新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART1 ~この恋、日本を守ります!~

朝倉矢太郎(BELL☆PLANET)

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第一章その6 ~急展開!~ それぞれの恋の行方編

ディアヌスとの邂逅。あの日の過ち

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 そして元気になってくると、誠は雪菜に教えを請うた。

 航空機のフライトシュミレーターのような練習機を使って、人型重機の戦い方を教えて貰ったのだ。

「誠くん、今日は格闘戦の奥義を授けるわ」

「奥義?」

「そう。弾が切れて銃を下げると、相手は大抵突進してくるの。そしたら突進に合わせて、こっちも少し前に出るのよ。相手の前まで来たら、この部分のブレーキをかけて急制動。同時に機体の慣性力を、左斜め前方に全力で加速させて。体勢を崩すから、そこでほら、フットバーと左右の操作レバーで当て舵をしてね。相手の横を過ぎるぐらいのタイミングで、もう一度この部分にブレーキをかけたら……ほら、自然に機体が反転するでしょ?」

 雪菜はそこまで一気に喋って、満足そうに腰に手を当てた。

「突進しながら素早く後ろに回りこめるから、相手からしたら、いきなりこっちが消えたように見えるはずよ。私の得意技で、鶉谷スペシャルって呼んでるの」

「いや、だからお前のやり方は、バランス崩すし危ないだろ。もっと基本の立ち回りをだな」

 呆れる明日馬をよそに、雪菜は燃える心で誠に操作を教えていった。

 誠はシュミレーターにかじりつき、無心に毎日練習を続ける。

 電子機器は自分で交換出来るものの、物理的に操作レバーが磨り減って折れた時は、親方に酷く呆れられてしまった。

 親方が鉄くずで作ってくれた、いびつな操作レバーを握って、誠は毎日鍛錬を続けたのだ。


 やがて避難区が多数の敵に襲われた時。

 さしものレジェンド隊も手が足りず、その守りが突破され、誠は予備の機体を駆って戦いに参加した。

 親方達は止めようとしたが、どうせ死ぬのなら戦いたいと嘆願したのだ。

 やがて戻ってきた明日馬達の協力もあって、何とか避難区を守り抜いた。

 俗に言う『横須賀の奇跡』であり、餓霊の大軍から初めて避難区を守り抜いた事例として、多くの人の希望となったのである。

 次第に活躍するようになった誠は、レジェンド隊をサポートする隊で1番の腕となり、なぜか餓霊の行動を予測出来るようになった。相手の動きを先読みし、最小限の動きで敵を撃破出来たのだ。

 誠は明日馬の後継者として、誰からも頼られるようになっていた。


 ……けれどその日は唐突に訪れる。

 他の避難区に応援に行った際、あの餓霊どもの総大将・ディアヌスと対峙したのだ。

 明日馬も雪菜も撤退を指示したが、誠は迷った。

 父が関わった高千穂研から始まった危機に、自分で決着を付けたいと思ったのだ。例え魔王の攻撃でも、自分なら見切れると過信していたせいもあった。

 だがディアヌスがこちらを一瞥いちべつすると、激しい何かが打ち寄せてきて、目の前が赤い光に染まった。

 その時、雪菜は誠を庇った。その雪菜と誠を明日馬が庇った。

 命からがら退却したものの、明日馬が息を引き取ってしまったのだ。

 更に雪菜の左手の逆鱗は、ディアヌスの攻撃でその性質を変化させた。

 何度手術で切り取っても再生し、内臓にも絡みついた細胞は、少しずつ、確実に彼女の命をしゃぶり尽くしていく。

 やがて雪菜は第5船団へ転属となり、誠はそれに付いて行った。

 それからはただ毎日、明日の見えない戦いを生き抜いてきた。餓霊の動きの先読みも、あの日を境に出来なくなった。

 日いづる国の守護神だった明日馬の機体は、乗り手を失い、体育館の片隅で埃をかぶって忘れられていく。

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