新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART4 ~双角のシンデレラ~

朝倉矢太郎(BELL☆PLANET)

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第四章その10 ~最終決戦!?~ 富士の裾野の大勝負編

対ディアヌス・バスターモード

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 風が静かに吹き抜けていた。

 ほぼ無音。魔王もこちらも、何の動きもとっていない。

 ……だが騒がしいのだ……!

 音にならない不思議なざわめき。増水した河川のように、逆巻く流れがかもし出す気配。それが身の内を駆け巡る血液のせいだと気付くのに、しばしの時を要した。

 幼い頃、たわむれに耳をふさいで聞いた、己の血潮がかなでる響きだ。

 高ぶる内心を表すかのように、心臓は素早く小刻みな拍動を続けている。

「…………っ」

 誠は静かに息を吐いた。どんなに落ち着こうとしても、横隔膜の緊張で呼気が震えた。

 そんな誠をよそに、船に残ったオペレーター達は、忙しく調整作業に明け暮れていた。

中核細胞セントラルコア、出力上昇!』

『各兵装の属性添加機、接続経路変更!』

『全人工筋肉のリミッター解除!』

『多重電磁防御膜、全装甲部を完全防護オールオーバー!』

 設定変更と共に、機体は凄まじい力に満ちて、人工筋肉が盛り上がっていく。

 相手はディアヌス、生半可な攻撃は通用しない。特殊武器に割り振っていたエネルギーを筋肉や刀に回し、格闘戦に全ての力を注ぎ込むのだ。

 画面に図示された機体能力値パラメーターは爆発的に高まり、やがて筑波が力強く叫んだ。

『対ディアヌス・討伐バスターモード起動っ!!』

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 瞬間、機体が大きく震えた。

 各部の属性添加機が同時多重に甲高い響きを奏で、青い稲妻が人工筋肉に駆け巡った。

「…………っ!」

 誠は再び息を吐き、モニターに映る魔王を見据えた。

 消耗したとはいえ、敵は神話に名高い大邪神。その尋常じんじょうではない強さは、対峙たいじした誠が誰よりも分かっている。

 それでも今は勝たねばならない。例え命に代えても、今日ここで絶望の日々を終わらさねばならないのだ。

 誠はゆっくりと機体の背を曲げた。少しずつ身をかがめ、ぎりぎりまで力を溜めて大地を踏みしめ。

 次の瞬間、一気に前に突進したのだ。
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