8 / 117
第一章その1 ~始めよう日本奪還~ 少年たちの苦難編
姫様は成敗がお好き
しおりを挟む
コマは全速力で駆け寄ると、鶴の肩に飛び乗った。
「ええい、こうなったら予定変更だ! 難しい話は後にして、君が興味を持ちそうな物から説明するよ!」
「私の興味?」
「まずビラ配りをやめろっ、どこで印刷してきたんだ。いいかい、君の魂には色んな神器が組み込まれてるから、念じれば出てくるんだ。やってみて、そしてビラ配りをやめろ!」
鶴は渋々言う通りにするのだったが、その瞬間、手の中に四角いタブレット画面が現れた。縦は20センチ、横は30センチぐらいで、厚さは5ミリ程度である。
「まあ!」
鶴は気に入ったのか、手品師のようなポーズをとっては、何度も消したり出したりしている。
「しめしめ、これはいいものだわ。隠し芸に使えるわよ」
「隠さなくていいから、画面に触ってみな。それが今生の君が使う神器の1つさ。ちゃんと現代風のタブレットになってるから、持ってても怪しまれないだろ」
画面には色々なアイコンが表示されていた。天罰メニュー、地図機能、探し物モード、悪人成敗モードなどなど。
「じゃあこれね、悪人成敗モード、と。決めゼリフの一覧とか、悪人の罪状一覧とか……あっ、分かりやすい霊界予備校の映像授業があるわ」
鶴がそれを選択すると、ジャジャーンと大げさな効果音が響いて、画面には見目麗しい女性が現れた。
彼女は黒板の前で指示棒を握っている。長い黒髪、着物に良く似た和の装い。思わずため息が出るような美しい人物で、髪には桜花を挿していた。
この女性こそ、かの霊峰富士は浅間神社のご祭神・木花佐久夜姫である。
「うわっ、佐久夜姫様じゃないか、おそれ多い!」
「なるほど、ナギっぺの妹さんが教えてくれるのね」
佐久夜姫が楽しげに指示棒を振ると、桜の花びらが魔法のように周囲に舞った。どうやら女神様はノリノリらしい。
『それではオッホン、始めます。鶴ちゃんは久しぶりの現世だけれど、この時代の言葉や知識はある程度魂に入れておいたから……』
「ここは長そうだから飛ばしましょう」
「ひどい!」
鶴はビデオを大幅に進めるが、女神の説明はまだ続いている。
『……このように、悪党を懲らしめるのは胸がときめく瞬間です。しかし、現世の人の目を忘れてはならないわ。多くの人の印象に残り、より多くの人に伝えてもらえるよう、カッコいい決め台詞を考えるといいわよ?』
「なるほど、これは楽しみね。早く悪党を懲らしめて、怒涛の決め台詞をお見舞いしてやるわ」
鶴は上機嫌で頷くが、その時、神器から警告音が鳴り響いた。コマが覗き込むと、画面に黄色い三角が現れ、その中に描かれた黒い!マークが跳ねている。
「ねえ鶴、神器に警告が出てるよ。きっと重要人物が近付いてるんだ」
「黄色の三角を触ればいいのね。あっ、画面が変わった! この目盛りは……善悪メーターらしいわ。目盛りがすごく偏ってる! コマ、さっそく悪党よ!」
鶴は気合を入れて拳を握る。
「流石は私、ついてるわ。考えてみれば、黒鷹も現世で頑張ってるんだもの。私が手柄を立てれば、きっと褒めてくれるはずよ!」
「認められるってことか、それは願ってもない事だよ。さっき言いかけたんだけど、君はまだ完全に復活してないから…………そうさ、どうせ話を聞かないんだろうけど、今度は肩に乗ってるからね!」
猛スピードで駆け出す鶴にしがみつき、コマは必死でくっついていく。
倉庫区画の端まで来ると、広い通路を移動中の一団が目に入った。
前後を護衛に囲まれているのは、身分が高い証拠だろうか。
鶴はさっそく手近の作業員に声をかけた。
「こんにちは、私よ! あの人達は誰?」
作業員のおじさんは振り返り、コマ達の姿に面食らった。
「えっ? うわっ、鎧っ!? そしてライオン……みたいな子犬?」
「いいから早く教えて頂戴! この日の本の一大事なんだから!」
「す、すごい気迫だな。とにかくその、あれはお偉いさんだよ。この第5船団の代議士で、平たく言えば政治家さ」
おじさんは面食らいながらも、親切に教えてくれた。鶴が漢字を要求すると、神器の画面にタッチペンで『政治家』と書いてくれる。
「なるほど、政のお家柄ってことね。あいつらが悪事をするから、みんなが苦しんでるんだわ。ありがとう、さっそく成敗しなきゃ」
「えっ、成敗って君、ちょっと!」
慌てる作業員をよそに、鶴は駆け出して通路の奥へと先回りしていく。走りながら、腰に佩く太刀を抜き放つので、コマは主の考えに気付いた。
「ちょっと待って、成敗って、直接ひっぱたくつもりかい!? それじゃだめだよ、逮捕されちゃう!」
神器からはビデオ音声が流れ続けている。
『ちなみに成敗と言っても、いきなり暴れると逮捕されるから、そこは気をつけてね。ちゃんと証拠を掴んで、然るべき手続きをふんでから……』
「音が鳴ると気付かれるから切りましょう」
鶴は忠告を気にも留めず、ビデオ音声を切ってしまう。
「コマ、先回りして待ち伏せよ!」
「だめだってば!」
コマの必死の説得も聞かず、鶴は更にスピードを上げたのだ。
「ええい、こうなったら予定変更だ! 難しい話は後にして、君が興味を持ちそうな物から説明するよ!」
「私の興味?」
「まずビラ配りをやめろっ、どこで印刷してきたんだ。いいかい、君の魂には色んな神器が組み込まれてるから、念じれば出てくるんだ。やってみて、そしてビラ配りをやめろ!」
鶴は渋々言う通りにするのだったが、その瞬間、手の中に四角いタブレット画面が現れた。縦は20センチ、横は30センチぐらいで、厚さは5ミリ程度である。
「まあ!」
鶴は気に入ったのか、手品師のようなポーズをとっては、何度も消したり出したりしている。
「しめしめ、これはいいものだわ。隠し芸に使えるわよ」
「隠さなくていいから、画面に触ってみな。それが今生の君が使う神器の1つさ。ちゃんと現代風のタブレットになってるから、持ってても怪しまれないだろ」
画面には色々なアイコンが表示されていた。天罰メニュー、地図機能、探し物モード、悪人成敗モードなどなど。
「じゃあこれね、悪人成敗モード、と。決めゼリフの一覧とか、悪人の罪状一覧とか……あっ、分かりやすい霊界予備校の映像授業があるわ」
鶴がそれを選択すると、ジャジャーンと大げさな効果音が響いて、画面には見目麗しい女性が現れた。
彼女は黒板の前で指示棒を握っている。長い黒髪、着物に良く似た和の装い。思わずため息が出るような美しい人物で、髪には桜花を挿していた。
この女性こそ、かの霊峰富士は浅間神社のご祭神・木花佐久夜姫である。
「うわっ、佐久夜姫様じゃないか、おそれ多い!」
「なるほど、ナギっぺの妹さんが教えてくれるのね」
佐久夜姫が楽しげに指示棒を振ると、桜の花びらが魔法のように周囲に舞った。どうやら女神様はノリノリらしい。
『それではオッホン、始めます。鶴ちゃんは久しぶりの現世だけれど、この時代の言葉や知識はある程度魂に入れておいたから……』
「ここは長そうだから飛ばしましょう」
「ひどい!」
鶴はビデオを大幅に進めるが、女神の説明はまだ続いている。
『……このように、悪党を懲らしめるのは胸がときめく瞬間です。しかし、現世の人の目を忘れてはならないわ。多くの人の印象に残り、より多くの人に伝えてもらえるよう、カッコいい決め台詞を考えるといいわよ?』
「なるほど、これは楽しみね。早く悪党を懲らしめて、怒涛の決め台詞をお見舞いしてやるわ」
鶴は上機嫌で頷くが、その時、神器から警告音が鳴り響いた。コマが覗き込むと、画面に黄色い三角が現れ、その中に描かれた黒い!マークが跳ねている。
「ねえ鶴、神器に警告が出てるよ。きっと重要人物が近付いてるんだ」
「黄色の三角を触ればいいのね。あっ、画面が変わった! この目盛りは……善悪メーターらしいわ。目盛りがすごく偏ってる! コマ、さっそく悪党よ!」
鶴は気合を入れて拳を握る。
「流石は私、ついてるわ。考えてみれば、黒鷹も現世で頑張ってるんだもの。私が手柄を立てれば、きっと褒めてくれるはずよ!」
「認められるってことか、それは願ってもない事だよ。さっき言いかけたんだけど、君はまだ完全に復活してないから…………そうさ、どうせ話を聞かないんだろうけど、今度は肩に乗ってるからね!」
猛スピードで駆け出す鶴にしがみつき、コマは必死でくっついていく。
倉庫区画の端まで来ると、広い通路を移動中の一団が目に入った。
前後を護衛に囲まれているのは、身分が高い証拠だろうか。
鶴はさっそく手近の作業員に声をかけた。
「こんにちは、私よ! あの人達は誰?」
作業員のおじさんは振り返り、コマ達の姿に面食らった。
「えっ? うわっ、鎧っ!? そしてライオン……みたいな子犬?」
「いいから早く教えて頂戴! この日の本の一大事なんだから!」
「す、すごい気迫だな。とにかくその、あれはお偉いさんだよ。この第5船団の代議士で、平たく言えば政治家さ」
おじさんは面食らいながらも、親切に教えてくれた。鶴が漢字を要求すると、神器の画面にタッチペンで『政治家』と書いてくれる。
「なるほど、政のお家柄ってことね。あいつらが悪事をするから、みんなが苦しんでるんだわ。ありがとう、さっそく成敗しなきゃ」
「えっ、成敗って君、ちょっと!」
慌てる作業員をよそに、鶴は駆け出して通路の奥へと先回りしていく。走りながら、腰に佩く太刀を抜き放つので、コマは主の考えに気付いた。
「ちょっと待って、成敗って、直接ひっぱたくつもりかい!? それじゃだめだよ、逮捕されちゃう!」
神器からはビデオ音声が流れ続けている。
『ちなみに成敗と言っても、いきなり暴れると逮捕されるから、そこは気をつけてね。ちゃんと証拠を掴んで、然るべき手続きをふんでから……』
「音が鳴ると気付かれるから切りましょう」
鶴は忠告を気にも留めず、ビデオ音声を切ってしまう。
「コマ、先回りして待ち伏せよ!」
「だめだってば!」
コマの必死の説得も聞かず、鶴は更にスピードを上げたのだ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…


元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる