新説・鶴姫伝！ 日いづる国の守り神 PART５ ～傷だらけの女神～

～プロローグ～ ばら撒かれる災厄の種

対ディアヌス戦・決着

　富士の裾野の決戦は、最終局面を迎えていた。

　牙を剥き出し猛るのは、神代かみよに名高い八岐大蛇やまたのおろちが人型となった戦闘形態バトルフォーム。現代の名を魔王ディアヌス。

　対するは、この国の全ての力を結集した超巨大人型重機・震天しんてん。

　両者は激しく切り結び、大地は地震のように揺れ動く。

　死力を尽くしたやり取りの末、ディアヌスが咆えた。

「もう永津彦ながつひこなど関係ない！！　貴様だけを討ち倒す！！！」

　震天を駆る操縦者パイロットの少年、誠も叫んだ。

「ふざけるな！！　こっちは最初から、お前しか見てないっ！！！」

　僅かな言葉を交わすと、両者は同時に地を蹴った。

　！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！

　互いの刃がぶつかると、凄まじい火花が立ち昇り、目も眩む光が辺りを包んだ。

　……やがてその輝きが薄れた時。

　魔王はよろめき、２歩、３歩と後ずさった。

　黒い鎧のような外皮に、無数の亀裂が走っていく。

　長きに渡り、人々を絶望の淵に叩き込んだ無敵の魔王が、滅びようとしているのである。

　ディアヌスは頭上を見上げ、天を呪うかのように咆哮を上げた。大音量の雄叫びと共に、魔王の全身は爆はぜたのだ。

　空を覆った暗雲は、みるみるうちに消え失せていき、再び青い空が戻ってきた。

　人々は歓喜した。

　あの絶望の始まりから、１０年待ち望んだ勝利である。

　全て終わった、報われた。ここから何もかも良くなっていく。

　皆でこの国を復興させ、あの懐かしい幸せな世界を取り戻すのだ。

　誰もがそんなふうに楽観していた。

　…………この大勝利の裏側で、まさかあんな事態が起きているなど、予想だにしなかったから。