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第四章その10 ~最終決戦!?~ 富士の裾野の大勝負編

みんなのエール2

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 更に画面には、全神連・西国本部の一同が映った。

 巨大な縁結びのお守りを振る津和野、それを支える湖南と才次郎。

 大量の梨を風呂敷から落として叫ぶ因幡いなば

 戦勝祝いの前準備なのか、見事なブリのお造りを持ち上げ、机に足を乗せて怒鳴る勝子かつこ

 作務衣さむえの上半身をはだけて気合いを入れる高山たかやま

 普段は控えめなおおとりも、高山に体当たりして画面に割り込んだ。

「黒鷹様っ、あなたなら大丈夫です! めはり寿司、ぜひ一緒に食べましょう!」

 その鳳を飛び越えるように、小さな神使達が現れる。

「負けんなやとうへんぼくっ!」

 キツネが言うと、菅笠すげがさを被ったサル、眼帯アイパッチを付けた狛犬も叫ぶ。

「黒鷹さん、あっしらがついてやすぜ!」

「わしら八幡はちまん・狛犬連合もじゃいっ!」

 牛、そしてダンベルを持った龍も飛び跳ねた。

「モウ正念場です!」

「集中だっ、心のダンベルを持ち上げろっ!」

 誠は思わず口元がほころんだ。言ってる意味が分からない。分からないけど上がった気がした。

 他にも船団長の佐々木や島津、そして伊能。

 食品会社の阿波丸あわまると秘書、悪役顔の留吉とめきちと死神。

 自衛隊出身としては、池谷や夏木、九州で会った親切なおじさん達。

 とんこつラーメンを持って応援する宗像むなかたさんもいたが、彼女の周囲では、小さなモアイやハテナマークに手足が生えて、鯉のぼりならぬかつおのぼりを振り回していた。

 売店の渡辺さん、整備班の美濃木達もいたし、白衣のひよりは、文具を撒き散らしながら応援している。

「鳴瀬少尉! 二風谷にぶたにひより、遠い船から応援してます! フレーッ、フレーッ!」

 彼女が抱える座布団の荒武者は、ひよりに罵声を浴びせている。

「貴様っ、もっと腹から声をだせっ!」

 第3船団のエースパイロット達も、九州の志布志隊も、東海の小牧隊も、皆が必死に叫んでいる。

 そこで宮島が音頭おんどをとった。

「よっしゃ、そしたら応援いくぜっ! 気合い入れろよっ、そおーりゃあっ!!!」

 うどんのように伸びのある声で、香川少年が後を続ける。

「そおーっりゃあっ!!!」

 皆が次々参加した。

 そおりゃっ!!!

 そおりゃっ!!

 段々叫びが短くなって、その分どんどん力強くなる。

 途中から何と叫んでいるかも分からなくなったが、聞いているだけで、誠は勇気がみなぎってきた。あたかも人々の応援で、邪気や呪いが押し返されていくかのようだ。敵地アウェーのように感じていたその場の空気が、明らかに変わっていく。

 誠は改めて思い出した。

 考えてみれば、鶴や女神が来てくれるまで、毎日危機ピンチばっかりだった。

 少しばかり勝利が続いて思い上がっていたけど、こんな困難、日常茶飯事だったはず。だったらこれで順調だ……!!!

 そこで画面にカノンの姿が映った。

 鬼としての正体を現したカノンは、筑波達と同じ部屋にいるようだ。もはや角を隠す事もせず、カノンは祈るように語りかけてくる。

「頑張って! 終わったら、美味しいご飯作ったげる……!」

 遠いあの日の別れのように、カノンは涙を流していた。

 誠はそこで思い出し、ポケットから干しいいを取り出した。

 片手で口に運び、思い切り噛み砕く。

 少し塩を効かせた懐かしいその味を、魂が覚えていた。全身に力が溢れ、一瞬、鎧姿の自分が見えたような気がした。

(前世のぶんの勇気も来たっ……! いくさの時は、やっぱりこれだ……!)

「任せとけよ、絶対勝つ……!!」

 誠が言うと、タイミング良く筑波が叫んだ。

「いよしっ、修正完了だ! 第2ラウンド、いけるか!?」

「いきますっ!!!」

 誠は答えると、操作レバーを力強く握り直す。

 機体は青い光を帯び、強力な慣性力を発生させて起き上がったのだ。
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