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第二章その5 ~絶対守るわ!~ 熱血の鹿児島防衛編
神器・シオミツタマ
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戦況を見極め、鶴が弾けるように叫んだ。
「黒鷹、みんな、今よ!」
「了解! 志布志隊っ、頼む!」
「まかしとけっ!!!」
誠の声に答え、画面上で壮太達が親指を立てた。
一同の人型重機は山あいから飛び出し、峰から峰へ飛び移りながら平野部を目指した。
渦巻く水に覆われた平野は、もはや海の様相である。
『電磁ホバー船、起動!』
画面に映る天草の声とともに、地面の一部が爆破され、偽装がはがれる。
中から現れたのは、シーグレーに塗装されたホバー船である。
誠達は人型重機をジャンプさせ、船の上に降り立った。
船は土煙を巻き上げて宙に浮かぶと、そのまま水面へと繰り出していく。
硬くとがった船首に青い電磁式が満ちると、逃げ惑う餓霊を易々と切り裂いた。まるで戦国時代に、船に取り付けた衝角である。
誠達が銃をもたげて射撃すると、餓霊は一発でかなりの数が打ち抜かれていく。海水混じりの水で、奴らが弱っているためだ。
画面上で壮太が指をはじいた。
「こりゃいいぜ、カステラみたいにふわふわじゃんか!」
「調子に乗るなよ壮太! この数だ、海水が消えればこっちの負けだぞ!」
晶の言葉に、画面に映る全員が表情を引き締める。
誠の機体の後部座席に座る鶴は、手の平を上に向けていた。
その手の上、数センチに浮かぶ青い珠は、神代の昔から受け継がれた海神の神器・シオミツタマ。
あの小豆島で潮の流れを操り、鬼達の軍勢をきりきり舞いさせたものである。
これを使って局地的に潮を満ちさせ、海水を引き上げたのだ。
「ヒメ子、まだいけるか!?」
「しんどいけど、もうちょっと平気……!」
誠の問いに、鶴はウインクしてみせる。
気丈に振る舞ってはいるが、これだけ大量の海水を移動させているのだ。鶴の負担もかなりのものであろう。
誠は機体を操作し、大きく前方へジャンプ。進路を塞ぐ巨大な餓霊の頭に、強化刀を振り下ろす。
そのまま別の餓霊に飛び移り、次々に切り払うと、元のホバー船の上に降り立った。
「ワーオ、グレイト! これぞニンジャデース!」
「まるで義経の八艘飛びね!」
画面上でキャシーや湯香里が騒いでいるが、彼女達だって、なかなかどうして大した技量である。
一同は次々に敵を撃ち抜き、切り払い、敵陣深く切り込んでいく。
「ごめんみんなっ、そろそろ神器の効き目が切れるわ!」
鶴が怒鳴るが、誠は力強く頷いた。
「助かったヒメ子、後は任せろ!」
誠は叫ぶと、眼前に迫る、巨大な島のような餓霊を見据えた。
全長1500メートル近い威容であり、あれこそが城喰いである。
誠達は船で突進しながら一斉射撃を加えるが、そこで横手から、数体の敵が立ちふさがった。
餓霊というには洗練された、鎧のようなその形は、あの小豆島で鬼達が使っていたものに似ている。
「あれは多分、中に乗ってるタイプのやつね。みんな、あいつら手ごわいわよ!」
鶴の言葉と共に、鎧はこちらに言葉を投げかける。
「くそったれ、そんな少数でなんとかなると思ってんのか!」
「いくら神人でも、そう長く海水は上げられないでしょう? ここで防げば終わりよ! 全軍、からめ取れ!」
餓霊の軍勢は、海水に苦しみながらも陣形を変え、誠達を包み込むように移動していく。
さすがに元々の数が違いすぎるため、あれを突破する間に、海水が引いてしまうだろう。
さすればこちらの敗北が決まってしまう。
…………だが次の瞬間、敵軍に無数の射撃が加えられた。
水を避けるため、高台に配置していた砲撃部隊が、餓霊軍を狙ったのである。
注意を怠っていた餓霊の軍勢は、予想外の攻撃で大混乱に陥っていた。
「残念ね、本命はあっちのみんなよ!」
鶴は満足げに言うと、通信で皆に語りかけた。
「さあみんな、一斉攻撃よ! 鎮西武者の力を見せてやりましょう!」
『了解っ!!!!!』
通信画面が割れるかと思うほどの返事が響いた。
この機を待っていた鹿児島守備隊の勇者達が、一斉に咆えたのである。
「大将の位置は大体見えたし、これをみんなに伝えるわね」
鶴が目を閉じて念じると、敵軍に無数の光が降り注いでいく。
光は敵の大将クラスに次々取り付き、目印のように輝き続けた。
味方は打ち合わせ通り、その光を狙って集中砲火を行った。
餓霊は指揮官を倒されれば、配下もまとめて消えるためだ。
味方は射撃を繰り返し、的確に相手の数を減らしていく。
敵軍は苦し紛れに横に広がり、砲撃から逃れようとしたが、そこに味方の人型重機部隊が突進して逃げ場をふさいだ。
「……そろそろ水が引いてきたな。走れる……!」
誠は電磁ホバー船を捨て、機体を前に走らせた。
狙いは敵軍の中央、城喰いである。
リーダー格の鎧2体が気付いて追いすがろうとするが、それにヘンダーソンとキャシーの重機が射撃。そのまま突進し、体当たりしてぐらつかせる。
「そう簡単にタッチダウンは決めさせないさ!」
「その通りデース!」
鎧は物凄い力で2人の重機を振り払うが、そこに壮太が切り込んでいた。
「行かせるかっ! ここは俺の故郷なんだよ!」
機体のパワーをフル稼働させた、示現流のような一撃である。
一体の鎧が壮太の刀を受け止め、想像以上の威力にバランスを崩した。
壮太が追撃しようとするが、横手からもう一体の鎧が鋭利な剣を振りかぶる。
この連携はさすがであったが、そこに晶の機体が切りかかった。
「昔っから、壮太のお守りは俺なんでね!」
鎧は晶の太刀を弾くと、眼前に幾何学模様を浮き上がらせる。
何かの術を放つつもりか。
だがその横手から、湯香里の機体が突進し、敵は慌てて後ずさった。
「ったく、壮太も晶も! こんな時にいちゃついてんじゃないの、ねえ八千穂?」
「そうです、いちゃいちゃは、後でみんなでお願いしますっ!!!」
八千穂の機体が腕部装甲に光を漲らせ、慣性力全開で鎧に体当たりしていた。
普段気弱な彼女とは思えぬ、勇敢な突進ぶりである。
「てめえら、次から次へと湧きやがって!!!」
鎧の一体が叫ぶも、壮太達はひるまない。
「黒鷹、みんな、今よ!」
「了解! 志布志隊っ、頼む!」
「まかしとけっ!!!」
誠の声に答え、画面上で壮太達が親指を立てた。
一同の人型重機は山あいから飛び出し、峰から峰へ飛び移りながら平野部を目指した。
渦巻く水に覆われた平野は、もはや海の様相である。
『電磁ホバー船、起動!』
画面に映る天草の声とともに、地面の一部が爆破され、偽装がはがれる。
中から現れたのは、シーグレーに塗装されたホバー船である。
誠達は人型重機をジャンプさせ、船の上に降り立った。
船は土煙を巻き上げて宙に浮かぶと、そのまま水面へと繰り出していく。
硬くとがった船首に青い電磁式が満ちると、逃げ惑う餓霊を易々と切り裂いた。まるで戦国時代に、船に取り付けた衝角である。
誠達が銃をもたげて射撃すると、餓霊は一発でかなりの数が打ち抜かれていく。海水混じりの水で、奴らが弱っているためだ。
画面上で壮太が指をはじいた。
「こりゃいいぜ、カステラみたいにふわふわじゃんか!」
「調子に乗るなよ壮太! この数だ、海水が消えればこっちの負けだぞ!」
晶の言葉に、画面に映る全員が表情を引き締める。
誠の機体の後部座席に座る鶴は、手の平を上に向けていた。
その手の上、数センチに浮かぶ青い珠は、神代の昔から受け継がれた海神の神器・シオミツタマ。
あの小豆島で潮の流れを操り、鬼達の軍勢をきりきり舞いさせたものである。
これを使って局地的に潮を満ちさせ、海水を引き上げたのだ。
「ヒメ子、まだいけるか!?」
「しんどいけど、もうちょっと平気……!」
誠の問いに、鶴はウインクしてみせる。
気丈に振る舞ってはいるが、これだけ大量の海水を移動させているのだ。鶴の負担もかなりのものであろう。
誠は機体を操作し、大きく前方へジャンプ。進路を塞ぐ巨大な餓霊の頭に、強化刀を振り下ろす。
そのまま別の餓霊に飛び移り、次々に切り払うと、元のホバー船の上に降り立った。
「ワーオ、グレイト! これぞニンジャデース!」
「まるで義経の八艘飛びね!」
画面上でキャシーや湯香里が騒いでいるが、彼女達だって、なかなかどうして大した技量である。
一同は次々に敵を撃ち抜き、切り払い、敵陣深く切り込んでいく。
「ごめんみんなっ、そろそろ神器の効き目が切れるわ!」
鶴が怒鳴るが、誠は力強く頷いた。
「助かったヒメ子、後は任せろ!」
誠は叫ぶと、眼前に迫る、巨大な島のような餓霊を見据えた。
全長1500メートル近い威容であり、あれこそが城喰いである。
誠達は船で突進しながら一斉射撃を加えるが、そこで横手から、数体の敵が立ちふさがった。
餓霊というには洗練された、鎧のようなその形は、あの小豆島で鬼達が使っていたものに似ている。
「あれは多分、中に乗ってるタイプのやつね。みんな、あいつら手ごわいわよ!」
鶴の言葉と共に、鎧はこちらに言葉を投げかける。
「くそったれ、そんな少数でなんとかなると思ってんのか!」
「いくら神人でも、そう長く海水は上げられないでしょう? ここで防げば終わりよ! 全軍、からめ取れ!」
餓霊の軍勢は、海水に苦しみながらも陣形を変え、誠達を包み込むように移動していく。
さすがに元々の数が違いすぎるため、あれを突破する間に、海水が引いてしまうだろう。
さすればこちらの敗北が決まってしまう。
…………だが次の瞬間、敵軍に無数の射撃が加えられた。
水を避けるため、高台に配置していた砲撃部隊が、餓霊軍を狙ったのである。
注意を怠っていた餓霊の軍勢は、予想外の攻撃で大混乱に陥っていた。
「残念ね、本命はあっちのみんなよ!」
鶴は満足げに言うと、通信で皆に語りかけた。
「さあみんな、一斉攻撃よ! 鎮西武者の力を見せてやりましょう!」
『了解っ!!!!!』
通信画面が割れるかと思うほどの返事が響いた。
この機を待っていた鹿児島守備隊の勇者達が、一斉に咆えたのである。
「大将の位置は大体見えたし、これをみんなに伝えるわね」
鶴が目を閉じて念じると、敵軍に無数の光が降り注いでいく。
光は敵の大将クラスに次々取り付き、目印のように輝き続けた。
味方は打ち合わせ通り、その光を狙って集中砲火を行った。
餓霊は指揮官を倒されれば、配下もまとめて消えるためだ。
味方は射撃を繰り返し、的確に相手の数を減らしていく。
敵軍は苦し紛れに横に広がり、砲撃から逃れようとしたが、そこに味方の人型重機部隊が突進して逃げ場をふさいだ。
「……そろそろ水が引いてきたな。走れる……!」
誠は電磁ホバー船を捨て、機体を前に走らせた。
狙いは敵軍の中央、城喰いである。
リーダー格の鎧2体が気付いて追いすがろうとするが、それにヘンダーソンとキャシーの重機が射撃。そのまま突進し、体当たりしてぐらつかせる。
「そう簡単にタッチダウンは決めさせないさ!」
「その通りデース!」
鎧は物凄い力で2人の重機を振り払うが、そこに壮太が切り込んでいた。
「行かせるかっ! ここは俺の故郷なんだよ!」
機体のパワーをフル稼働させた、示現流のような一撃である。
一体の鎧が壮太の刀を受け止め、想像以上の威力にバランスを崩した。
壮太が追撃しようとするが、横手からもう一体の鎧が鋭利な剣を振りかぶる。
この連携はさすがであったが、そこに晶の機体が切りかかった。
「昔っから、壮太のお守りは俺なんでね!」
鎧は晶の太刀を弾くと、眼前に幾何学模様を浮き上がらせる。
何かの術を放つつもりか。
だがその横手から、湯香里の機体が突進し、敵は慌てて後ずさった。
「ったく、壮太も晶も! こんな時にいちゃついてんじゃないの、ねえ八千穂?」
「そうです、いちゃいちゃは、後でみんなでお願いしますっ!!!」
八千穂の機体が腕部装甲に光を漲らせ、慣性力全開で鎧に体当たりしていた。
普段気弱な彼女とは思えぬ、勇敢な突進ぶりである。
「てめえら、次から次へと湧きやがって!!!」
鎧の一体が叫ぶも、壮太達はひるまない。
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