88 / 117
第一章その6 ~急展開!~ それぞれの恋の行方編
ディアヌスとの邂逅。あの日の過ち
しおりを挟む
そして元気になってくると、誠は雪菜に教えを請うた。
航空機のフライトシュミレーターのような練習機を使って、人型重機の戦い方を教えて貰ったのだ。
「誠くん、今日は格闘戦の奥義を授けるわ」
「奥義?」
「そう。弾が切れて銃を下げると、相手は大抵突進してくるの。そしたら突進に合わせて、こっちも少し前に出るのよ。相手の前まで来たら、この部分のブレーキをかけて急制動。同時に機体の慣性力を、左斜め前方に全力で加速させて。体勢を崩すから、そこでほら、フットバーと左右の操作レバーで当て舵をしてね。相手の横を過ぎるぐらいのタイミングで、もう一度この部分にブレーキをかけたら……ほら、自然に機体が反転するでしょ?」
雪菜はそこまで一気に喋って、満足そうに腰に手を当てた。
「突進しながら素早く後ろに回りこめるから、相手からしたら、いきなりこっちが消えたように見えるはずよ。私の得意技で、鶉谷スペシャルって呼んでるの」
「いや、だからお前のやり方は、バランス崩すし危ないだろ。もっと基本の立ち回りをだな」
呆れる明日馬をよそに、雪菜は燃える心で誠に操作を教えていった。
誠はシュミレーターにかじりつき、無心に毎日練習を続ける。
電子機器は自分で交換出来るものの、物理的に操作レバーが磨り減って折れた時は、親方に酷く呆れられてしまった。
親方が鉄くずで作ってくれた、歪な操作レバーを握って、誠は毎日鍛錬を続けたのだ。
やがて避難区が多数の敵に襲われた時。
さしものレジェンド隊も手が足りず、その守りが突破され、誠は予備の機体を駆って戦いに参加した。
親方達は止めようとしたが、どうせ死ぬのなら戦いたいと嘆願したのだ。
やがて戻ってきた明日馬達の協力もあって、何とか避難区を守り抜いた。
俗に言う『横須賀の奇跡』であり、餓霊の大軍から初めて避難区を守り抜いた事例として、多くの人の希望となったのである。
次第に活躍するようになった誠は、レジェンド隊をサポートする隊で1番の腕となり、なぜか餓霊の行動を予測出来るようになった。相手の動きを先読みし、最小限の動きで敵を撃破出来たのだ。
誠は明日馬の後継者として、誰からも頼られるようになっていた。
……けれどその日は唐突に訪れる。
他の避難区に応援に行った際、あの餓霊どもの総大将・ディアヌスと対峙したのだ。
明日馬も雪菜も撤退を指示したが、誠は迷った。
父が関わった高千穂研から始まった危機に、自分で決着を付けたいと思ったのだ。例え魔王の攻撃でも、自分なら見切れると過信していたせいもあった。
だがディアヌスがこちらを一瞥すると、激しい何かが打ち寄せてきて、目の前が赤い光に染まった。
その時、雪菜は誠を庇った。その雪菜と誠を明日馬が庇った。
命からがら退却したものの、明日馬が息を引き取ってしまったのだ。
更に雪菜の左手の逆鱗は、ディアヌスの攻撃でその性質を変化させた。
何度手術で切り取っても再生し、内臓にも絡みついた細胞は、少しずつ、確実に彼女の命をしゃぶり尽くしていく。
やがて雪菜は第5船団へ転属となり、誠はそれに付いて行った。
それからはただ毎日、明日の見えない戦いを生き抜いてきた。餓霊の動きの先読みも、あの日を境に出来なくなった。
日いづる国の守護神だった明日馬の機体は、乗り手を失い、体育館の片隅で埃をかぶって忘れられていく。
航空機のフライトシュミレーターのような練習機を使って、人型重機の戦い方を教えて貰ったのだ。
「誠くん、今日は格闘戦の奥義を授けるわ」
「奥義?」
「そう。弾が切れて銃を下げると、相手は大抵突進してくるの。そしたら突進に合わせて、こっちも少し前に出るのよ。相手の前まで来たら、この部分のブレーキをかけて急制動。同時に機体の慣性力を、左斜め前方に全力で加速させて。体勢を崩すから、そこでほら、フットバーと左右の操作レバーで当て舵をしてね。相手の横を過ぎるぐらいのタイミングで、もう一度この部分にブレーキをかけたら……ほら、自然に機体が反転するでしょ?」
雪菜はそこまで一気に喋って、満足そうに腰に手を当てた。
「突進しながら素早く後ろに回りこめるから、相手からしたら、いきなりこっちが消えたように見えるはずよ。私の得意技で、鶉谷スペシャルって呼んでるの」
「いや、だからお前のやり方は、バランス崩すし危ないだろ。もっと基本の立ち回りをだな」
呆れる明日馬をよそに、雪菜は燃える心で誠に操作を教えていった。
誠はシュミレーターにかじりつき、無心に毎日練習を続ける。
電子機器は自分で交換出来るものの、物理的に操作レバーが磨り減って折れた時は、親方に酷く呆れられてしまった。
親方が鉄くずで作ってくれた、歪な操作レバーを握って、誠は毎日鍛錬を続けたのだ。
やがて避難区が多数の敵に襲われた時。
さしものレジェンド隊も手が足りず、その守りが突破され、誠は予備の機体を駆って戦いに参加した。
親方達は止めようとしたが、どうせ死ぬのなら戦いたいと嘆願したのだ。
やがて戻ってきた明日馬達の協力もあって、何とか避難区を守り抜いた。
俗に言う『横須賀の奇跡』であり、餓霊の大軍から初めて避難区を守り抜いた事例として、多くの人の希望となったのである。
次第に活躍するようになった誠は、レジェンド隊をサポートする隊で1番の腕となり、なぜか餓霊の行動を予測出来るようになった。相手の動きを先読みし、最小限の動きで敵を撃破出来たのだ。
誠は明日馬の後継者として、誰からも頼られるようになっていた。
……けれどその日は唐突に訪れる。
他の避難区に応援に行った際、あの餓霊どもの総大将・ディアヌスと対峙したのだ。
明日馬も雪菜も撤退を指示したが、誠は迷った。
父が関わった高千穂研から始まった危機に、自分で決着を付けたいと思ったのだ。例え魔王の攻撃でも、自分なら見切れると過信していたせいもあった。
だがディアヌスがこちらを一瞥すると、激しい何かが打ち寄せてきて、目の前が赤い光に染まった。
その時、雪菜は誠を庇った。その雪菜と誠を明日馬が庇った。
命からがら退却したものの、明日馬が息を引き取ってしまったのだ。
更に雪菜の左手の逆鱗は、ディアヌスの攻撃でその性質を変化させた。
何度手術で切り取っても再生し、内臓にも絡みついた細胞は、少しずつ、確実に彼女の命をしゃぶり尽くしていく。
やがて雪菜は第5船団へ転属となり、誠はそれに付いて行った。
それからはただ毎日、明日の見えない戦いを生き抜いてきた。餓霊の動きの先読みも、あの日を境に出来なくなった。
日いづる国の守護神だった明日馬の機体は、乗り手を失い、体育館の片隅で埃をかぶって忘れられていく。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる