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第四章その10 ~最終決戦!?~ 富士の裾野の大勝負編

互いに全力

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『さっきの分の修正はかけた! 第3ラウンド、いくぞっ!』

 画面上で筑波が叫んだ。

 それに応えるように、機体はどんどん出力を上げていく。

 しかし先程とは逆に、エネルギーのノイズは激減していた。

 模擬戦すら経ないまま実戦投入された機体だったが、ここまでの戦いの中で、技術者達は確実にその問題点を改善してくれているのだ。

「来い小僧っ!!!!!」

 魔王がえた。誠も機体を走らせる。

 全力で振り下ろしてきた剣撃を、誠は動きを先読みして横にかわす。分かっていても凄まじい速度に、震天の肩の装甲が紙のように切り飛ばされた。

 こちらが反撃する間も無く、魔王は立て続けに剣を振るう。

 誠は必死に連撃を受け切り、太刀で相手の刃を流しながら懐に入った。

 そのまま最小限の動きで突きを繰り出すが、魔王は腕の硬皮でそれを防いだ。

 腕から鮮血が噴き出すも、魔王はこちらの胴を蹴った。

「ぐううううっ!?」

 先程の遊び半分の蹴りとは、まるで威力が違っていた。

 相手の腕から刃が抜ける。機体の足を踏ん張るが、慣性ブレーキをかけていても、一気に後ろにもっていかれた。

 装甲が軋み、画面の幾つかにノイズが流れている。

 今度は魔王から突っ込んできた。

 避け切れないため、刀の属性添加量を最大にして受け止める。

 凄まじい衝突音と共に、双方が大きく体勢を崩した。

 画面の示す震天のパワーレベルは5.8程度。7がフルゲージであるため、出力はかなり上がってきている。

 そこから先は、力と力のぶつかり合いだった。

 鍔迫つばぜり合いし、火花を巻き上げながら押し合って、隙間が空けば何度も打ち合う。

 先読みして身をかわす暇のない、至近距離の戦いである。中間距離で動きを読まれるのを防ぐべく、魔王が間を詰めているからだ。

 しかし誠も望むところだった。

 いかに中間距離で動きを読もうと、この魔王はギリギリの所で致命打を防ぐ。それだけの反射速度と技量がある。

 だったらこの距離を制さなければ、いつまで経っても決着がつかないのだ。

 そこで魔王の攻撃を受け、機体は大きく後ずさった。

(押し負けた……パワーはまだディアヌスが上か……!)

 魔王はそのままトドメをさすべく突っ込んでくる。

 正面からの打ち合いで、この相手を突破出来るか……?

 だが誠の脳裏に、そこである事がひらめいた。

(正面は鉄壁、だったら……!)

 誠は機体を踏ん張らせると、魔王に向かって走らせる。

 そのまま魔王の直前まで迫ると、瞬時に属性添加機の慣性を切り替え、素早く背後に回り込んだのだ。

 追い詰められて出た動きは、幼いあの日、一番最初に教わった技だった。

鶉谷うずらたにスペシャル!? あの巨体で!?』

 自らの得意技を目にし、驚く雪菜の声が聞こえた。

 誠は操作レバーを強く握り締める。

(そうだ、あの人に恩返ししたかったんだ……!!!)

 そのまま魔王の背中を横薙ぎする。背の外皮が大きく吹き飛び、鮮血が噴き出すのが分かった。

(やった、とうとう一太刀浴びせた……!!!)

 激しい戦いの疲労もあり、一瞬気が遠くなる誠だったが、鶴の声が意識を呼び戻した。

『黒鷹、しっかりっ!! 反撃来るわ!!!』

「ぬううううっっっ!!!」

 背を深く切られながらも、ディアヌスは振り返って刃を振るった。

 凄まじい一撃だったが、咄嗟とっさに太刀で受ける事が出来た。

 双方ともによろめいたし、どちらも刀が砕け散った。

 だがディアヌスは邪気を集中して結晶化し、手にした刃を再生させていく。

 しかしこちらの剣は…………

「まだだっ!!!!!」

 誠が叫ぶと、機体は折れた太刀を握り締める。刀身がまばゆい光に包まれると、どんどん伸びて黒い刃になっていく。

 それはこの日本奪還の戦いが始まった時、女神がくれた太刀だった。

 本来なら生身の誠が持つものだったが、それが巨体の震天が持つ程のサイズとなったのだ。

 こんな巨大な力を出して、この後どうなるか分からない。でもここまで来たら、どうのこうの言っていられないのだ。

 魔王が咆えた。誠も応えた。

 双方が死力を振り絞って打ち合った。

 震天の巨体から流れ込む大量の情報により、とっくに脳疲労は限界を超えている。衝撃が体を叩く度、体中の神経が焼きつきそうだった。

 それでも構いやしない。今目の前の魔王を倒す、そのためだけに戦ってきたのだ。

 日本を取り戻して、あの懐かしい故郷を復興させて、みんなで楽しく暮らすんだ。

 そんな夢物語を掴むために、多くの人が犠牲になってきたのである。

 彼らの思いに応えるために、ここで退く事だけはあり得ない。
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