新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART5 ~傷だらけの女神~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

文字の大きさ
23 / 117
第五章その2 ~おめでとう!~ やっと勝利のお祝い編

こいつ、私が好きなのか…!?

しおりを挟む
 夏木はしばし戸惑っていたが、気を取り直して話を続けた。

「親は家を継げと言ったんですが、僕は自衛隊に入ったんです。災害が多くなってたから、人の役に立ちたくて」

「それはそれで立派な志だ。吉備津彦きびつひこ殿も喜ばれているだろう」

「吉備津彦って……桃太郎で、神社のご祭神ですよね? 顔見知りみたいな言い方じゃないですか」

 夏木は少し笑って、それから海に目線を移した。

「……僕は桃太郎にはなれませんでした。あの日助けを求める人が大勢いて、僕は何も出来なかった」

「それは私も似たようなものだ。どれだけ力があっても、出来る事には限度がある。それでもお前は立派だと思うよ」

「……そう言っていただけると嬉しいです」

 夏木はこちらに顔を向けた。

「岩凪さんは、どうして戦おうと思ったんですか?」

「どうしてかな。きっかけはととさまの指示だったが、あえて言うなら…………そうだな」

 岩凪姫は昔を懐かしみ、宙を見上げた。

「昔、結構な恥をやらかして、嫁の行き場も無かったのだ。やる事もなくて、ただこの島でぼんやりしていた。そしたらある日近所の娘が、赤子を連れて挨拶に来た」

 夏木は黙って聞いてくれている。

「小さな赤子が可愛くて、珍しくて……つい頬をつついたら、泣かせてしまってな。同じようにつつくうち、島は私が泣かせた者ばかりになってしまった」

 瞬く星を眺めながら、岩凪姫は話を続ける。

「…………どうしてだろう。私が泣かせた者達を、他の者が泣かすのは許せぬ。我儘で、道理も通らぬが……そんなところか」

「なんとなく分かりますよ」

 支離滅裂な岩凪姫の言葉だが、青年は素直に頷いてくれる。

 少し胸の内がすっきりして、岩凪姫は微笑んだ。

「……ま、私はこんな性格だし、随分な醜女しこめだから、子を持つ事も出来なかったがな」

「し、醜女……?」

 青年は不思議そうに繰り返す。

「あの、醜女って、あなたがですか?」

「そうだが?」

「い、いやいや、ぜんぜんそんな……その、めちゃくちゃ綺麗だと思いますけど……されてる事も立派だし」

「何をまた。慰めなどいらぬよ」

「う、嘘じゃなくてですね」

「こら夏木、私はこう見えてあれだぞ、嘘はまるきし通用しないのだ。正確に言えば私自身はそういうのに鈍いのだが、勾玉にお前の思念を映せば、たちどころに内心が明らかになる」

「あれ、意外と占い好きなんですね。バリバリの現実主義かと思ってました」

 夏木は楽しそうに笑顔を見せる。

(さっきから何なのだこいつは。わざわざ私の元に来て、楽しげに話をする。一体何の願い事があって来たのだ?)

 岩凪姫はさすがに不思議に思った。

(あまりじらすのも悪いし、そろそろ心を見てみようか)

 そう思って、岩凪姫は虚空から勾玉を取り出した。

 軽く握り締めると、勾玉は眩い光を放つ。

 この光は夏木には見えないので、怪しまれる事はないのだが……光は淡い桃色であり、やがてハート型に変わった。

「……………………ん?」

 一瞬その意味が理解出来ず、岩凪姫は固まった。

「う、嘘なんかじゃありません。岩凪さんは、とっても素敵だと思います」

 夏木は赤くなりながら、尚も懸命に言葉を続ける。

「す、少なくとも……僕にはそう見えますから……!」

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 その横顔を見た時、岩凪姫の中で何かが繋がった。繋がったが、全力でそれを否定する。

(……いっ、いや待てっ、落ち着け私よ! そんなわけがない、そんなわけがないのだ! そうだ、きっと自分は疲れているのだ。だから勾玉の操作を間違った。そうに決まっているのだっ……!)

 そう、もう一度落ち着いて勾玉にこの男の心を読み取らせてみよう。

 生身ではないのに、体中に汗をかくような感覚だった。

 落ち着いて、冷静に……何度か深呼吸をして、再び勾玉に力を込める。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 先ほどを上回る、もの凄くまばゆい光。

 澄み渡る魂と、痛いぐらい真っ直ぐな思い。

 光は再び大きなハート型になった。

「えええええっ!!!???」

 動揺する岩凪姫をよそに、青年は更に語りかけてくる。

「あ、あの、もし良かったら、」

「良くないのでこれで失礼しようっ、さらばっ!!!」

 岩凪姫は立ち上がると、つむじ風を起こしながら駆け去った。

 しばし駆け、カーブを曲がってから空間転移する。

 どこに行けばいいか分からず、何度か滅茶苦茶に転移し、最終的にしまなみ海道の橋脚の上に着地した。

 それからたまりかねてしゃがみ込んだ。

「なっ……何なのだ……! 一体何なのだあいつはっ……!」

 頬が熱い。生身の体ではないのに、なにやら鼓動が荒いような気がする。

 いやいやをするように頭を抱え、女神は動く事が出来なかった。

(お、落ち着け私よっ、とにかく頭を冷やすのだっ……!)

 高い橋脚の上だから、冷たい風には事欠かないはずだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...