91 / 110
第四章その9 ~攻撃用意!~ 山上からの砲撃編
ヒカリの野暮用
しおりを挟む
救護班は救出活動を続けていた。まごまごしている時間はない。時がかかれば、魔王が再び攻撃するだろうし、そうなれば万事休すだ。
慌しく指示を出す雪菜も、気ばかり焦った。1分経ったのか、何十秒経ったのかも分からない。魔王はもう動き出すのか。それともまだ大丈夫なのか。
(早く……早く助けないと……!)
だがそんな雪菜の焦りは、唐突に終わりを告げる。魔王の威容が、再び足を踏み出したのだ。
射撃を続ける味方部隊だったが、魔王が一睨みすると、大地が瞬時に爆散した。あの航空戦艦を大破させた眼力を、地上に向けて放ったのだろう。
舞い上がるアスファルト、そしてコンクリートの破片。
奮戦していた人型重機部隊も吹っ飛ばされ、行動不能に陥った。
戦場の空気は一変し、救護の班も、それを守ろうとしていた部隊も、身がすくんだように動けなくなってしまった。
あの魔王の眼力には、相手を委縮させる効果もあるのだろうか?
だが雪菜がそう推測した時、事態は予想外の動きを見せた。
「嘘……でしょ……!?」
モニターに映る機影を目にし、雪菜は言葉を失った。
暗雲渦巻く空を飛行するのは、航空機ではない、人型重機である。
第3船団で実用化され始めた、対空呪詛をある程度緩和する技術のおかげか、ふらつきながらも空を舞うそれは、パンパンと派手に信号弾を発射している。
そのまま慣性力場で減速しつつ乱暴に着地、勢い余って転がった。
「『登龍改』……まさか、ヒカリなの……!?」
忘れもしない、忘れるわけがない。
かつて背中を預け合い、共に死線を潜り抜けてきた仲間の……あの越中ヒカリの愛機だったからだ。
小柄で速度重視の機体であり、格闘特化型人型重機の先駆けとも言える存在だったが、それにしても到着が早過ぎる。
「さっき出たばかりなのに……40キロ以上離れてるのよ……?」
「……新型の高機動ブースターだな」
驚く雪菜に、船団長の伊能が言った。
「筑波が作った試作品でな。ごく短時間だが、機体の空気抵抗軽減式と併用すれば、音速の4倍近く出る。あれならあっという間だろ」
伊能はそこで悔しそうに歯をかみ締めた。
「バカ野郎が、死ぬのは俺らの順番だろがよ……!」
慌しく指示を出す雪菜も、気ばかり焦った。1分経ったのか、何十秒経ったのかも分からない。魔王はもう動き出すのか。それともまだ大丈夫なのか。
(早く……早く助けないと……!)
だがそんな雪菜の焦りは、唐突に終わりを告げる。魔王の威容が、再び足を踏み出したのだ。
射撃を続ける味方部隊だったが、魔王が一睨みすると、大地が瞬時に爆散した。あの航空戦艦を大破させた眼力を、地上に向けて放ったのだろう。
舞い上がるアスファルト、そしてコンクリートの破片。
奮戦していた人型重機部隊も吹っ飛ばされ、行動不能に陥った。
戦場の空気は一変し、救護の班も、それを守ろうとしていた部隊も、身がすくんだように動けなくなってしまった。
あの魔王の眼力には、相手を委縮させる効果もあるのだろうか?
だが雪菜がそう推測した時、事態は予想外の動きを見せた。
「嘘……でしょ……!?」
モニターに映る機影を目にし、雪菜は言葉を失った。
暗雲渦巻く空を飛行するのは、航空機ではない、人型重機である。
第3船団で実用化され始めた、対空呪詛をある程度緩和する技術のおかげか、ふらつきながらも空を舞うそれは、パンパンと派手に信号弾を発射している。
そのまま慣性力場で減速しつつ乱暴に着地、勢い余って転がった。
「『登龍改』……まさか、ヒカリなの……!?」
忘れもしない、忘れるわけがない。
かつて背中を預け合い、共に死線を潜り抜けてきた仲間の……あの越中ヒカリの愛機だったからだ。
小柄で速度重視の機体であり、格闘特化型人型重機の先駆けとも言える存在だったが、それにしても到着が早過ぎる。
「さっき出たばかりなのに……40キロ以上離れてるのよ……?」
「……新型の高機動ブースターだな」
驚く雪菜に、船団長の伊能が言った。
「筑波が作った試作品でな。ごく短時間だが、機体の空気抵抗軽減式と併用すれば、音速の4倍近く出る。あれならあっという間だろ」
伊能はそこで悔しそうに歯をかみ締めた。
「バカ野郎が、死ぬのは俺らの順番だろがよ……!」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
配達人~奇跡を届ける少年~
禎祥
キャラ文芸
伝えたい想いはありませんか――?
その廃墟のポストに手紙を入れると、どこにでも届けてくれるという。住所のないホームレス、名前も知らない相手、ダムに沈んだ町、天国にすら…。
そんな怪しい噂を聞いた夏樹は、ある人物へと手紙を書いてそのポストへ投函する。そこに込めたのは、ただ純粋な「助けて」という願い。
これは、配達人と呼ばれる少年が巻き起こす奇跡の物語。
表紙画像は毒みるくさん(@poistmil)よりいただきましたFAの香月を使わせていただきました(*´∇`*)
ありがとうございます!
※ツギクルさんにも投稿してます。
第三回ツギクル小説大賞にて優秀賞をいただきました!応援ありがとうございます(=゚ω゚=)ノシ
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
ちょいダン? ~仕事帰り、ちょいとダンジョンに寄っていかない?~
テツみン
SF
東京、大手町の地下に突如現れたダンジョン。通称、『ちょいダン』。そこは、仕事帰りに『ちょい』と冒険を楽しむ場所。
大手町周辺の企業で働く若手サラリーマンたちが『ダンジョン』という娯楽を手に入れ、新たなライフスタイルを生み出していく――
これは、そんな日々を綴った物語。
〈銀龍の愛し子〉は盲目王子を王座へ導く
山河 枝
キャラ文芸
【簡単あらすじ】周りから忌み嫌われる下女が、不遇な王子に力を与え、彼を王にする。
★シリアス8:コミカル2
【詳細あらすじ】
50人もの侍女をクビにしてきた第三王子、雪晴。
次の侍女に任じられたのは、異能を隠して王城で働く洗濯女、水奈だった。
鱗があるために疎まれている水奈だが、盲目の雪晴のそばでは安心して過ごせるように。
みじめな生活を送る雪晴も、献身的な水奈に好意を抱く。
惹かれ合う日々の中、実は〈銀龍の愛し子〉である水奈が、雪晴の力を覚醒させていく。「王家の恥」と見下される雪晴を、王座へと導いていく。
【更新停止中】おキツネさまのしっぽ【冬再開予定】
リコピン
キャラ文芸
※更新停止中
高校三年の冬の夜。一花(いちか)が家への帰り道で目撃してしまったのは、刀を手にした男の姿。
男から助け出した女の子『シロ』との生活を、戸惑いながらも楽しんでいた一花の前に、シロを襲った男『桐生(きりゅう)』が再び姿を現す。
シロに貰った『オクリモノ』が、一花に新たな出会いをもたらす、ひと冬の物語。
※全三章予定です
限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです 第一部 中学一年生編
釈 余白(しやく)
キャラ文芸
現代日本と不釣り合いなとある山奥には、神社を中心とする妖討伐の一族が暮らす村があった。その一族を率いる櫛田八早月(くしだ やよい)は、わずか八歳で跡目を継いだ神職の巫(かんなぎ)である。その八早月はこの春いよいよ中学生となり少し離れた町の中学校へ通うことになった。
妖退治と変わった風習に囲まれ育った八早月は、初めて体験する普通の生活を想像し胸を高鳴らせていた。きっと今まで見たこともないものや未体験なこと、知らないことにも沢山触れるに違いないと。
この物語は、ちょっと変わった幼少期を経て中学生になった少女の、非日常的な日常を中心とした体験を綴ったものです。一体どんな日々が待ち受けているのでしょう。
※外伝
・限界集落で暮らす専業主婦のお仕事は『今も』あやかし退治なのです
https://www.alphapolis.co.jp/novel/398438394/874873298
※当作品は完全なフィクションです。
登場する人物、地名、、法人名、行事名、その他すべての固有名詞は創作物ですので、もし同名な人や物が有り迷惑である場合はご連絡ください。
事前に実在のものと被らないか調べてはおりますが完全とは言い切れません。
当然各地の伝統文化や催事などを貶める意図もございませんが、万一似通ったものがあり問題だとお感じになられた場合はご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる