羽隊も即答した。
誠はそこで思い出した。
隣にいる音羽氏とは、旧香川県の撤退戦で共に生き延びた間柄だ。退避作戦のパートナーとして、これほど縁起のいい相手もいないだろう。
(そうだ、あの時と同じだ。だからきっと何とかなる……!)
誠は無理に自分に言い聞かせるのだった。
車内の機器を操作しながら、木崎少佐は説明を続ける。
本来なら通信兵が行うべき作業なのに、よほど嬉しかったのだろう。
彼の肩に乗るコマもそれは同じで、さっきから少佐を何度も急かしている。
「これだけ邪気が強いのに、よく通信出来たね。さ、早く聞かせてよ」
「い、いや、そんなクリアな通信じゃないよ。途切れ途切れなんだが」
初めて見る生狛犬に戸惑いながら、少佐は音声を再生する。
色濃い邪気のせいだろう、激しいノイズが何度も入ったが、やがて人の声らしき音が聞こえてきた。
『こちら……旧陸上……所属……初山…です。現在、ポイント806……東海……北部を避難中……安全な……避難……路を発見…………付近の……は、…………連絡されたし……』
再生しながらも、少佐の顔は輝いていた。
「この初山ってやつ、旧陸自からの馴染みなんです。確か近くの新設避難区にいたはずですし、早めに避難を開始してたとしたら、多少の余裕もあったはずです。その時間的な猶予で、避難経路を割り出しててもおかしくありませんから……!」
まだ30歳ぐらいの少佐は、はやる気持ちを抑えきれないように言った。
「こうなったら、いつまでもへこんでられませんよ。夏木の分も俺達がしっかりしないと……!」
「えらいっ、偉いよお兄さん!」
コマが喜び、前足で顔をバンバン叩いてくるので、木崎少佐は困っている。
「うっ、アグレッシブなワンちゃんだな……と、とにかく、すぐに合流しましょう」
待ち望んでいた希望だったため、話を聞いた一同は盛り上がった。
だがそこで佐久夜姫が提案する。
「…………ちょっと待って。一度先行して、状況を確認した方がいいわ」
佐久夜姫は腕組みし、少し考えながら言葉を紡ぐ。
「そこ自体は安全でも、周りに待ち伏せてる事もあるし。通信にも邪気の影響がかなり出てるし、敵が近くにいる可能性もあるでしょう?」
こういう時の彼女の顔は、姉である岩凪姫に良く似ていた。
「それでは先に偵察隊を派遣しましょう。その間に車両の補修や移動の準備を進めます。鳴瀬少尉、音羽隊も……」
「もちろん行けます!」
「こちらもであります!」
誠も、そして輸送班の音羽隊も即答した。
誠はそこで思い出した。
隣にいる音羽氏とは、旧香川県の撤退戦で共に生き延びた間柄だ。退避作戦のパートナーとして、これほど縁起のいい相手もいないだろう。
(そうだ、あの時と同じだ。だからきっと何とかなる……!)
誠は無理に自分に言い聞かせるのだった。
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