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第四章その7 ~急転直下!~ 始まりの高千穂研究所編

その目を見れない…!

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 上空を飛行しながら、誠は独りでに声が漏れていた。

「凄いな……日本じゃないみたいだ……!」

 それは何という光景だっただろう。関が原から東海にかけ、本州はあちこち地割れのように赤い炎が覗いていた。そしてそこから青い気が噴き出し、あふれ、列島各地をうるおしているのだ。

 それは創世の時を迎えた列島が、激しいエネルギーを発して産声うぶごえを上げているようにも思えた。

 スケールはさすがに違うが、かつて九州で地獄巡りをした時のような、荒々しい惑星ほし息吹いぶきを感じさせる。

「…………!」

 誠が目線を動かすと、彼方には黒く凝り固まった暗雲も見えた。時折強く稲妻が輝き、その下の強力無比な存在を匂わせていた。

(あの下に魔王がいる……!)

 あれが来た時が決着の時だし、泣いても笑っても、これが最後の戦いだ。だから時間の許す限り、出来る足掻あがきをしておきたい……!

 誠は機体を更に加速させる。筑波が付けた高速ブースターのおかげで、休まず飛び続ける事が出来るのだ。



 機体は瞬く間に瀬戸内海上空を抜け、九州まであと少しと迫った。

 つい先日、餓霊どもから奪還した九州……その山間部には、列島から噴き出した青い気が、渦のように吹き込んでいる。まるでそこだけ巨大な台風が居座っているかのようだ。

「……あそこか。聞いてた通り、凄い気が集まってるな」

 誠はモニターで確認し、後部座席のカノンに呼びかけた。

「カノン…………あれ、カノン?」

 振り返ると、カノンは再びじっとこちらを見ていた。それから我に返ったのか、慌てて目を伏せて謝る。

「ご、ごめんなさい………ちゃんと聞いてるから……!」

 また頬が赤かった。本当にどうしたんだろう。

 誠は内心穏やかでない物を感じながら、取りつくろうように言った。

「……そ、それじゃ降下するぞ。餓霊の対空呪詛とは違うけど、揺れるかもしれないから……掴まっててくれ」

 カノンはそっと誠の肩に手を置いた。前回戦いの邪魔になった事を気にしているのだろうか?

 遠慮がちに、けれどきゅっと指先に力を込めて。誠には、それがなぜか助けを求めているように思えた。

 それでも後ろを振り向けない。今あの目を見たら、もう戻れなくなる気がしたからだ。

「……………………」

 誠は黙って機体を降下させる。

 青く渦巻くその気に触れると、機体が激しく振動した。

 空の上のはずなのに、青い海に潜っているかのような不思議な光景だった。白く細かい泡のようなものが周囲に流れ、時折何かが目の前で光った。

 やがて空の海原を突き抜けた時、誠は再び声を発した。

「何だよ、これ……!?」
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