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第四章その2 ~大活躍!~ 関東からの助っ人編
ドクロの脅し
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(……そうだ、一度は死を覚悟したんだ……!)
震える手が、少しずつサイドポケットに伸びる。
もう一度あの呪われた身に戻るなら……あんな姿を彼に見られるぐらいなら、その前に……!
だがカノンが小刀を取り出すと、何か銀色のものがポケットから滑り落ちた。
「あっ……!」
カノンは慌ててそれを拾い上げる。
レーションやレトルト食品をパッケージしていたアルミ資材で、いざという時の食料を包んでいたのだ。
中身が無事か開いてみると、乾いた米の塊が現れた。
戦国時代の非常食である干し飯を固め、オーブンで焦げ目を付けた米のせんべいだ。
人は生米などの未加熱でんぷんを消化出来ないが、一度でも炊いた米なら、冷めても食べる事が出来る。
そうした知恵を昔の人が知っていたかどうかは定かでないものの、とにかく第5船団で米作が再開された際、こっそり作って持っていたのだ。
心の支えに……お守りにするために、そしてあの人に受けた恩を忘れないためにだ。
カノンは再びそれを包み直した。
(……まだ生きなきゃ。折角助けてもらったんだし、ぎりぎりまであの人のために……!)
命を無碍に捨て去る事は、彼の行為を踏みにじる事になるからだ。
だがカノンが自らにそう言い聞かせた時だ。
!!!!!!!!!!???????????
不意におぞましい邪気に全身を打たれたような感覚が走った。
「な、何よこれ……何が来てるの……!?」
硬い鉄の床を蹴りつけ、カノンは必死に元来た通路を走った。
カノンが駆け戻ると、一同は格納庫のモニター前に集まっていた。
皆の後ろ姿を見つめ、しばし躊躇するカノンだったが、そこで難波がこちらを見つけた。
「あ、カノっち……」
難波はそこで少しだけ間を置いたが、やがて安心したように近寄って来た。
「良かった……良かったやん? ほら、はよこっち来いや」
難波はこちらの手を握り、人々の輪に引っ張っていく。
何も聞かない。何もとがめない。いつもふざけてみせるけれど、本当に気遣いの絶えない友人だった。
(………………っ!)
抑えてきた感情が込み上げそうになるカノンだったが、なんとか我慢し、心の中で感謝した。
「そ、それでこのみ……どうしたの?」
「見ての通りや、敵からの嫌がらせやで」
カノンがモニターを見ると、そこには不気味なドクロが映っていた。
砂嵐のようなノイズを背にしたドクロは、野太い声でこちらを嘲笑っている。
「あの時のドクロと同じ……人心を揺さぶるには、かなり効果的な呪法ですね」
「!?」
カノンが振り返ると、いつの間にか合流していた鳳が、悔しげに画面を睨んでいる。
カノンは少し怖くなり、まともに鳳の顔を見れなかったが、その間にもドクロは低い声で語りかけ始めた。
『人間どもに告ぐ、ただちに降伏せよ。各地の拠点を放棄し、常夜之命様に全てを差し出せ』
ドクロはそのような意味合いを繰り返し言っている。
今まで散々人々を喰い殺しておいて、今度はいきなりの降伏勧告。普通なら信じる者はいないはずだが……
『先に服従した者から厚遇するが、半分よりも遅れた者は、この世の地獄を味わうだろう』
ドクロは最後にそう言うと、砂嵐の中にうずもれて消えた。
「アホかっ、なんやねん降伏って、嘘に決まっとるやろ! そんな情けかける奴が、あんな大勢殺すかいな!」
難波は憤慨しているが、鳳が心配そうに呟いた。
「……いえ……恐怖に駆られた場合、理性の弱い者は屈するでしょう。恐れは判断力を奪いますし……現実に魔王が近付いて来れば、錯乱する人も増えるでしょうね」
だがそこで救護班の少年が駆け寄って来た。
「……す、すみません、ちょっとよろしいですか。鳴瀬少尉が急に苦しみ始めまして」
「鳴っちが!? わ、わかった、カノっちも、鳳さんも行くで!」
3人は急ぎ救護室へと走るのだった。
震える手が、少しずつサイドポケットに伸びる。
もう一度あの呪われた身に戻るなら……あんな姿を彼に見られるぐらいなら、その前に……!
だがカノンが小刀を取り出すと、何か銀色のものがポケットから滑り落ちた。
「あっ……!」
カノンは慌ててそれを拾い上げる。
レーションやレトルト食品をパッケージしていたアルミ資材で、いざという時の食料を包んでいたのだ。
中身が無事か開いてみると、乾いた米の塊が現れた。
戦国時代の非常食である干し飯を固め、オーブンで焦げ目を付けた米のせんべいだ。
人は生米などの未加熱でんぷんを消化出来ないが、一度でも炊いた米なら、冷めても食べる事が出来る。
そうした知恵を昔の人が知っていたかどうかは定かでないものの、とにかく第5船団で米作が再開された際、こっそり作って持っていたのだ。
心の支えに……お守りにするために、そしてあの人に受けた恩を忘れないためにだ。
カノンは再びそれを包み直した。
(……まだ生きなきゃ。折角助けてもらったんだし、ぎりぎりまであの人のために……!)
命を無碍に捨て去る事は、彼の行為を踏みにじる事になるからだ。
だがカノンが自らにそう言い聞かせた時だ。
!!!!!!!!!!???????????
不意におぞましい邪気に全身を打たれたような感覚が走った。
「な、何よこれ……何が来てるの……!?」
硬い鉄の床を蹴りつけ、カノンは必死に元来た通路を走った。
カノンが駆け戻ると、一同は格納庫のモニター前に集まっていた。
皆の後ろ姿を見つめ、しばし躊躇するカノンだったが、そこで難波がこちらを見つけた。
「あ、カノっち……」
難波はそこで少しだけ間を置いたが、やがて安心したように近寄って来た。
「良かった……良かったやん? ほら、はよこっち来いや」
難波はこちらの手を握り、人々の輪に引っ張っていく。
何も聞かない。何もとがめない。いつもふざけてみせるけれど、本当に気遣いの絶えない友人だった。
(………………っ!)
抑えてきた感情が込み上げそうになるカノンだったが、なんとか我慢し、心の中で感謝した。
「そ、それでこのみ……どうしたの?」
「見ての通りや、敵からの嫌がらせやで」
カノンがモニターを見ると、そこには不気味なドクロが映っていた。
砂嵐のようなノイズを背にしたドクロは、野太い声でこちらを嘲笑っている。
「あの時のドクロと同じ……人心を揺さぶるには、かなり効果的な呪法ですね」
「!?」
カノンが振り返ると、いつの間にか合流していた鳳が、悔しげに画面を睨んでいる。
カノンは少し怖くなり、まともに鳳の顔を見れなかったが、その間にもドクロは低い声で語りかけ始めた。
『人間どもに告ぐ、ただちに降伏せよ。各地の拠点を放棄し、常夜之命様に全てを差し出せ』
ドクロはそのような意味合いを繰り返し言っている。
今まで散々人々を喰い殺しておいて、今度はいきなりの降伏勧告。普通なら信じる者はいないはずだが……
『先に服従した者から厚遇するが、半分よりも遅れた者は、この世の地獄を味わうだろう』
ドクロは最後にそう言うと、砂嵐の中にうずもれて消えた。
「アホかっ、なんやねん降伏って、嘘に決まっとるやろ! そんな情けかける奴が、あんな大勢殺すかいな!」
難波は憤慨しているが、鳳が心配そうに呟いた。
「……いえ……恐怖に駆られた場合、理性の弱い者は屈するでしょう。恐れは判断力を奪いますし……現実に魔王が近付いて来れば、錯乱する人も増えるでしょうね」
だがそこで救護班の少年が駆け寄って来た。
「……す、すみません、ちょっとよろしいですか。鳴瀬少尉が急に苦しみ始めまして」
「鳴っちが!? わ、わかった、カノっちも、鳳さんも行くで!」
3人は急ぎ救護室へと走るのだった。
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