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第二章その6 ~目指すは阿蘇山!~ 火の社攻略編
父が私を見捨てたんじゃない
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(そうか……やっと思い出した……!)
天草はそこで意識がはっきりしてきた。
身を起こそうと力を入れるが、磔にされたように動けない。
目を凝らすと、右足の上に、コンクリートの大きな瓦礫が乗っかっていた。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
再び激しい振動が襲ってくる。
ぱらぱらと破片が降り注ぎ、はっきりと命の危険を告げていた。
早くここから出なければ…………でもどうする?
とても一人で動かせるような物じゃないのだ。
……だが、その時だった。
カサカサと、頭上で何かが動く音がした。
天草が目を凝らすと、頭上の瓦礫の隙間を、白く四角いものが行き過ぎていく。ちらりとしか姿が見えなかったが、まぎれも無く手紙用の封筒である。
「手紙……」
天草ははっとした。
あの鶴がよこした、手足の生えた手紙達。それも一通だけどんくさくて、こちらを見つけられずに走り回っていたっけ。
次の瞬間、天草は反射的に叫んでいた。
「ま、待って! お願い、助けてくれない!?」
手紙はすぐに戻ってきた。動きを止め、穴の下をのぞき込んでいる。
「ここよ、お願い、動けないの……!」
手紙は手を口?のあたりにもって行き、ピーと指笛を鳴らした。
たちまちぱたぱたと足音が響くと、沢山の小さなものが集まってくる。
モアイ、弥五郎どんの人形、ヤシの木のぬいぐるみ……それに無数の?マークだ。
あの港で、子供達の周囲で舞っていた彼らは、さらわれる子供を助けようとして巻き込まれたのだろう。
彼らはわらわらと飛び降りると、協力して瓦礫を持ち上げ始めた。
それを見ているうちに、天草は我知らず涙が溢れるのを感じた。
(バカだ、私は大バカだ……! みんなこんなに助けようとしてくれてたのに……)
瓦礫をのけてくれると、手紙は天草の顔の近くに歩み寄った。頭の部分を開けて、中身を読めと差し出してくる。
天草が手に取ると、およそ読めないような達筆だったが、思念が流れ込んでくる。
『最後にこれだけは伝えたいの。みんなで日本を復興させて、めちゃんこ幸せになりましょう。きっとこのお手紙が通じると信じています』
今なら分かる。あの鶴という子の真心が。
急ぎ起き上がろうとしたが、物凄い痛みに飛び上がりそうになった。
圧迫されていたから気付かなかったが、瓦礫で足が折れていたのだ。
だがそこで、アマビエが羽ばたいた。
天草の足のところまで飛んでいくと、彼はまばゆい光に包まれる。
一秒……二秒。
目もくらむばかりの輝きだったが、やがて光は薄れていく。
痛みはもう無い。
恐る恐る触ってみると、足は元に戻っていたのだ。
動くようになった足の横に、あのアマビエのキーホルダーが落ちていた。
霊力を使い果たして、元の姿に戻っていたのだ。
「………………っ」
天草はそっとキーホルダーを手に取った。
アマビエは何も言わなかった。
古びてうす汚れてしまった彼は、元気良く翼を広げたまま、天草の方を見つめている。
「今までありがとう……ごめんね……!!!」
天草はキーホルダーを胸に抱き、ありったけの念で感謝を告げる。
ポケットに彼をおさめ、素早く立ち上がった。
ケガは完全に治っている。
それどころか、うっすらと不思議な光が体を包んでいた。
これなら動く。走れる。
天草は周囲の皆にも感謝を告げると、一心に駆け出した。
薄闇の通路をひた走って、コントロールルームを目指す。
不意に誠少年の言葉を思い出した。
『確かめたんですか?』
『それは本当に、お父さんのした事なんですか?』
…………そうだ、ようやく気が付いた。
(父が私を見捨てたんじゃない。私が、父を見捨てたんだ……!!!)
あの日封じ込め、押し殺していた本当の気持ちが、次から次へと噴き出してくる。
(どうして信じてあげなかったの? どうして確かめなかったの?)
(……分かってる、怖かったからだ。他の人が父を憎んで、それが自分に向くのがたまらなく怖かったんだ……!)
(だから父の遺品を捨てて、率先して憎んでるふりをしたんだ……!)
怖くて怖くてたまらなくて、ただただ我が身を守るために。全てをあの人に押し付け、頑なに憎もうとしていたのだ。
あんなに可愛がってくれてたのに、一番信じていた娘に裏切られたのだ。
どんなに悲しかっただろう。どんなに悔しかっただろう。
(ごめんお父さん。ごめんね、ごめんね、ごめん、ごめん、ごめんっ……!!!)
10年前に言えなかった言葉を、心の中で数限りなく繰り返す。
『ちゃんと確かめないといけないな』
あの日父はそう言った。
そして今日、あの少年が同じ言葉を口にした。
彼はずっと戦っていたのだ。私は……逃げてしまっていたのに……!
簡素な鉄の階段をのぼると、整備用の通路は終わりを告げる。
目の前に長方形の扉が見えた。ここを抜ければ、制御室だ……!
天草はそこで意識がはっきりしてきた。
身を起こそうと力を入れるが、磔にされたように動けない。
目を凝らすと、右足の上に、コンクリートの大きな瓦礫が乗っかっていた。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
再び激しい振動が襲ってくる。
ぱらぱらと破片が降り注ぎ、はっきりと命の危険を告げていた。
早くここから出なければ…………でもどうする?
とても一人で動かせるような物じゃないのだ。
……だが、その時だった。
カサカサと、頭上で何かが動く音がした。
天草が目を凝らすと、頭上の瓦礫の隙間を、白く四角いものが行き過ぎていく。ちらりとしか姿が見えなかったが、まぎれも無く手紙用の封筒である。
「手紙……」
天草ははっとした。
あの鶴がよこした、手足の生えた手紙達。それも一通だけどんくさくて、こちらを見つけられずに走り回っていたっけ。
次の瞬間、天草は反射的に叫んでいた。
「ま、待って! お願い、助けてくれない!?」
手紙はすぐに戻ってきた。動きを止め、穴の下をのぞき込んでいる。
「ここよ、お願い、動けないの……!」
手紙は手を口?のあたりにもって行き、ピーと指笛を鳴らした。
たちまちぱたぱたと足音が響くと、沢山の小さなものが集まってくる。
モアイ、弥五郎どんの人形、ヤシの木のぬいぐるみ……それに無数の?マークだ。
あの港で、子供達の周囲で舞っていた彼らは、さらわれる子供を助けようとして巻き込まれたのだろう。
彼らはわらわらと飛び降りると、協力して瓦礫を持ち上げ始めた。
それを見ているうちに、天草は我知らず涙が溢れるのを感じた。
(バカだ、私は大バカだ……! みんなこんなに助けようとしてくれてたのに……)
瓦礫をのけてくれると、手紙は天草の顔の近くに歩み寄った。頭の部分を開けて、中身を読めと差し出してくる。
天草が手に取ると、およそ読めないような達筆だったが、思念が流れ込んでくる。
『最後にこれだけは伝えたいの。みんなで日本を復興させて、めちゃんこ幸せになりましょう。きっとこのお手紙が通じると信じています』
今なら分かる。あの鶴という子の真心が。
急ぎ起き上がろうとしたが、物凄い痛みに飛び上がりそうになった。
圧迫されていたから気付かなかったが、瓦礫で足が折れていたのだ。
だがそこで、アマビエが羽ばたいた。
天草の足のところまで飛んでいくと、彼はまばゆい光に包まれる。
一秒……二秒。
目もくらむばかりの輝きだったが、やがて光は薄れていく。
痛みはもう無い。
恐る恐る触ってみると、足は元に戻っていたのだ。
動くようになった足の横に、あのアマビエのキーホルダーが落ちていた。
霊力を使い果たして、元の姿に戻っていたのだ。
「………………っ」
天草はそっとキーホルダーを手に取った。
アマビエは何も言わなかった。
古びてうす汚れてしまった彼は、元気良く翼を広げたまま、天草の方を見つめている。
「今までありがとう……ごめんね……!!!」
天草はキーホルダーを胸に抱き、ありったけの念で感謝を告げる。
ポケットに彼をおさめ、素早く立ち上がった。
ケガは完全に治っている。
それどころか、うっすらと不思議な光が体を包んでいた。
これなら動く。走れる。
天草は周囲の皆にも感謝を告げると、一心に駆け出した。
薄闇の通路をひた走って、コントロールルームを目指す。
不意に誠少年の言葉を思い出した。
『確かめたんですか?』
『それは本当に、お父さんのした事なんですか?』
…………そうだ、ようやく気が付いた。
(父が私を見捨てたんじゃない。私が、父を見捨てたんだ……!!!)
あの日封じ込め、押し殺していた本当の気持ちが、次から次へと噴き出してくる。
(どうして信じてあげなかったの? どうして確かめなかったの?)
(……分かってる、怖かったからだ。他の人が父を憎んで、それが自分に向くのがたまらなく怖かったんだ……!)
(だから父の遺品を捨てて、率先して憎んでるふりをしたんだ……!)
怖くて怖くてたまらなくて、ただただ我が身を守るために。全てをあの人に押し付け、頑なに憎もうとしていたのだ。
あんなに可愛がってくれてたのに、一番信じていた娘に裏切られたのだ。
どんなに悲しかっただろう。どんなに悔しかっただろう。
(ごめんお父さん。ごめんね、ごめんね、ごめん、ごめん、ごめんっ……!!!)
10年前に言えなかった言葉を、心の中で数限りなく繰り返す。
『ちゃんと確かめないといけないな』
あの日父はそう言った。
そして今日、あの少年が同じ言葉を口にした。
彼はずっと戦っていたのだ。私は……逃げてしまっていたのに……!
簡素な鉄の階段をのぼると、整備用の通路は終わりを告げる。
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