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第二章その4 ~信じてほしいの!~ ガンコ才女の説得編
副作用に気を付けろ
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誠は太刀を逆鱗におさめると、座り込んでいた鳳に駆け寄る。
「お、鳳さん、大丈夫ですか!?」
「……っ、はい、……大丈夫です……!」
鳳は喉を押さえながらも、そう気丈に答えた。
「……すみません。啖呵を切っておいてこのざまとは……彼らの仲間も、回収されてしまって」
「いっ、いえ、鳳さん滅茶苦茶強かったですよ? 俺も神器が無ければ……」
誠はそこまで言ってぞっとした。
神器!?
そうだ、神器の太刀だ!
鳳のピンチに我を忘れ、咄嗟に使ってしまっていたが、この神器の太刀には副作用がある。
使う度に前世の記憶が……つまり、鶴への恋心が蘇ってくるのである。
(……い、いや待てよ、前ぐらいの感覚なら耐えられるはず……)
誠は何度か深呼吸して、そーっと鶴の方を見る。
鶴は鳳の火傷した場所に、霊気を当てて治療していた。
横顔は珍しく真剣な表情である。
「!!!!!!!!!l」
瞬間、誠の心臓が肋骨を打ちつけた。
喉のあたりがきゅーんとなって、顔がみるみる火照っていく。
(やばいやばい、これは今までよりずっとやばいっ……!!!)
「どうされました?」
「あ、いえっ……」
鳳がキョトンとして尋ねてくるので、誠は無理やり話をそらした。
「そっ、そそそれはですねっ、はは初めてこんな戦いを見たから感心して! 術ってあんなふうに使うものなんですね! 単におまじない唱えるのかと思ってたら、まさか銃まで使うとか!」
「使えるものは何でも使いますよ? 平和を守るのが最優先ですから。でも、最後の黒鷹殿のご判断も、素質がおありのように思えます」
鳳はそう言って微笑む。
「そ、それはどうも」
誠は恐縮して頭を下げた。
目をやると、石造りの床に刻まれた魔法陣は、もうその輝きを失っていた。
鳳は室内を見渡して言った。
「もちろんこの拠点以外も調査いたしますが、これで戦闘中に鹿児島が襲われる事はないものと思われます」
「そうね、さっそくあまちゃんに報告よ!」
一同は急ぎ天草の元へと駆け戻った。
深い地下に位置する空間だった。
ごつごつした石造りのその場所は、部屋というより巨大な洞窟のようだ。
中央にある魔法陣は、まるで生きているかのように、時折赤く明滅している。
その魔法陣のすぐ傍に、一人の男が佇んでいた。
年の頃は50代ぐらいだろう。長身で、彫りの深い顔には髭をたくわえている。
身にまとうスーツも洗練され、威厳と品の感じさせる人物だった。
やがて魔法陣が一際強く輝くと、数人が姿を現した。
「ひえ~、まったく酷い目にあった。おっ、不知火様」
若くチャラついた男が、開口一番まくしたてる。
「あの神人っての、凄い鼻が利きますわ。結界も張ってるのに、お構いなしに探り当ててきて。全神連のボンクラとは違うんスかねえ」
「……報告は手短にしろ、焔」
不知火が言うと、焔は気軽に手を上げて続ける。
「アイアイサー、ともかく拠点は潰されましたわ」
焔の隣に立つ女も、怪訝そうに後を続ける。
「……決して表に出ないようしていたのですが、どうやって探り当てたのか不明です。残してきた手駒は、しばらく使えるはずですが……」
「……まあいいだろう。夜祖様のお言葉ではないが、相手は神人。あちらの最大戦力だ。一筋縄ではいくまい」
不知火はそう言って彼らへの追求を止めた。
「いよいよ仕上げの鹿児島攻めだ。あそこを火の海に出来れば、鎮西は御前様の手に取り戻せる」
「りょーかい、そんなら任せて下さいよ。今回の借りもあるんでね」
焔は自身満々で答えた。
「四国の情報もありますし、あっちの戦い方は分かってるんで、勝ち方も分かりますわ」
「……さっきやられた癖に。焔、あなた調子に乗りすぎよ?」
そんな一同と少し離れて、壁際に座する姿があった。
一人は筋肉質のがっしりした巨体。
もう一人は髪が長く、小柄な子供のような姿。
いずれも頭に角が生えており、つまりはあの剛角と紫蓮なのだった。
「……けっ、何やら楽しそうじゃのお」
剛角は足元の石を拾い、指で握りつぶしながらいじけている。
「戦じゃいうても、ワシらは護りと留守番だけ。酷い飼い殺しじゃ」
「しょうがないじゃろ、失敗した手前文句も言えんわ。鎧も直っておらんし、我慢せい剛角」
「分かっとるけど、暇で暇で」
剛角が尚もいじけていると、気付いた焔が声をかけた。
「悪いねえ、鬼のお二方。暇なら洗濯でもしといてくれ。青島に丁度いい洗濯岩があるだろ?」
「くうぅ~~~っ!!! 嫌味なやつじゃのお!」
「剛角、我慢じゃ!」
紫蓮に頭を叩かれる剛角だったが、焔はもう彼らに構っていなかった。
「そんじゃいきましょうか。鎮西最後の砦、鹿児島攻めの始まり始まり♪」
やがて地下深くから、不可思議な振動が伝わってくる。
大地を揺るがし、巨大な何かがこの地に向かってきているのだ。
「お、鳳さん、大丈夫ですか!?」
「……っ、はい、……大丈夫です……!」
鳳は喉を押さえながらも、そう気丈に答えた。
「……すみません。啖呵を切っておいてこのざまとは……彼らの仲間も、回収されてしまって」
「いっ、いえ、鳳さん滅茶苦茶強かったですよ? 俺も神器が無ければ……」
誠はそこまで言ってぞっとした。
神器!?
そうだ、神器の太刀だ!
鳳のピンチに我を忘れ、咄嗟に使ってしまっていたが、この神器の太刀には副作用がある。
使う度に前世の記憶が……つまり、鶴への恋心が蘇ってくるのである。
(……い、いや待てよ、前ぐらいの感覚なら耐えられるはず……)
誠は何度か深呼吸して、そーっと鶴の方を見る。
鶴は鳳の火傷した場所に、霊気を当てて治療していた。
横顔は珍しく真剣な表情である。
「!!!!!!!!!l」
瞬間、誠の心臓が肋骨を打ちつけた。
喉のあたりがきゅーんとなって、顔がみるみる火照っていく。
(やばいやばい、これは今までよりずっとやばいっ……!!!)
「どうされました?」
「あ、いえっ……」
鳳がキョトンとして尋ねてくるので、誠は無理やり話をそらした。
「そっ、そそそれはですねっ、はは初めてこんな戦いを見たから感心して! 術ってあんなふうに使うものなんですね! 単におまじない唱えるのかと思ってたら、まさか銃まで使うとか!」
「使えるものは何でも使いますよ? 平和を守るのが最優先ですから。でも、最後の黒鷹殿のご判断も、素質がおありのように思えます」
鳳はそう言って微笑む。
「そ、それはどうも」
誠は恐縮して頭を下げた。
目をやると、石造りの床に刻まれた魔法陣は、もうその輝きを失っていた。
鳳は室内を見渡して言った。
「もちろんこの拠点以外も調査いたしますが、これで戦闘中に鹿児島が襲われる事はないものと思われます」
「そうね、さっそくあまちゃんに報告よ!」
一同は急ぎ天草の元へと駆け戻った。
深い地下に位置する空間だった。
ごつごつした石造りのその場所は、部屋というより巨大な洞窟のようだ。
中央にある魔法陣は、まるで生きているかのように、時折赤く明滅している。
その魔法陣のすぐ傍に、一人の男が佇んでいた。
年の頃は50代ぐらいだろう。長身で、彫りの深い顔には髭をたくわえている。
身にまとうスーツも洗練され、威厳と品の感じさせる人物だった。
やがて魔法陣が一際強く輝くと、数人が姿を現した。
「ひえ~、まったく酷い目にあった。おっ、不知火様」
若くチャラついた男が、開口一番まくしたてる。
「あの神人っての、凄い鼻が利きますわ。結界も張ってるのに、お構いなしに探り当ててきて。全神連のボンクラとは違うんスかねえ」
「……報告は手短にしろ、焔」
不知火が言うと、焔は気軽に手を上げて続ける。
「アイアイサー、ともかく拠点は潰されましたわ」
焔の隣に立つ女も、怪訝そうに後を続ける。
「……決して表に出ないようしていたのですが、どうやって探り当てたのか不明です。残してきた手駒は、しばらく使えるはずですが……」
「……まあいいだろう。夜祖様のお言葉ではないが、相手は神人。あちらの最大戦力だ。一筋縄ではいくまい」
不知火はそう言って彼らへの追求を止めた。
「いよいよ仕上げの鹿児島攻めだ。あそこを火の海に出来れば、鎮西は御前様の手に取り戻せる」
「りょーかい、そんなら任せて下さいよ。今回の借りもあるんでね」
焔は自身満々で答えた。
「四国の情報もありますし、あっちの戦い方は分かってるんで、勝ち方も分かりますわ」
「……さっきやられた癖に。焔、あなた調子に乗りすぎよ?」
そんな一同と少し離れて、壁際に座する姿があった。
一人は筋肉質のがっしりした巨体。
もう一人は髪が長く、小柄な子供のような姿。
いずれも頭に角が生えており、つまりはあの剛角と紫蓮なのだった。
「……けっ、何やら楽しそうじゃのお」
剛角は足元の石を拾い、指で握りつぶしながらいじけている。
「戦じゃいうても、ワシらは護りと留守番だけ。酷い飼い殺しじゃ」
「しょうがないじゃろ、失敗した手前文句も言えんわ。鎧も直っておらんし、我慢せい剛角」
「分かっとるけど、暇で暇で」
剛角が尚もいじけていると、気付いた焔が声をかけた。
「悪いねえ、鬼のお二方。暇なら洗濯でもしといてくれ。青島に丁度いい洗濯岩があるだろ?」
「くうぅ~~~っ!!! 嫌味なやつじゃのお!」
「剛角、我慢じゃ!」
紫蓮に頭を叩かれる剛角だったが、焔はもう彼らに構っていなかった。
「そんじゃいきましょうか。鎮西最後の砦、鹿児島攻めの始まり始まり♪」
やがて地下深くから、不可思議な振動が伝わってくる。
大地を揺るがし、巨大な何かがこの地に向かってきているのだ。
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