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第四章その9 ~攻撃用意!~ 山上からの砲撃編

ヒカリの野暮用

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 救護班は救出活動を続けていた。まごまごしている時間はない。時がかかれば、魔王が再び攻撃するだろうし、そうなれば万事休すだ。

 あわただしく指示を出す雪菜も、気ばかり焦った。1分経ったのか、何十秒経ったのかも分からない。魔王はもう動き出すのか。それともまだ大丈夫なのか。

(早く……早く助けないと……!)

 だがそんな雪菜の焦りは、唐突に終わりを告げる。魔王の威容が、再び足を踏み出したのだ。

 射撃を続ける味方部隊だったが、魔王が一睨みすると、大地が瞬時に爆散した。あの航空戦艦を大破させた眼力を、地上に向けて放ったのだろう。

 舞い上がるアスファルト、そしてコンクリートの破片。

 奮戦していた人型重機部隊も吹っ飛ばされ、行動不能に陥った。

 戦場の空気は一変し、救護の班も、それを守ろうとしていた部隊も、身がすくんだように動けなくなってしまった。

 あの魔王の眼力には、相手を委縮いしゅくさせる効果もあるのだろうか?

 だが雪菜がそう推測した時、事態は予想外の動きを見せた。



「嘘……でしょ……!?」

 モニターに映る機影を目にし、雪菜は言葉を失った。

 暗雲渦巻く空を飛行するのは、航空機ではない、人型重機である。

 第3船団で実用化され始めた、対空呪詛をある程度緩和する技術のおかげか、ふらつきながらも空を舞うそれは、パンパンと派手に信号弾を発射している。

 そのまま慣性力場で減速しつつ乱暴に着地、勢い余って転がった。

「『登龍とうりゅう改』……まさか、ヒカリなの……!?」

 忘れもしない、忘れるわけがない。

 かつて背中を預け合い、共に死線を潜り抜けてきた仲間の……あの越中ヒカリの愛機だったからだ。

 小柄で速度重視の機体であり、格闘特化型人型重機の先駆けとも言える存在だったが、それにしても到着が早過ぎる。

「さっき出たばかりなのに……40キロ以上離れてるのよ……?」

「……新型の高機動ブースターだな」

 驚く雪菜に、船団長の伊能が言った。

「筑波が作った試作品でな。ごく短時間だが、機体の空気抵抗軽減式エアストラーダと併用すれば、音速の4倍近く出る。あれならあっという間だろ」

 伊能はそこで悔しそうに歯をかみ締めた。

「バカ野郎が、死ぬのは俺らの順番だろがよ……!」
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