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第五章その7 ~その柱待った!~ 魔族のスパイ撃退編
最強兵器・神雷
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更に映像は、東国本部の警備体制を映し出した。
全ての建物の見取り図が表示され、人の流れを示す矢印が無数に動き回っている。
「柱の呪詛を撚り合わせる作業は、全神連でも御柱方のみが行います。世代を重ねる長い作業になりますが、外部の者が接触する事は一切出来ません。幾重にも結界で守られておりますし、常時厳重な監視をされています」
鳳の言葉通り、警備の矢印は途切れる事なく流れ続け、まるで魚の大群が回遊するかのようだ。およそどんな侵入者だろうと、見落とす事は無いように思われた。
……本音を言えば、少し違和感を感じなくもなかったのだが、誠はまだそれを言語化出来なかったのだ。
「このように、いかな魔族も中に入る事は不可能ですが……それでも万一に備え、この封印と本部を守る最強の矛があります。それが神雷。正式名・天津穂之光矢です」
映像は建物の最深部、最も地底に近い場所へと移り変わった。
明かりの乏しいすり鉢状の空間の底に、黄金色の光の玉が見て取れる。
……いや、それは固形の玉ではなかった。映像が近付くと、表面は激しく流動していたからだ。
一言で言えば、雷を宿す黄金の宝珠。その質感は、ドロドロに解けた金色のチョコレート。
その玉からは、絶え間なく龍のようなものが飛び出していく。
龍は牙を剥き出し、凶暴な目で周囲を睨みつけては、また玉の中へと戻っていくのだ。
それは太陽から噴き出た炎の筋が、再び恒星の重力に引かれて戻っていく様とよく似ていた。
「神雷とは、一言で言えば強力無比な極大呪詛、雷の人工精霊です。神代の昔から蓄積された膨大な霊気の塊であり、魔を殲滅するためだけに生み出された、群れをなす雷の龍。これを受ければ、いかな邪神や黄泉の軍勢と言えど、壊滅的な被害を受けるでしょう」
映像は神雷が起動した際のシュミレーションへと変わった。
地下から飛び出した無数の龍は、魔物の群れへと殺到する。
その力は絶大であり、どこに逃げようとも追尾し、いかな防御の術をも突き破って魔を殲滅するのである。
「こりゃえげつない威力だ……それに意思を持ってるから、自動で追尾するんですね」
「はい、神雷には感知能力が複数付与されています。邪気が溢れ、敵の気が感じにくい状況に備えて、肉や血、それこそ匂いに至るまで、ありとあらゆる方法で魔を見つけ、地の果てまでも追い詰めます。また常に敵のタイプを学習し、情報を刷新し続けていますし、感度を極限まで上げれば、悪人の邪念も追尾可能です。起動させるには、数十人の選び抜かれた術者が協力する必要がありますが……きちんと起動させなくても、魔族が神雷に近づけば、防衛本能で攻撃します」
「じ、自動で反撃するんですか」
誠は引き気味で呟いた。
こんな代物、一体どう攻略すればいいのだろうか。
全ての建物の見取り図が表示され、人の流れを示す矢印が無数に動き回っている。
「柱の呪詛を撚り合わせる作業は、全神連でも御柱方のみが行います。世代を重ねる長い作業になりますが、外部の者が接触する事は一切出来ません。幾重にも結界で守られておりますし、常時厳重な監視をされています」
鳳の言葉通り、警備の矢印は途切れる事なく流れ続け、まるで魚の大群が回遊するかのようだ。およそどんな侵入者だろうと、見落とす事は無いように思われた。
……本音を言えば、少し違和感を感じなくもなかったのだが、誠はまだそれを言語化出来なかったのだ。
「このように、いかな魔族も中に入る事は不可能ですが……それでも万一に備え、この封印と本部を守る最強の矛があります。それが神雷。正式名・天津穂之光矢です」
映像は建物の最深部、最も地底に近い場所へと移り変わった。
明かりの乏しいすり鉢状の空間の底に、黄金色の光の玉が見て取れる。
……いや、それは固形の玉ではなかった。映像が近付くと、表面は激しく流動していたからだ。
一言で言えば、雷を宿す黄金の宝珠。その質感は、ドロドロに解けた金色のチョコレート。
その玉からは、絶え間なく龍のようなものが飛び出していく。
龍は牙を剥き出し、凶暴な目で周囲を睨みつけては、また玉の中へと戻っていくのだ。
それは太陽から噴き出た炎の筋が、再び恒星の重力に引かれて戻っていく様とよく似ていた。
「神雷とは、一言で言えば強力無比な極大呪詛、雷の人工精霊です。神代の昔から蓄積された膨大な霊気の塊であり、魔を殲滅するためだけに生み出された、群れをなす雷の龍。これを受ければ、いかな邪神や黄泉の軍勢と言えど、壊滅的な被害を受けるでしょう」
映像は神雷が起動した際のシュミレーションへと変わった。
地下から飛び出した無数の龍は、魔物の群れへと殺到する。
その力は絶大であり、どこに逃げようとも追尾し、いかな防御の術をも突き破って魔を殲滅するのである。
「こりゃえげつない威力だ……それに意思を持ってるから、自動で追尾するんですね」
「はい、神雷には感知能力が複数付与されています。邪気が溢れ、敵の気が感じにくい状況に備えて、肉や血、それこそ匂いに至るまで、ありとあらゆる方法で魔を見つけ、地の果てまでも追い詰めます。また常に敵のタイプを学習し、情報を刷新し続けていますし、感度を極限まで上げれば、悪人の邪念も追尾可能です。起動させるには、数十人の選び抜かれた術者が協力する必要がありますが……きちんと起動させなくても、魔族が神雷に近づけば、防衛本能で攻撃します」
「じ、自動で反撃するんですか」
誠は引き気味で呟いた。
こんな代物、一体どう攻略すればいいのだろうか。
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