新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART2 ~鎮西のジャンヌダルク~

朝倉矢太郎(BELL☆PLANET)

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第二章その4 ~信じてほしいの!~ ガンコ才女の説得編

そっくりさんを倒せ!

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「ええと、この子孫の夢枕に立てばいいのか。ワシそっくりだな」

 武将・島津は鶴の差し出した神器のタブレット画面を眺め、船団長の島津氏の顔を確認した。

 誠は鶴と一緒に島津を見守っているが、他の連中は、武将と一緒に戦術談義ぜんじゅつだんぎにふけっていた。

「ふむ、鎮西に化け物どもが迫っておるのか。して味方の布陣は?」

 織田信長を中心に、武将達はあーだこーだと議論を交わしている。

「わしならこう守る!」

「いや、こうした方がいい!」

「なっとらん、守るだけで勝てるものか!」

 誠も内容が気になって仕方がないが、その間にも武将・島津は目を閉じて何か念じている。

 やがてしばしの後、彼は言った。

 少し気まずそうな表情で、諏訪大明神の方をチラチラ見ながら。

「……い、いや……ていうかこいつはワシの子孫じゃないぞ。というより薩摩ですらない。単なるそっくりさんだ」

『えええええっ!?』

 一同の絶叫が響き渡った。



「たのもう! 討ち入りよ!」

 一同はドカンと扉を打ち破り、島津氏(※船団長)の部屋へと突入した。

「う、うわっ!? 何だ!?」

 島津氏はナイトキャップを被り、ベッドに横たわっていたが、突然の物音に飛び上がった。

 鶴は拳を振り上げ、神使達に呼びかけた。

「さあみんな、ニセ島津をこらしめましょう!」

「いやヒメ子、ニセ島津って。別に島津さんが嘘言ってたわけじゃないだろ」

 誠は興奮する鶴をなんとかなだめ、島津氏に事情を説明した。

「……なるほど、そういう経緯か。ひっ!? ちょっとこの動物達どうにかしてっ」

 島津氏はベッドで飛び跳ねる神使達におびえながら答えた。

「そもそもワシは、別に鹿児島出身じゃないから。仕方なくそう振る舞ってただけで、ホントは空気の読める男なのに。新しい文化とかメチャ柔軟なのに」

「なんでそれを先に言わないのっ!」

「……だ、誰も聞かなかったから……」

 鶴の剣幕に、島津は目をしょぼしょぼさせて答える。

「大変な時期だったから、いかにも見た目だけ九州男児・まるしぼりのワシが選ばれたわけ。こう見えて温和なのに。おしゃべりとかメチャ得意なのに」

「じゃああなたはどこの人なの?」

五島列島ごとうれっとう、つまり長崎県だよ。自然は綺麗だし、海の幸もおいしいし、全員顔見知りだから居心地はすごくいいんじゃが……都会でバーガーを食べる生活に憧れて、長崎市まで出てきてな」

 島津は懐かしそうに語り始める。

 枕元に置いてあった椿油つばきあぶらのビンは、恐らく五島のものだろうが、それに手足が生えて起き上がった事に島津は気付いていない。

「そこのちゃんぽん屋で相席になった嫁と恋に落ちたんだ。日本がこうなった後は一方的に薩摩隼人さつまはやとに間違われつつ、なんとか誤魔化して船団を守ってきた。それは言わば、わしの心の出島スタイル。他者と柔軟に交わるバランス感覚のたまものであり……」

「なるほど、人に歴史ありなのねえ」

 鶴は神使や椿油と一緒にお茶を飲みながら聞いていたが、そこで湯飲みを置いた。

「でもそうと決まれば話は早いわ。九州こっちに来てから、もっこすばかりで苦労してたの。ガンコじゃないなら、一気に勝負を決めちゃいましょう」

「いや、ちょっと、ワシにも立場が……」

 そこでベッドの周囲を全員が取り囲む。

「さあみんな、総攻撃よ! みんなで断れない空気を作るのよ!」

「えっ? いや、うわああっ!?」

 そこで皆が一斉にわめき出したため、島津はわけもわからず悲鳴を上げた。

「さあ観念しなさい、この鶴ちゃんに協力するのよ!」

「そうやそうや、姫様に協力せえ!」

「ワシら神使もついとるぞ!」

「こんなウシろ盾があって、断るなどは言わせません!」

 神使達がゴムマリのようにベッドで飛び跳ね、誠達も声を上げる。

「島津さん、お願いします! 協力して、鹿児島攻めを跳ね返しましょう!」

「そうだぜ船団長、俺らも頑張るからさ!」

 壮太達も声を上げる。

「あたし達も頑張る! ねえ八千穂?」

「はい! ももも、勿論ですっ!」

 湯香里と八千穂の後ろでは、晶やヘンダーソン、キャシーも声を上げている。

「ここが正念場、協力するしかないでしょう船団長!」

「ダディの意思を無駄にしたくない、協力しましょう!」

「そーデス、一緒に頑張るデース!」

 全員がわめき散らすので、島津は目を白黒させている。

 天草はそこで島津の肩をがっしと掴んだ。

「それでは島津船団長、ご決断を!!!」

 もうワシはわからん、好きにして、とさじを投げると、島津はそこで目を回した。

「姫様、バッチリ録画出来たで!」

 神使のキツネが録画装置カメラを誇らしげに掲げている。

「やったわ、とうとう言質げんちを取ったわ! 私達の勝利よ!」

 鶴が拳を振り上げ、一同は大いに盛り上がる。

 こうして第6船団は、半ば強引に鶴達と共闘する事になったのだ。
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