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第四章その5 ~さあ反撃だ!~ やる気満々、決戦準備編

神の冗談。ツッコミは入れづらい

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 一方その頃。

 人間達の動きに気付いた土蜘蛛も、夜祖大神やそのおおかみへの報告を行っていた。

「人間どもは、大胆にも自ら地脈を開放し、その気にまぎれて待ち伏せするようです。闇の神人の感知を効かなくするためでしょう」

 髪を肩ほどに伸ばした土蜘蛛の青年・笹鐘ささがねは、簡潔に状況を説明した。

「しかも新型の航空戦艦を、その霧に隠すようです。今回稼動するのは2隻ですが、巨大な属性添加機を持つ船の攻撃。これを至近距離で食らえば、さすがの神人も手傷を負うでしょう」

 笹鐘の報告に、夜祖は頬杖をついたままに答えた。

「……なるほどな。遠間の砲撃なら簡単に防げるし、そもそも先に沈められるだろうが……そのために大地の気に隠れての接近か……」

 夜祖はいつもより大きく口元を歪め、明確に笑みを浮かべた。

「本当に面白い手を打つ。敵ながら興味深いな」

 夜祖が明らかに人間に興味を持ったのがショックだったのか、笹鐘は戸惑いながらも言葉を続ける。

「お、恐らくは……鎮西ちんぜいや能登で、奇策を巡らせたのと同じ軍師かと……」

 笹鐘の内心を見抜いたのか、夜祖は少し冗談のように言った。

「面白い。お前の右腕に欲しいところだ」

「わ、わわ私にっ……人の配下をでございますかっ……!?」

 冷静な笹鐘と言えど、流石に動揺を隠し切れなくなったようだ。

 戸惑う彼を眺め、夜祖は目を細めて言った。

戯言ざれごとだ、気にするな。それより今は、この布陣をいかに攻めるかだ」

 夜祖は頬杖をやめ、かたわらの扇子を取った。

 少しだけ扇子を開き、また閉じる事を繰り返しながら夜祖は呟く。

「探りを入れたいところだが……地下の連中はうるさいであろうな?」

「はい、どうやら火の催促のようで。早く外に出たいのでありましょう」

 笹鐘はもう冷静さを取り戻し、深々と頭を下げた。

「このような言い方は不敬とは存じておりますが……無能な味方は敵よりも手強いもので」
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