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第四章その5 ~さあ反撃だ!~ やる気満々、決戦準備編
腕輪は誰かに触られたか?
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再び、鬼達の集う本堂である。
三浦半島の襲撃に失敗し、逃げおおせた刹鬼姫達は、額を床にこすりつけて申し開きをしていた。
一族の浮沈がかかった任務だったため、当然ながら五老鬼の怒りは激しい。
「いい加減にせよ! 何度しくじれば気が済むのだ!」
「お前達を魔族の連合軍に派遣したのは遊びではないのだぞ!」
若い鬼達は身を震わせながら、ただ縮こまって叱責に耐えていたが、そこで五老鬼の1人が止めに入った。
「……まあそのへんでいいではないか。反省しているようだし、しくじったものは仕方がない」
彼は五老鬼の中でも、最も小柄な鬼である。
「こやつらも悪気があっての事ではないし、落ち度と言うより、あの神人が手強過ぎた。そうだな刹鬼姫よ」
「はっ、はい、金羅様! 有難きお言葉で……!」
刹鬼姫は渡りに船とばかりに目を輝かせた。
金羅と呼ばれた老鬼は、そこで片手を差し出した。手からわずかに離れて浮かぶ腕輪は、今はひび割れてボロボロになっている。
「……のう刹鬼姫よ。わしが作ったこの腕輪、役に立ったか」
「はいっ、おかげさまで、部下達も1人残らず戻る事が出来ました。あの神人の姫に加え、敵の猛者に囲まれて絶体絶命でしたが……本当に感謝の言葉もございません!」
「そうかそうか……」
小柄な老鬼は満足そうに頷いたが、そこで少し身を乗り出す。
「……それで刹鬼よ、腕輪は誰かに触られたか?」
「い、いえ、そのような事は……」
刹鬼姫は目を泳がせて考えていたが、やがて思い当たったようだ。
「そう言えばあの神人……鶴姫とやらが言っておりました。霊力で危ない術は禁じたと。私が殲滅呪詛を使おうとした時の事です」
「なるほどな、そうだったか……」
小柄な老鬼は、一見優しげな笑みを浮かべて何度も頷いた。それから5人の中央に座る、最も巨体の老鬼に言う。
「伽藍よ、責めはこの辺りにして、本題に移ろう」
「…………お前がそう言うならいいだろう」
巨体の老鬼は金羅を見て頷くと、配下達に目線を戻しながら言った。
「確かにお前達の失態は痛い……が、人の軍勢にあれがいると分かったのは収穫だ。まさか500年前に里抜けしたあやつが、こんな所で見つかるとはな」
伽藍はそこで刹鬼姫に目を止める。
「人にもなれず鬼にも成り切れぬ半端者だが、お前の血を分けた姉だ。一族の再興のため、姉殺しの覚悟はあるか?」
「……無論でございます……!」
刹鬼姫は強く拳を握り締めて答えた。
伽藍と呼ばれた巨体の老鬼は、そこで片手を前に差し出す。手には赤い珠が輝いていた。大きさは小ぶりの林檎程であろうか。
珠は少しずつ宙を移動し、刹鬼姫の眼前に浮かんだ。
「ならばそれを授ける。あれは少々強過ぎたのでな。華南王の名を与えた時、念のために作らせたのだ。それを使えば奴を倒せる」
伽藍は最後に力を込めて言った。
「声の届く距離でそれを使え。彼奴を通じ、黒鷹とかいうあの白き鎧の使い手を殺すのだ……!!」
刹鬼姫達の退出後、五老鬼はしばし無言だった。
伽藍と呼ばれた巨体の老鬼は、横目で小柄な老鬼を睨む。
「……金羅よ。貴様の呪具もあてにならんな。使えば敵もろとも屠れるのでは無かったか」
「またそんな嫌味を。聞いておっただろう、神人の娘に術は防がれた。害を為す術は防がれ、転移だけを発動させたのだ」
小柄な老鬼はそう言って手の上の腕輪を握り潰した。
「……だがその神人も人の心を持つ。あの娘の思い人……黒鷹とかいう男を殺せば、心乱れて術も荒れよう。さすれば討ち取る手はいくらでもある……!」
三浦半島の襲撃に失敗し、逃げおおせた刹鬼姫達は、額を床にこすりつけて申し開きをしていた。
一族の浮沈がかかった任務だったため、当然ながら五老鬼の怒りは激しい。
「いい加減にせよ! 何度しくじれば気が済むのだ!」
「お前達を魔族の連合軍に派遣したのは遊びではないのだぞ!」
若い鬼達は身を震わせながら、ただ縮こまって叱責に耐えていたが、そこで五老鬼の1人が止めに入った。
「……まあそのへんでいいではないか。反省しているようだし、しくじったものは仕方がない」
彼は五老鬼の中でも、最も小柄な鬼である。
「こやつらも悪気があっての事ではないし、落ち度と言うより、あの神人が手強過ぎた。そうだな刹鬼姫よ」
「はっ、はい、金羅様! 有難きお言葉で……!」
刹鬼姫は渡りに船とばかりに目を輝かせた。
金羅と呼ばれた老鬼は、そこで片手を差し出した。手からわずかに離れて浮かぶ腕輪は、今はひび割れてボロボロになっている。
「……のう刹鬼姫よ。わしが作ったこの腕輪、役に立ったか」
「はいっ、おかげさまで、部下達も1人残らず戻る事が出来ました。あの神人の姫に加え、敵の猛者に囲まれて絶体絶命でしたが……本当に感謝の言葉もございません!」
「そうかそうか……」
小柄な老鬼は満足そうに頷いたが、そこで少し身を乗り出す。
「……それで刹鬼よ、腕輪は誰かに触られたか?」
「い、いえ、そのような事は……」
刹鬼姫は目を泳がせて考えていたが、やがて思い当たったようだ。
「そう言えばあの神人……鶴姫とやらが言っておりました。霊力で危ない術は禁じたと。私が殲滅呪詛を使おうとした時の事です」
「なるほどな、そうだったか……」
小柄な老鬼は、一見優しげな笑みを浮かべて何度も頷いた。それから5人の中央に座る、最も巨体の老鬼に言う。
「伽藍よ、責めはこの辺りにして、本題に移ろう」
「…………お前がそう言うならいいだろう」
巨体の老鬼は金羅を見て頷くと、配下達に目線を戻しながら言った。
「確かにお前達の失態は痛い……が、人の軍勢にあれがいると分かったのは収穫だ。まさか500年前に里抜けしたあやつが、こんな所で見つかるとはな」
伽藍はそこで刹鬼姫に目を止める。
「人にもなれず鬼にも成り切れぬ半端者だが、お前の血を分けた姉だ。一族の再興のため、姉殺しの覚悟はあるか?」
「……無論でございます……!」
刹鬼姫は強く拳を握り締めて答えた。
伽藍と呼ばれた巨体の老鬼は、そこで片手を前に差し出す。手には赤い珠が輝いていた。大きさは小ぶりの林檎程であろうか。
珠は少しずつ宙を移動し、刹鬼姫の眼前に浮かんだ。
「ならばそれを授ける。あれは少々強過ぎたのでな。華南王の名を与えた時、念のために作らせたのだ。それを使えば奴を倒せる」
伽藍は最後に力を込めて言った。
「声の届く距離でそれを使え。彼奴を通じ、黒鷹とかいうあの白き鎧の使い手を殺すのだ……!!」
刹鬼姫達の退出後、五老鬼はしばし無言だった。
伽藍と呼ばれた巨体の老鬼は、横目で小柄な老鬼を睨む。
「……金羅よ。貴様の呪具もあてにならんな。使えば敵もろとも屠れるのでは無かったか」
「またそんな嫌味を。聞いておっただろう、神人の娘に術は防がれた。害を為す術は防がれ、転移だけを発動させたのだ」
小柄な老鬼はそう言って手の上の腕輪を握り潰した。
「……だがその神人も人の心を持つ。あの娘の思い人……黒鷹とかいう男を殺せば、心乱れて術も荒れよう。さすれば討ち取る手はいくらでもある……!」
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