97 / 110
第四章その10 ~最終決戦!?~ 富士の裾野の大勝負編
震天・起動1
しおりを挟む
機体を起こしながら、誠はその場の惨状を見つめた。
倒れた車両。砕けた砲身。傷ついて横たわる多くの負傷兵。
破壊の限りを尽くされた旧市街と、そこに跋扈する人喰いの亡者ども。
それはまさにあの日の光景である。
10年前、突如として人々の暮らしを襲い、考えうる全てを奪っていった、理不尽な暴力の再現だった。
そして視界の彼方には、あの魔王の巨体がそそり立っている。全ての絶望の始まりであり、この長き災禍の送り主。
その姿を見た時、誠は我知らず操作レバーを握り締めた。
左手甲に移植された逆鱗……つまり、生体細胞で機体との神経伝達を行うシステムによって、誠の精神状態が乗機に伝わる。
機体の出力は急上昇し、爆発的なエネルギーが富士市一帯を駆け巡った。
人の創りしこの武者が、人々を虐げる悪しき亡者どもに怒りを覚えているかのように、凄まじい波動となって発せられたのだ。
餓霊どもは怖気づき、人々を襲う事も忘れて後ずさっていく。
『乗り心地はどうだ、後輩よ?』
画面には筑波の姿が映った。
第3船団で開発された、邪気の影響を受けにくい強力な近距離通信システムのおかげであるが、場所は先ほどまで筑波がいた船内格納庫ではない。
天蓋が開いて平坦になった船体端には、空母の艦橋のような震天専用・戦闘制御室が現れていた。
数多の画面と機器が据えられたその部屋に、多くの技術者達が集っているのだ。
『知っての通り、震天の巨体は神経負荷が大き過ぎる。OSも未完成だから、兵装と各部の調整はこの輸送船から補助する。不具合は動きながら直すぞ……!』
「……了解っ!」
誠は意識を集中し、周囲の状況を確認した。
各部に備えられたカメラや温度感知センサーには、懸命に避難していく人々が確認出来る。
今は迂闊に動けないし、戦えるようになるまで防御するしかない。
誠が防御を考えると、船の戦闘制御室にその情報が伝わり、オペレーター達が操作の補助を行うのである。
『超多重電磁防御壁展開』
『全装甲部に対物反射力場を付与』
彼らの言葉と共に、震天の周囲を青白い光の障壁が幾重にも覆い、餓霊どもの飛び道具……酸や腐弾を完全に防いだ。
飛び道具が効かぬと見るや、突進して直接攻撃に出ようとする奴らだったが、やはりこちらには傷一つつかない。
装甲全てが相手の攻撃を中和・反射し、逆に攻撃してきた餓霊がもんどりうって倒れる始末だ。
やがてしびれを切らしたのか、更に大型の餓霊が迫った。
百足のような下半身の上に、鎧武者のごとき上半身が生えたその姿は、あの日横須賀を襲った強敵・厨子王型の餓霊である。
刀のような腕で何度も切り付ける厨子王だったが、その攻撃も意味を為さない。
震天は片手で厨子王の頭を掴んで持ち上げると、いとも容易く握り潰した。そのまま大きく振り回すと、遥か虚空に投げ上げる。
誠が空中の相手に標的マークを合わせると、すかさず兵装の準備が整った。
『収束爆砕砲、用意出来!』
ターゲットマークが強く輝き、誠はトリガーを引いた。
直後、震天の眼前に強力な収束力場が発生した。
幾重にも、まるで空間が歪んだように光の輪が輝くと、力場は高速で発射され、落下する厨子王を粒子に変えて四散させたのだ。
誠が戦うその間にも、負傷兵達の避難は着々と進んでいく。
『退避進行、足元クリア。近接戦闘が可能となります』
「了解、格闘戦に移行します」
誠は答えると、機体を操作し、腰の太刀に手をかけた。巨大な太刀が閃いた瞬間、迫る餓霊が数体まとめて上半身を無くした。
『多重電磁式・超硬大太刀、抜刀!』
『電磁コネクター接続、右腕属性添加機01から06番まで並列励起。超多重斬撃属性、発動!』
刀身が青い光を帯びると、何重にも重ねられた強力な斬撃属性が、神話の武器のように眩しく太刀を輝かせる。
誠は機体を踏み込ませ、身を屈めて横一文字に薙ぎ払った。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!
凄まじい衝撃波が走り、広範囲の餓霊がまとめて肉片と化したのだ。
倒れた車両。砕けた砲身。傷ついて横たわる多くの負傷兵。
破壊の限りを尽くされた旧市街と、そこに跋扈する人喰いの亡者ども。
それはまさにあの日の光景である。
10年前、突如として人々の暮らしを襲い、考えうる全てを奪っていった、理不尽な暴力の再現だった。
そして視界の彼方には、あの魔王の巨体がそそり立っている。全ての絶望の始まりであり、この長き災禍の送り主。
その姿を見た時、誠は我知らず操作レバーを握り締めた。
左手甲に移植された逆鱗……つまり、生体細胞で機体との神経伝達を行うシステムによって、誠の精神状態が乗機に伝わる。
機体の出力は急上昇し、爆発的なエネルギーが富士市一帯を駆け巡った。
人の創りしこの武者が、人々を虐げる悪しき亡者どもに怒りを覚えているかのように、凄まじい波動となって発せられたのだ。
餓霊どもは怖気づき、人々を襲う事も忘れて後ずさっていく。
『乗り心地はどうだ、後輩よ?』
画面には筑波の姿が映った。
第3船団で開発された、邪気の影響を受けにくい強力な近距離通信システムのおかげであるが、場所は先ほどまで筑波がいた船内格納庫ではない。
天蓋が開いて平坦になった船体端には、空母の艦橋のような震天専用・戦闘制御室が現れていた。
数多の画面と機器が据えられたその部屋に、多くの技術者達が集っているのだ。
『知っての通り、震天の巨体は神経負荷が大き過ぎる。OSも未完成だから、兵装と各部の調整はこの輸送船から補助する。不具合は動きながら直すぞ……!』
「……了解っ!」
誠は意識を集中し、周囲の状況を確認した。
各部に備えられたカメラや温度感知センサーには、懸命に避難していく人々が確認出来る。
今は迂闊に動けないし、戦えるようになるまで防御するしかない。
誠が防御を考えると、船の戦闘制御室にその情報が伝わり、オペレーター達が操作の補助を行うのである。
『超多重電磁防御壁展開』
『全装甲部に対物反射力場を付与』
彼らの言葉と共に、震天の周囲を青白い光の障壁が幾重にも覆い、餓霊どもの飛び道具……酸や腐弾を完全に防いだ。
飛び道具が効かぬと見るや、突進して直接攻撃に出ようとする奴らだったが、やはりこちらには傷一つつかない。
装甲全てが相手の攻撃を中和・反射し、逆に攻撃してきた餓霊がもんどりうって倒れる始末だ。
やがてしびれを切らしたのか、更に大型の餓霊が迫った。
百足のような下半身の上に、鎧武者のごとき上半身が生えたその姿は、あの日横須賀を襲った強敵・厨子王型の餓霊である。
刀のような腕で何度も切り付ける厨子王だったが、その攻撃も意味を為さない。
震天は片手で厨子王の頭を掴んで持ち上げると、いとも容易く握り潰した。そのまま大きく振り回すと、遥か虚空に投げ上げる。
誠が空中の相手に標的マークを合わせると、すかさず兵装の準備が整った。
『収束爆砕砲、用意出来!』
ターゲットマークが強く輝き、誠はトリガーを引いた。
直後、震天の眼前に強力な収束力場が発生した。
幾重にも、まるで空間が歪んだように光の輪が輝くと、力場は高速で発射され、落下する厨子王を粒子に変えて四散させたのだ。
誠が戦うその間にも、負傷兵達の避難は着々と進んでいく。
『退避進行、足元クリア。近接戦闘が可能となります』
「了解、格闘戦に移行します」
誠は答えると、機体を操作し、腰の太刀に手をかけた。巨大な太刀が閃いた瞬間、迫る餓霊が数体まとめて上半身を無くした。
『多重電磁式・超硬大太刀、抜刀!』
『電磁コネクター接続、右腕属性添加機01から06番まで並列励起。超多重斬撃属性、発動!』
刀身が青い光を帯びると、何重にも重ねられた強力な斬撃属性が、神話の武器のように眩しく太刀を輝かせる。
誠は機体を踏み込ませ、身を屈めて横一文字に薙ぎ払った。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!
凄まじい衝撃波が走り、広範囲の餓霊がまとめて肉片と化したのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる