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第一章その7 ~あなたに逢えて良かった!~ 鶴の恩返し編
おじさんの話術。大人の誇り
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旗艦は混乱の極みに達していた。
備えの殆どは餓霊に抗するために作られており、空を飛んで人が攻めて来る事を想定していなかったのだ。
選りすぐりのパイロットと、強化された機体を備える特務隊に攻められた旗艦は、既に陥落寸前だった。
人々が立てこもれるような空間は、最早ガレオンの鎮座地付近しかなかったから、人々は隔壁を閉じて耐えていた。
佐々木は壁にもたれながら、隣の阿波丸に語りかけた。
「狙いは当然我々でしょうな、阿波丸さん」
「恐らくは。この機に私達を葬れば、再び実権を握れると思っているのでしょ……うっ!?」
その言葉が終わらぬうちに、隔壁に大きな衝撃が走った。頑強な壁が玩具のようにぐにゃりと歪むと、青紫の人型重機の顔が見えた。
式典に参加予定だった子供達が、恐怖の悲鳴を上げる。
「見つけたぜ、死に損ないども……!」
人型重機のパイロット・不是は、外部拡声器でそう言った。
剥ぎ取った隔壁を手荒く投げ捨て、無遠慮に踏み込んでくる。
「待て、狙いは我々だろう。今そっちへ行く!」
そこで佐々木と阿波丸が進み出た。そのまま相手の機体の足元まで進むが、勿論投降したわけではない。
まだ見つかっていない歩兵が携行砲の照準を合わせ、死角から狙おうとしていたからだ。
「私達が人質になろう。他の人はどうか見逃してくれ」
「はあ? 知るかよ」
機体の拡声器で、不是が面白そうに言った。
「人質は間に合ってんだよ。今更おっさんなんざいらねえ」
「いやいや、おじさんの話術もあなどれんぞ? 退屈しないと思うがね」
佐々木が真面目な顔で言うので、不是は更に大声で笑った。
「確かに大したもんだぜ。いや見直した。どうしたんだよ、あんなしょぼくれてたのによ」
「年甲斐も無く、夢を思い出したのでね」
佐々木は尚も大真面目に言った。
「折角この苦難の時代に生まれたのだから、後世に残る大きな仕事を為したいと思ったんだ。あの子達の謳う喜びの歌を、信じてみようと思ったんだよ」
「そうとも。喜びの無い道に、人は付いて来てくれないぞ」
阿波丸も佐々木の後を続けた。
「人を巻き込み惹きつけるのは、おいしいものと希望なんだ。私こと阿波丸大吉は、それを生涯追及して……」
「代議士、話が長いです」
「いや、そんな長かったか!? 今いい事言いかけたんだぞ?」
もめる阿波丸と秘書だったが、その時巨大な剣が床を叩いた。
「ふざけるのも終わりだ! 付いてくるも来ないもねえ、細胞を植え付ければ嫌でも言う事聞くんだよ。分かったらさっさとあの世に行け!」
不是がそこまで叫んだ瞬間、歩兵が物陰から身を乗り出した。携行砲が発射され、機体の上半身が炎に包まれた。
……が、しかし、燃え上がる炎が消えると、機体は全くの無傷である。機体の全身には、赤い幾何学模様のような電磁バリアが輝いていた。
「てめえらバカの考える事なんざお見通しなんだよ」
機体の目が赤く光ると、歩兵が衝撃波に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられていた。佐々木と阿波丸も同様である。
再び子供達が悲鳴を上げ、不是は面白そうにあざ笑う。
「ガキが、弱いからこうなるんだよ。悔しかったら強くなってみせろや」
そうこうするうちに、その場には同型の人型重機が多数踏み込んできた。
「唯剋、あんた何遊んでるのよ」
女の声で語りかける機体は、手にコンテナを持っている。
「っせえよマキナ、今終わる」
不是は答えると、一同に機体の銃を向けた。
「それじゃ、ガレオンとガキは船ごと貰ってくぜ。てめえらは地獄で指をくわえて見てろや」
「…………これまでか」
佐々木も阿波丸も、そして誰もが覚悟を決めた時。
不意に船内に衝撃が走った。
「……何だ?」
パイロット達は周囲を探った。
そして再び衝撃が走る。
不是は苛立ちながら味方に怒鳴った。
「何だ、どうしたってんだ!」
「そ、それが、あの機体が、白いのが来たようです!」
「何だって?」
その瞬間、壁を突き破って白い人型重機が現れた。
巻き上がる粉塵の中、誰もが一瞬目を疑った。それはあの混乱の始まりに、日本中の人々の希望になった機体。紛れも無くあの心神だったのだ。
「嘘だろ、光翼天武……!?」
「バカか、あいつは死んだだろうが!」
青紫の機体達は、銃をもたげて一斉に射撃するが、弾丸は白い機体の眼前で、青い光にねじ伏せられたかのように消えて行った。
備えの殆どは餓霊に抗するために作られており、空を飛んで人が攻めて来る事を想定していなかったのだ。
選りすぐりのパイロットと、強化された機体を備える特務隊に攻められた旗艦は、既に陥落寸前だった。
人々が立てこもれるような空間は、最早ガレオンの鎮座地付近しかなかったから、人々は隔壁を閉じて耐えていた。
佐々木は壁にもたれながら、隣の阿波丸に語りかけた。
「狙いは当然我々でしょうな、阿波丸さん」
「恐らくは。この機に私達を葬れば、再び実権を握れると思っているのでしょ……うっ!?」
その言葉が終わらぬうちに、隔壁に大きな衝撃が走った。頑強な壁が玩具のようにぐにゃりと歪むと、青紫の人型重機の顔が見えた。
式典に参加予定だった子供達が、恐怖の悲鳴を上げる。
「見つけたぜ、死に損ないども……!」
人型重機のパイロット・不是は、外部拡声器でそう言った。
剥ぎ取った隔壁を手荒く投げ捨て、無遠慮に踏み込んでくる。
「待て、狙いは我々だろう。今そっちへ行く!」
そこで佐々木と阿波丸が進み出た。そのまま相手の機体の足元まで進むが、勿論投降したわけではない。
まだ見つかっていない歩兵が携行砲の照準を合わせ、死角から狙おうとしていたからだ。
「私達が人質になろう。他の人はどうか見逃してくれ」
「はあ? 知るかよ」
機体の拡声器で、不是が面白そうに言った。
「人質は間に合ってんだよ。今更おっさんなんざいらねえ」
「いやいや、おじさんの話術もあなどれんぞ? 退屈しないと思うがね」
佐々木が真面目な顔で言うので、不是は更に大声で笑った。
「確かに大したもんだぜ。いや見直した。どうしたんだよ、あんなしょぼくれてたのによ」
「年甲斐も無く、夢を思い出したのでね」
佐々木は尚も大真面目に言った。
「折角この苦難の時代に生まれたのだから、後世に残る大きな仕事を為したいと思ったんだ。あの子達の謳う喜びの歌を、信じてみようと思ったんだよ」
「そうとも。喜びの無い道に、人は付いて来てくれないぞ」
阿波丸も佐々木の後を続けた。
「人を巻き込み惹きつけるのは、おいしいものと希望なんだ。私こと阿波丸大吉は、それを生涯追及して……」
「代議士、話が長いです」
「いや、そんな長かったか!? 今いい事言いかけたんだぞ?」
もめる阿波丸と秘書だったが、その時巨大な剣が床を叩いた。
「ふざけるのも終わりだ! 付いてくるも来ないもねえ、細胞を植え付ければ嫌でも言う事聞くんだよ。分かったらさっさとあの世に行け!」
不是がそこまで叫んだ瞬間、歩兵が物陰から身を乗り出した。携行砲が発射され、機体の上半身が炎に包まれた。
……が、しかし、燃え上がる炎が消えると、機体は全くの無傷である。機体の全身には、赤い幾何学模様のような電磁バリアが輝いていた。
「てめえらバカの考える事なんざお見通しなんだよ」
機体の目が赤く光ると、歩兵が衝撃波に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられていた。佐々木と阿波丸も同様である。
再び子供達が悲鳴を上げ、不是は面白そうにあざ笑う。
「ガキが、弱いからこうなるんだよ。悔しかったら強くなってみせろや」
そうこうするうちに、その場には同型の人型重機が多数踏み込んできた。
「唯剋、あんた何遊んでるのよ」
女の声で語りかける機体は、手にコンテナを持っている。
「っせえよマキナ、今終わる」
不是は答えると、一同に機体の銃を向けた。
「それじゃ、ガレオンとガキは船ごと貰ってくぜ。てめえらは地獄で指をくわえて見てろや」
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佐々木も阿波丸も、そして誰もが覚悟を決めた時。
不意に船内に衝撃が走った。
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パイロット達は周囲を探った。
そして再び衝撃が走る。
不是は苛立ちながら味方に怒鳴った。
「何だ、どうしたってんだ!」
「そ、それが、あの機体が、白いのが来たようです!」
「何だって?」
その瞬間、壁を突き破って白い人型重機が現れた。
巻き上がる粉塵の中、誰もが一瞬目を疑った。それはあの混乱の始まりに、日本中の人々の希望になった機体。紛れも無くあの心神だったのだ。
「嘘だろ、光翼天武……!?」
「バカか、あいつは死んだだろうが!」
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