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第二章その6 ~目指すは阿蘇山!~ 火の社攻略編
うちらも来たで!
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そこから先は、超がつく突貫作業の連続だった。
鹿児島防衛戦で疲弊した兵力の補充や、必要な物資の運搬など、あわただしく戦支度が整えられていく。
呼び戻されていた公務員は、栄養ドリンクを片手に事務連絡をとりまくり、兵器や資源をかき集めてくれた。
もちろん事務方だけではない。
工場作業や運搬に関わる人々も、皆汗だくになって、最後の大戦の準備をしている。
残る力と勇気を振り絞って、故郷を取り戻すためだ。
誠は旗艦の格納庫にて、人型重機・心神の調整を行っていたが、そこに数名の少年少女が駆け寄ってくる。
「やっほー鳴っち、うちらも来たで~」
聞き覚えのある関西弁に顔を上げると、栗色の髪をショートカットにした、愛想のいい少女が手を振っていた。
「うわっ難波、来てくれたのか!」
誠が操縦席から降りると、難波はいつも通りニヤけた顔で頷いた。
「せや、鶉谷司令の命令でな。第5船団はあっちで大変やったんやで?」
「そうだぜ隊長。けどまあ、この宮島様の活躍で守り抜いたけどな」
「宮島も久しぶり……でもないけど、元気そうじゃんか」
誠が言うと、宮島は嬉しそうに拳を握る。
「おうよ隊長、俺は不滅さ。もちろん九州でも大活躍するぜ! 俺の名は第6船団にも響き渡り、ここからモテモテウハウハの……」
「ちょっとあんた、第6船団でもその発言? またピンチになるわよ」
肩をすくめるのは、誠の隊の副官のカノンだ。
歳の割りに大人びた色気を持つ彼女は、少し誠から目をそらして言う。
「……それで隊長殿は、こっちでも無茶やってるのかしら?」
「まあね。カノンに手術されないように、ケガはまだしてないけど」
誠が答えると、もう一人の少年が、片手を拝むようなポーズにして言った。
「ま、隊長の無茶は、今に始まった事じゃないからな。普通ならとっくの昔にお陀仏なんだが」
誠は少年に向き直る。
「殿……」
「殿じゃないっ!」
頭上でマゲを結った香川は慌てて否定し、格納庫は笑いに包まれた。
難波は楽しそうに誠の背中をばしばし叩く。
「なんやいつも通りやん。これなら勝てるで、なあ鳴っち」
「それは勿論、絶対勝つ!」
誠が気合を入れて答えると、そこへ鶴や志布志隊の面々が到着した。
鶴は難波達を目にして喜んだ。
「まあみんな、来てくれたのね!」
「おお、鶴っちやん、九州でも無茶な事しとるんやろ?」
難波はそう言うが、そこで志布志隊の面々に目を向ける。
それからいかにも悪そうなニヤニヤ顔で誠に尋ねた。
「……で、誰が鳴っちの現地妻なん?」
「ちょ、ちょっとあんた、いきなり何言ってるのよっ」
カノンがツッコミを入れるが、傍らでは壮太が宮島と意気投合していた。
「おおおおおっ、壮太じゃん!」
「うおお武志っ、元気してたか! お前がいれば、こりゃ勝利は絶対だぜ!」
喜ぶ壮太達をよそに、晶は呆れ気味に眼鏡の位置を手で直した。
「やれやれだ。壮太が倍に増えたみたいだな」
そう言いつつも、何となくそわそわして嬉しそうなのは気のせいだろうか。
湯香里と八千穂は、さっそく一同に握手して回っていた。
「みんな、九州へようこそ! 加勢に来てくれてありがとね! 復興したら、うちの温泉でゆっくりしてって」
「そそそうですっ、これ、私が趣味で栽培した果物です! あとお近づきの印に、新作のカナリー椰子のぬいぐるみもどうぞ!」
「ほーっ、こりゃええやん。一気に南国に来た感あるで」
難波が嬉しそうに言うと、俄然キャシーとヘンダーソンが張り切る。
「南国と言えば沖縄だぜ、関西弁のお嬢さん!」
「そーデスよ、早く平和を取り戻して、みんなで遊びに来てクダサイね!」
ヘンダーソンが三線をかき鳴らし、キャシーと鶴が踊り始める。
もう何が何だか分からないが、とにかく第5船団からの応援は、次々と鹿児島に到着していた。
勇壮な艦艇が相次いで停泊し、湾内はにわかに活気付いている。
鶴は半透明の地図で確認し、増援の兵力に満足げだった。
「いいわ、どんどん集まってくれてるわね。これで勝利は間違いないわ!」
「さすが皆さん、士気は十分ですね」
いつの間にか誠達のそばにいた鳳が、そう声をかけてきた。
「戦いの間、人々の警護は私どもにお任せ下さい」
「おうよ、ワシら八幡・狛犬連合に任せとけ!」
眼帯を付けた狛犬が駆け寄ると、後ろから同じような狛犬達がわらわらと近づいてくる。
「うっ、また危険な連中が来たな……」
誠が後ずさりしていると、その肩にキツネが飛び乗った。
「ワイらもおるで、とうへんぼく! 稲荷大明神様の神使は一流なんや!」
「天満宮様の神使・牛太郎以下一同、モウレツに頑張ります!」
牛もキツネも大量に跳ね回り、最早格納庫はカオスな状態になった。
誠は神使達にじゃれつかれ、パンチや飛び蹴りをくらいながら言った。
「そ、それと鳳さん、例の件、あやしい奴はいませんでしたか……ぐはっ!? お前ら、ほんといい加減に俺を許せよ……ぐほっ!?」
キツネは倒れた誠に乗ったまま、腕組みして思案している。
「うーん、あれから何度も調べたんやけど、そんなヤツはおらんかったで。作戦漏れいうけど、単なる偶然やったんやないか?」
鳳はそんな神使達に言葉をかける。
「皆さん、それでも念には念です。悪いですがもう一回お願いしますね」
「分かったで、姉さん!」
神使達は元気良く返事をすると、再びわらわら駆け出していった。
鹿児島防衛戦で疲弊した兵力の補充や、必要な物資の運搬など、あわただしく戦支度が整えられていく。
呼び戻されていた公務員は、栄養ドリンクを片手に事務連絡をとりまくり、兵器や資源をかき集めてくれた。
もちろん事務方だけではない。
工場作業や運搬に関わる人々も、皆汗だくになって、最後の大戦の準備をしている。
残る力と勇気を振り絞って、故郷を取り戻すためだ。
誠は旗艦の格納庫にて、人型重機・心神の調整を行っていたが、そこに数名の少年少女が駆け寄ってくる。
「やっほー鳴っち、うちらも来たで~」
聞き覚えのある関西弁に顔を上げると、栗色の髪をショートカットにした、愛想のいい少女が手を振っていた。
「うわっ難波、来てくれたのか!」
誠が操縦席から降りると、難波はいつも通りニヤけた顔で頷いた。
「せや、鶉谷司令の命令でな。第5船団はあっちで大変やったんやで?」
「そうだぜ隊長。けどまあ、この宮島様の活躍で守り抜いたけどな」
「宮島も久しぶり……でもないけど、元気そうじゃんか」
誠が言うと、宮島は嬉しそうに拳を握る。
「おうよ隊長、俺は不滅さ。もちろん九州でも大活躍するぜ! 俺の名は第6船団にも響き渡り、ここからモテモテウハウハの……」
「ちょっとあんた、第6船団でもその発言? またピンチになるわよ」
肩をすくめるのは、誠の隊の副官のカノンだ。
歳の割りに大人びた色気を持つ彼女は、少し誠から目をそらして言う。
「……それで隊長殿は、こっちでも無茶やってるのかしら?」
「まあね。カノンに手術されないように、ケガはまだしてないけど」
誠が答えると、もう一人の少年が、片手を拝むようなポーズにして言った。
「ま、隊長の無茶は、今に始まった事じゃないからな。普通ならとっくの昔にお陀仏なんだが」
誠は少年に向き直る。
「殿……」
「殿じゃないっ!」
頭上でマゲを結った香川は慌てて否定し、格納庫は笑いに包まれた。
難波は楽しそうに誠の背中をばしばし叩く。
「なんやいつも通りやん。これなら勝てるで、なあ鳴っち」
「それは勿論、絶対勝つ!」
誠が気合を入れて答えると、そこへ鶴や志布志隊の面々が到着した。
鶴は難波達を目にして喜んだ。
「まあみんな、来てくれたのね!」
「おお、鶴っちやん、九州でも無茶な事しとるんやろ?」
難波はそう言うが、そこで志布志隊の面々に目を向ける。
それからいかにも悪そうなニヤニヤ顔で誠に尋ねた。
「……で、誰が鳴っちの現地妻なん?」
「ちょ、ちょっとあんた、いきなり何言ってるのよっ」
カノンがツッコミを入れるが、傍らでは壮太が宮島と意気投合していた。
「おおおおおっ、壮太じゃん!」
「うおお武志っ、元気してたか! お前がいれば、こりゃ勝利は絶対だぜ!」
喜ぶ壮太達をよそに、晶は呆れ気味に眼鏡の位置を手で直した。
「やれやれだ。壮太が倍に増えたみたいだな」
そう言いつつも、何となくそわそわして嬉しそうなのは気のせいだろうか。
湯香里と八千穂は、さっそく一同に握手して回っていた。
「みんな、九州へようこそ! 加勢に来てくれてありがとね! 復興したら、うちの温泉でゆっくりしてって」
「そそそうですっ、これ、私が趣味で栽培した果物です! あとお近づきの印に、新作のカナリー椰子のぬいぐるみもどうぞ!」
「ほーっ、こりゃええやん。一気に南国に来た感あるで」
難波が嬉しそうに言うと、俄然キャシーとヘンダーソンが張り切る。
「南国と言えば沖縄だぜ、関西弁のお嬢さん!」
「そーデスよ、早く平和を取り戻して、みんなで遊びに来てクダサイね!」
ヘンダーソンが三線をかき鳴らし、キャシーと鶴が踊り始める。
もう何が何だか分からないが、とにかく第5船団からの応援は、次々と鹿児島に到着していた。
勇壮な艦艇が相次いで停泊し、湾内はにわかに活気付いている。
鶴は半透明の地図で確認し、増援の兵力に満足げだった。
「いいわ、どんどん集まってくれてるわね。これで勝利は間違いないわ!」
「さすが皆さん、士気は十分ですね」
いつの間にか誠達のそばにいた鳳が、そう声をかけてきた。
「戦いの間、人々の警護は私どもにお任せ下さい」
「おうよ、ワシら八幡・狛犬連合に任せとけ!」
眼帯を付けた狛犬が駆け寄ると、後ろから同じような狛犬達がわらわらと近づいてくる。
「うっ、また危険な連中が来たな……」
誠が後ずさりしていると、その肩にキツネが飛び乗った。
「ワイらもおるで、とうへんぼく! 稲荷大明神様の神使は一流なんや!」
「天満宮様の神使・牛太郎以下一同、モウレツに頑張ります!」
牛もキツネも大量に跳ね回り、最早格納庫はカオスな状態になった。
誠は神使達にじゃれつかれ、パンチや飛び蹴りをくらいながら言った。
「そ、それと鳳さん、例の件、あやしい奴はいませんでしたか……ぐはっ!? お前ら、ほんといい加減に俺を許せよ……ぐほっ!?」
キツネは倒れた誠に乗ったまま、腕組みして思案している。
「うーん、あれから何度も調べたんやけど、そんなヤツはおらんかったで。作戦漏れいうけど、単なる偶然やったんやないか?」
鳳はそんな神使達に言葉をかける。
「皆さん、それでも念には念です。悪いですがもう一回お願いしますね」
「分かったで、姉さん!」
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