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第二章その4 ~信じてほしいの!~ ガンコ才女の説得編
説得はオールスターで
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「……なるほど。それであなた達は、この人達と共闘したというわけね」
完全に落ち着きを取り戻した天草は、一同を見渡して呟いた。
「そうなんだ司令。いてっ! いてえよ湯香里……そうなんです、俺らもう少しでやられそうになってて」
「そーデス、物凄く助かったのデス!」
志布志隊の一同は、口々に訴えかけている。
誠や鶴と別れた後、どうしても心配になって、執務室まで押しかけてくれたのだ。
普段は大人しそうな八千穂も、白く巨大な袋を取り出し、必死の言葉を紡いでいる。
「こ、こここっ、この人達がいませんでしたら、私達も避難中の人も、みんなやられていたんです! ですからどうか、話を聞いて下さい! それとこれ、私が趣味で栽培してる果物と、日南海岸のモアイ像です!」
「え、モアイ? ちょ、ちょっとあなた、いくら何でも出しすぎよ」
袋から大量に現れる南国果実、そしてモアイのぬいぐるみに、天草は圧倒されている。
果物はテーブルから雪崩堕ち、室内を埋め尽くしたが、八千穂はまだ袋から取り出し続けた。
「お願いです、私は落ちぶれた身、何もお礼は出来ませんが、これ、私が日夜作り続けた、手彫りの弥五郎どん人形です!」
また別のぬいぐるみを取り出し始めた八千穂に勇気付けられたのか、鶴が再び調子に乗った。
「そう、みんなの言う通り、私はこう見えて真面目なのよ。きっと信用に値するわ」
鶴はぐいぐい天草に近寄る。
同時に無数のモアイと弥五郎どん人形が動き出し、ぐるりと天草の周りを囲んだ。
「えっ? えっ?」
うろたえる天草、果物を取り出し続ける八千穂、じりじりと囲みをせばめるぬいぐるみ達……
傍目にはとてつもなくシュールであるが、今は説得の成功を願うしかない。
「同じ日の本の人間だもの、ここは一つ、都合よく過去を忘れて協力しましょう! この窮状を救うにはそれしかないわ!」
鶴は実際に目から炎を出し、燃える心をアピールするが、天草はゆっくりと首を振った。
「…………事情は理解しました。けれど現時点で……認める事は出来ません」
天草は鶴の目を真っ直ぐに見つめた。
「私は他の船団の人に情報を提供できないし、あなた達を取り調べしないといけない。第5船団とは一度戦火を交えた以上、簡単に信用できないのよ……」
「まあ、けしからんわ! なんて頑固な娘っ子なのかしら!」
「いや待てヒメ子、天草さんの言う事はもっともだ。ここは一旦引こう」
誠は鶴の袖を引き、なんとか椅子に座らせた。
これ以上説得を続けても、今の彼女を説得するのは難しい。一度引き下がって、別の切り口を探した方がいいだろう。
鶴はなおもぷりぷり怒っていたが、八千穂に果物を貰ったため、辛うじて太刀を抜くまでには至らなかった。
「勿論避難中の人々を守ってくれた、あなた達の協力には感謝しています。でも問題は手続きなの。国と国、船団と船団の交渉とは、そういうものだから」
天草はそこまで言うと、手元の端末を操作する。
程無くして警邏の兵が数名、一同の部屋に辿り着いた。
「しばらく安全な場所に待機してもらい、その後第5船団に送還します。丁重に扱って頂戴」
「了解しました司令。さあ皆さん、こちらへ」
警邏兵の案内で、誠達は仕方なく執務室を後にしたのだ。
一人残った室内で、天草は考えていた。
テーブルを埋め尽くす丸い果物……マンゴーの甘い香り。
動かなくなったぬいぐるみ達。
色んな事が立て続けに起こって、少し頭が混乱している。
「………………悪い子達じゃ、ないのよね……」
立場上歓迎する事は出来なかったが、内心ではそう感じていたのだ。
天草は応接椅子を立つと、執務机に辿り着いた。
床の果物を潰さぬように椅子を引き、腰掛ける。
頭をぶつけた際に乱れたのか、両袖机の引き出しが、乱雑な積み木のように飛び出している。
一番上の、鍵のかかった引き出しを見つめ、天草はぎゅっと手を握り締める。
(……そうだ、私はあの男とは違う。私がなんとかしないと……!)
弱気を振り払うべく首を振ると、天草は再び資料を見つめ、勝利の可能性を模索し始めた。
もうすぐ血に飢えた巨大な活動死体……餓霊どもが押し寄せる。
それまでに、何としても希望の光を探さねばならないのだ。
完全に落ち着きを取り戻した天草は、一同を見渡して呟いた。
「そうなんだ司令。いてっ! いてえよ湯香里……そうなんです、俺らもう少しでやられそうになってて」
「そーデス、物凄く助かったのデス!」
志布志隊の一同は、口々に訴えかけている。
誠や鶴と別れた後、どうしても心配になって、執務室まで押しかけてくれたのだ。
普段は大人しそうな八千穂も、白く巨大な袋を取り出し、必死の言葉を紡いでいる。
「こ、こここっ、この人達がいませんでしたら、私達も避難中の人も、みんなやられていたんです! ですからどうか、話を聞いて下さい! それとこれ、私が趣味で栽培してる果物と、日南海岸のモアイ像です!」
「え、モアイ? ちょ、ちょっとあなた、いくら何でも出しすぎよ」
袋から大量に現れる南国果実、そしてモアイのぬいぐるみに、天草は圧倒されている。
果物はテーブルから雪崩堕ち、室内を埋め尽くしたが、八千穂はまだ袋から取り出し続けた。
「お願いです、私は落ちぶれた身、何もお礼は出来ませんが、これ、私が日夜作り続けた、手彫りの弥五郎どん人形です!」
また別のぬいぐるみを取り出し始めた八千穂に勇気付けられたのか、鶴が再び調子に乗った。
「そう、みんなの言う通り、私はこう見えて真面目なのよ。きっと信用に値するわ」
鶴はぐいぐい天草に近寄る。
同時に無数のモアイと弥五郎どん人形が動き出し、ぐるりと天草の周りを囲んだ。
「えっ? えっ?」
うろたえる天草、果物を取り出し続ける八千穂、じりじりと囲みをせばめるぬいぐるみ達……
傍目にはとてつもなくシュールであるが、今は説得の成功を願うしかない。
「同じ日の本の人間だもの、ここは一つ、都合よく過去を忘れて協力しましょう! この窮状を救うにはそれしかないわ!」
鶴は実際に目から炎を出し、燃える心をアピールするが、天草はゆっくりと首を振った。
「…………事情は理解しました。けれど現時点で……認める事は出来ません」
天草は鶴の目を真っ直ぐに見つめた。
「私は他の船団の人に情報を提供できないし、あなた達を取り調べしないといけない。第5船団とは一度戦火を交えた以上、簡単に信用できないのよ……」
「まあ、けしからんわ! なんて頑固な娘っ子なのかしら!」
「いや待てヒメ子、天草さんの言う事はもっともだ。ここは一旦引こう」
誠は鶴の袖を引き、なんとか椅子に座らせた。
これ以上説得を続けても、今の彼女を説得するのは難しい。一度引き下がって、別の切り口を探した方がいいだろう。
鶴はなおもぷりぷり怒っていたが、八千穂に果物を貰ったため、辛うじて太刀を抜くまでには至らなかった。
「勿論避難中の人々を守ってくれた、あなた達の協力には感謝しています。でも問題は手続きなの。国と国、船団と船団の交渉とは、そういうものだから」
天草はそこまで言うと、手元の端末を操作する。
程無くして警邏の兵が数名、一同の部屋に辿り着いた。
「しばらく安全な場所に待機してもらい、その後第5船団に送還します。丁重に扱って頂戴」
「了解しました司令。さあ皆さん、こちらへ」
警邏兵の案内で、誠達は仕方なく執務室を後にしたのだ。
一人残った室内で、天草は考えていた。
テーブルを埋め尽くす丸い果物……マンゴーの甘い香り。
動かなくなったぬいぐるみ達。
色んな事が立て続けに起こって、少し頭が混乱している。
「………………悪い子達じゃ、ないのよね……」
立場上歓迎する事は出来なかったが、内心ではそう感じていたのだ。
天草は応接椅子を立つと、執務机に辿り着いた。
床の果物を潰さぬように椅子を引き、腰掛ける。
頭をぶつけた際に乱れたのか、両袖机の引き出しが、乱雑な積み木のように飛び出している。
一番上の、鍵のかかった引き出しを見つめ、天草はぎゅっと手を握り締める。
(……そうだ、私はあの男とは違う。私がなんとかしないと……!)
弱気を振り払うべく首を振ると、天草は再び資料を見つめ、勝利の可能性を模索し始めた。
もうすぐ血に飢えた巨大な活動死体……餓霊どもが押し寄せる。
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