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第一章その5 ~負けないわ!~ 蠢き出す悪の陰謀編

鳴門地区防衛戦9

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 自陣に戻ると、現地は大きな喜びに包まれていた。

 敵軍は跡形も無く消え去って、晴天が徳島平野を包んでいる。

 誠達は機体を降り、小牧班のパイロット達と握手していく。

「色々あったけど、全員助かってよかったよ。時々助っ人してくれれば百人力なんだけどさ」

 誠の言葉に、小牧は苦笑しながら頷いた。

「機会があればね」

 握手は次々に進み、鶴が小牧の手に触れた時、バチンと何かが音を立てた。冬の日にドアノブに触れ、静電気が走った時の音を、数段大きくしたような感じである。

 誠が目をやると、小牧の逆鱗は青く輝き、表面から何かが剥がれ落ちていく。

「あなたにそれはいらないわ。いずれあだとなると思うから、取っておくわね」

 鶴はそう言うと、残る2人にも握手した。2人の逆鱗も、同様に不審な何かが剥がれ落ちていく。

 2人とも鶴をすっかり信頼したのか、何も言わずに頷いてくれた。

 鶴は再び小牧に向き直る。

「楽しかったわね、マッキー」

「ま、マッキー? 別にいいけど……あれを楽しいって言うのかな?」

 小牧はかなり照れくさそうだ。

「またいつか一緒に戦いたいわ。その時は、きっと日本を取り戻す大勝負だから」

「そうね、絶対敵にはしたくないかな。味方にしても、恐ろしいけど」

 鶴も小牧も、そして皆も、声を上げて笑った。

 小牧達が移動するのを見送ると、鶴は元気良く誠に告げた。

「さあ黒鷹、このまま一気にいきましょう!」

「いきましょうって、どこに?」

「決まってるわ、同盟交渉よ!」
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