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第四章その2 ~大活躍!~ 関東からの助っ人編

エース達は戦場に踊る

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「到着ぅ、ほいっと!」

 身軽な動作で着地した、最もカラフルで派手な人型重機が、近付く餓霊の前に立ちはだかった。

「くらえ、正義の湯葉アタック!」

 パイロットの少女の声は、戦場に不釣合いなほどに明るい。

 彼女は曲芸のように機体を半回転させると、何かを餓霊に発射した。

 複数の小さな球のようだったが、その間隔が空中で開くと、球の間に強力な電磁投網ネットが展開される。

 次の瞬間、十数体の餓霊がまとめて包み込まれたかと思うと、凄まじい火花が飛び、餓霊どもが苦悶の叫びを上げた。よく見ると機体からネットにケーブルが伸びているようだが、ネーミングの関係上、熱々の湯葉をかぶって悲鳴を上げているようにも見える。

「魔王の近衛このえかなっ? ちょい強そうだけど、捕まえちゃえばどってことないもんね!」

 重機は肩にある極彩色ごくさいしきの大型属性添加機をビカビカ光らせ、ケーブルからエネルギーを流し込んでいるのだ。

「ほいさっ、団体様、ご案内っ♪」

 餓霊が弱ったのを見計らい、機体は手にした銃を掲げ、まとめて相手を打ち抜いていく。

 見ているカノンは呆気あっけにとられてしまった。

(つ、強いけど……いったい何なのこの機体??)

 性能こそ確かだったが、とにかくド派手な色彩カラーリングの嵐。

 あたかも日光東照宮にっこうとうしょうぐう陽明門ようめいもんが、変形して助けに来てくれたような……いや、電飾満載の大型トラックが、勢い余ってロボになったような……そんな凄まじい装いである。

筑波つくばのおっちゃん製だから心配してたけど、新兵器もいい感じじゃ~ん?」

 そう話すド派手な重機のそばを、別の機体が駆け抜けていく。

「ダセぇぞひかるっ、そーいうのは悪役のやる技だろうがっ!」

 こちらも派手で……いや、さっきの機体よりは地味なのだが、全身が金一色のカラーリングである。

 装備の形も特徴的で、特に背の円環えんかんが目立つ。よく日本画の雷神が、背中に太鼓を背負っているが、あれと非常に酷似こくじしていた。

 黄金色の人型重機は、一直線に餓霊どもの眼前に飛び込む。拳を腰に構えると、円環えんかんが強い電磁式を帯びて輝いた。

「いくぜぇっ、剛雷連撃ごうらいれんげきっ!!!」

 裂帛れっぱくの気合いと共に、機体各所の人口筋肉バイオアクチュエーター、そして属性添加機が極限まで出力を上げていく。

(音声制御で……キーワードで全部の機能が連動してるの……!?)

 カノンはそこで気が付いた。

 恐らく技ごとにあらかじめ短縮プログラムを組み込み、『必殺技名キラーフレーズ』を叫ぶだけで、全ての攻撃準備が自動で整うシステムなのだろう。

 これなら操縦者が細かい調整をする必要が無いし、脳疲労・神経負担もかなり減る。

 黄金色の機体は、腕部装甲アームガード、更にそこから伸びた拳部装甲ナックルガードに電磁式をまとわせ、餓霊に拳を叩き込んでいく。

 餓霊どもは生体電流を滅茶苦茶にかき乱されて、あっけなく溶け崩れていったのだ。

「……へへっ、かっけえ……さすが俺、とてつもなくかっけえな……!」

 戦闘中にも関わらず、黄金色の機体は腕組みして気取っている。

 機体の左肩には暴れ馬のマークが描かれているが、その下の英字スペルは『RUMBLEランブル HOSEホース』……つまり水道などのホースだった。

 もしや英語が不得意で、申請した識別マークの綴りスペルが間違っていたのだろうか?

「やっぱこれだ、男の喧嘩けんかはコブシ一つの芸当だからよ」

 そこで最初のド派手な機体が、金色の機体に言い返した。

「やっかましいぞ水道ホース! 何が拳1つよ、結局両手使ってるくせにっ!」

「はっ、そうだった!?」

 頭を抱える金色の重機の横を、濃紺の機体が滑るように追い抜いた。

「戦場でボケっとしないで、2人とも!」

 外部拡声器スピーカーから響くのは、大人っぽい女性の声である。

 他の2機よりも背が高く、複雑に組み合わされた重装甲がひるがえっては、それぞれのパーツが独立して稼働している。

 あちこちにセンサーが輝き、肩や胴体各部には、無数の砲が見え隠れしていた。

 まるで動く弾薬庫であるが、左右の腰には長い太刀まで据えられている。

 ダークネイビーの塗装はいかにも渋く、ところどころの銀模様が、上品で控えめな光を放っていた。他の2機の派手がましさとは正反対である。

 餓霊どもはこの新しい人型重機に狙いを定め、四方から取り囲んだ。

 迫る敵を確認すると、紺の重機は背の装甲を稼動させた。装甲は2つに分かれて変形しながら、電磁誘導で左右の腕に下りてきている。

「さあ踊りなさい、ベイシティ……!!」

 パイロットの女性の言葉通り、機体は舞うように身をひるがえすと、左右の腕から装甲を発射する。

 装甲は滑空しながら長い電磁刃ブレードを伸ばした。恐らく遠隔攻撃のための分離装甲なのだろう。

 だが正面の敵をそれらが切り裂いている間に、機体は素早く振り返る。

 そのまま各部の砲に属性添加し、機体は青い光に包まれた。

「目標補足……スパルタンキャノン……!!」

 やはり音声入力なのだろう。瞬時に全エネルギーが火砲に割り当てられ、一瞬で大量の敵を爆散させた…………が、そこで機体は、がくんと大きくたたらを踏んだ。何かアクシデントがあったのだろうか?

 その隙を見逃さず、左右から生き残りの餓霊が迫ってくる。

 たたずむ重機は動きを止めた……ように見えたが、その手は既に腰の太刀に添えられていた。

 次の瞬間、機体は踊るように回転しながら太刀を抜き、餓霊どもはまとめて胴を両断されていたのだ。

 可動装甲アクティブアーマーがドレスのすそのようにひらめき、機体は背を真っ直ぐに伸ばして動きを止めた。まるで華麗な女騎士である。

 遠隔操作されていた装甲は、再び機体の元へと戻り、電磁誘導の光を放ちながら背中に合体した。

(すごい……これが第3船団の機体なの……!?)

 見守るカノンは驚愕した。

 重武装で射撃重視の機体なのに、格闘戦でも機敏な動きだ。

 現代兵器といにしえ剣技けんぎが見事に融合した、特殊な人型重機だった。
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