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第四章その2 ~大活躍!~ 関東からの助っ人編

少年は絶望に眠る

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 いつ果てるともない悪夢の中で、誠は眠り続けていた。

 あの無敵の魔王と対峙し、破れた記憶が映し出される。そしてそこから先の未来の様子もだ。

 日本はあの破壊神に敗北し、全ての戦線は崩壊した。

 人は再び逃げ惑い、喰い殺されるだけの家畜に戻ったのだ。

 誠はいつの間にか幼い姿に戻っており、避難所の隅で震えていた。

 毎日毎日、粗暴な悪人達に殴られ蹴られ、支給された食べ物は、中身を石にすりかえられていた。

 生きる事は地獄だし、この世は闇の世界なのだ。

『……そうだ。何をやっても無駄なんだよ』

 頭の中で、自分の声が語りかけてくる

 と同時に、激しい罵倒が地鳴りのように襲ってきて、誠は思わず耳を塞いだ。

 苦しい……頭が割れそうだ。

 あんなに頑張ったのに。10年もの長い間、沢山の人が死に物狂いで積み重ねてきたのに。

 それらは全く意味を成さず、ただ苦しい日々を無意味に永らえただけだったのだ。

(もう嫌だ……もう何もかも嫌だ)

(お父さんとお母さんのところに行きたい)

(早く楽になりたいよ)

 だが誠がそんなふうに思った時、不意に元気な声が聞こえた。

『大丈夫、黒鷹ならきっと平気だわ!』

 声はやたら明るい響きで、誠は何かを思い出しそうになるのだった。
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