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第二章その1 ~九州が大変よ!?~ いよいよ助けに行きます編
落ち武者は落ちる前からあの髪型。単に兜を脱いだだけ
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「…………」
少し治まってきた頭痛に耐えながら、天草は立ち続けていた。
そんなこちらを気遣い、女性士官が話しかけてくる。
「あの、天草司令。少しお休みになられては如何でしょう」
少し彼女の頬が赤らんでいるのは、天草の外見が男装の麗人のようで、無意味に女性にモテるからだ。
それを防ぐべく、女性的になろうかと髪を伸ばしてみたが、癖の強い毛先はびょんびょん跳ねて、ますます力強い印象になっているのだ。
「……ありがとう、でも大丈夫。今は船団長も席を外してるし、何かあったら困るから」
天草は気丈に答えるのだったが、その時。
対策本部の巨大モニターに、いきなり女の子の顔が大映しになった。
「うっ、うわっ!?」
一同は驚いてひっくり返ったが、少女は構わず話し始める。
「初めまして、そしてこんにちは、私よ!」
「わ、私……???」
天草は冷や汗を流しながら、画面の少女を凝視した。
艶やかなセミロングの黒髪で、額には白いハチマキ。
空色の着物と古式ゆかしい鎧を着込み、表情は底抜けに晴れやかだった。
コスプレなのか悪ふざけなのかは分からないが、まともな相手でない事だけは確かだろう。
「誰か繋いだの?」
天草は隣の女性仕官に尋ねるが、彼女は無言でぷるぷる首を振っている。
「……イタズラか。こんな時に……いいから切って」
天草は冷静さを取り戻し、通信兵に指示を出した。
少女の顔は画面から消えたのだが……そこで一同は目を見開いた。
モニターがバリバリと放電すると、再び先程の少女が映し出されたのだ。
「まあ、失礼ね。まだ話の途中なのよ!」
少女はぷりぷり怒っている。
「き、切って!」
天草が叫ぶが、今度はいくら操作をしても、モニターの表示は切り替わらない。
しまいには、OFF操作をする通信兵の手に電気が走り、彼は悲鳴を上げてひっくり返った。
怪現象はそれだけで終わらず、兵員達の座席にある小型画面にも、次々少女が表示されていく。
「し、心霊現象みたいだな……」
「これがお迎えってやつなのか……」
「それじゃ今度の戦いは……」
一同は明らかに動揺している。
天草も内心穏やかではなかったのだが、自分までうろたえるわけにはいかない。
なんとか勇気を振り絞り、天草は少女に話しかけた。
「あ、あなたは誰? どうやってこの回線に入り込んだの?」
「私は三島大祝家に名だたる大祝鶴姫、戦国一のお洒落さんよ。八百万の神の使いかつ・由緒正しき聖者だから、回線なんて入り放題よ」
鶴と名乗った少女は、得意げにそう言ってのける。
「今は第5船団にいるんだけど、この船団も、つるちゃんの真面目な努力で勝利したの。だから私を信じれば、きっと勝利は間違いなしよ」
だがその時、少女の背後に、髪を振り乱した落ち武者のような少年が現れた。
少年は荒い呼吸で少女に駆け寄り、身振り手振りを交えて訴えかけた。
「ちょっと姫さん、約束が違うじゃないか!」
「うわっ香川!? お前どうやって来たんだよ?」
もう一人の少年が飛び出して止めるが、落ち武者?は尚もヒートアップしていた。
「普通に機体で飛んできたんだよ! それより俺の髪、髪どうなってるんだ!?」
「落ち着け香川、一年後、一年後には戻るんだって。それまでなんとか耐えればいいだろ? それも修行だと思えば」
「そ、それもそうだが……修行か。確かに……」
落ち武者は次第に落ち着きを取り戻していく。
「よっしゃ、それまでマゲでも結っとくんや」
画面に小さなキツネや牛が現れた、と思うと、手早く落ち武者の髪を結い上げていく。
長くそそり立つ髷を眺め、誰かが「殿……」と呟いた。
鎧姿の少女は、気を取り直して話を再開した。
「という事で、さっさと同盟を結びましょう。何度も言うけど、私と組めば勝利は間違いないんだから」
天草は若干引き気味に少女に答える。
「……さっきの落ち武者が、話が違うって言ってたけど?」
「それはそれ、これはこれよ。この者は後でうまいこと言いくるめておくから、今は私の話を聞いて欲しいの」
「と、とにかく、何度言っても駄目なものは駄目よ。消えないっていうんなら、物理的に配線を引っこ抜きます」
天草がそう言うと、少女はムムム、と唸っていたが、諦めて画面から消えていく。
だが少女は、消え様にとんでもない捨て台詞を残した。
「……また出直して来るわ」
「頼むから来ないで!!!」
天草は必死に叫んだが、その瞬間、頭痛が猛烈に悪化し、頭を押さえてよろけてしまう。
再び女性士官が気遣ってきた。
「大丈夫ですか司令。本当にお休みになった方が……」
さすがに強がる余裕も無く、天草は素直にその好意に甘えた。
「……ご、ごめん。すぐ戻るから」
少し治まってきた頭痛に耐えながら、天草は立ち続けていた。
そんなこちらを気遣い、女性士官が話しかけてくる。
「あの、天草司令。少しお休みになられては如何でしょう」
少し彼女の頬が赤らんでいるのは、天草の外見が男装の麗人のようで、無意味に女性にモテるからだ。
それを防ぐべく、女性的になろうかと髪を伸ばしてみたが、癖の強い毛先はびょんびょん跳ねて、ますます力強い印象になっているのだ。
「……ありがとう、でも大丈夫。今は船団長も席を外してるし、何かあったら困るから」
天草は気丈に答えるのだったが、その時。
対策本部の巨大モニターに、いきなり女の子の顔が大映しになった。
「うっ、うわっ!?」
一同は驚いてひっくり返ったが、少女は構わず話し始める。
「初めまして、そしてこんにちは、私よ!」
「わ、私……???」
天草は冷や汗を流しながら、画面の少女を凝視した。
艶やかなセミロングの黒髪で、額には白いハチマキ。
空色の着物と古式ゆかしい鎧を着込み、表情は底抜けに晴れやかだった。
コスプレなのか悪ふざけなのかは分からないが、まともな相手でない事だけは確かだろう。
「誰か繋いだの?」
天草は隣の女性仕官に尋ねるが、彼女は無言でぷるぷる首を振っている。
「……イタズラか。こんな時に……いいから切って」
天草は冷静さを取り戻し、通信兵に指示を出した。
少女の顔は画面から消えたのだが……そこで一同は目を見開いた。
モニターがバリバリと放電すると、再び先程の少女が映し出されたのだ。
「まあ、失礼ね。まだ話の途中なのよ!」
少女はぷりぷり怒っている。
「き、切って!」
天草が叫ぶが、今度はいくら操作をしても、モニターの表示は切り替わらない。
しまいには、OFF操作をする通信兵の手に電気が走り、彼は悲鳴を上げてひっくり返った。
怪現象はそれだけで終わらず、兵員達の座席にある小型画面にも、次々少女が表示されていく。
「し、心霊現象みたいだな……」
「これがお迎えってやつなのか……」
「それじゃ今度の戦いは……」
一同は明らかに動揺している。
天草も内心穏やかではなかったのだが、自分までうろたえるわけにはいかない。
なんとか勇気を振り絞り、天草は少女に話しかけた。
「あ、あなたは誰? どうやってこの回線に入り込んだの?」
「私は三島大祝家に名だたる大祝鶴姫、戦国一のお洒落さんよ。八百万の神の使いかつ・由緒正しき聖者だから、回線なんて入り放題よ」
鶴と名乗った少女は、得意げにそう言ってのける。
「今は第5船団にいるんだけど、この船団も、つるちゃんの真面目な努力で勝利したの。だから私を信じれば、きっと勝利は間違いなしよ」
だがその時、少女の背後に、髪を振り乱した落ち武者のような少年が現れた。
少年は荒い呼吸で少女に駆け寄り、身振り手振りを交えて訴えかけた。
「ちょっと姫さん、約束が違うじゃないか!」
「うわっ香川!? お前どうやって来たんだよ?」
もう一人の少年が飛び出して止めるが、落ち武者?は尚もヒートアップしていた。
「普通に機体で飛んできたんだよ! それより俺の髪、髪どうなってるんだ!?」
「落ち着け香川、一年後、一年後には戻るんだって。それまでなんとか耐えればいいだろ? それも修行だと思えば」
「そ、それもそうだが……修行か。確かに……」
落ち武者は次第に落ち着きを取り戻していく。
「よっしゃ、それまでマゲでも結っとくんや」
画面に小さなキツネや牛が現れた、と思うと、手早く落ち武者の髪を結い上げていく。
長くそそり立つ髷を眺め、誰かが「殿……」と呟いた。
鎧姿の少女は、気を取り直して話を再開した。
「という事で、さっさと同盟を結びましょう。何度も言うけど、私と組めば勝利は間違いないんだから」
天草は若干引き気味に少女に答える。
「……さっきの落ち武者が、話が違うって言ってたけど?」
「それはそれ、これはこれよ。この者は後でうまいこと言いくるめておくから、今は私の話を聞いて欲しいの」
「と、とにかく、何度言っても駄目なものは駄目よ。消えないっていうんなら、物理的に配線を引っこ抜きます」
天草がそう言うと、少女はムムム、と唸っていたが、諦めて画面から消えていく。
だが少女は、消え様にとんでもない捨て台詞を残した。
「……また出直して来るわ」
「頼むから来ないで!!!」
天草は必死に叫んだが、その瞬間、頭痛が猛烈に悪化し、頭を押さえてよろけてしまう。
再び女性士官が気遣ってきた。
「大丈夫ですか司令。本当にお休みになった方が……」
さすがに強がる余裕も無く、天草は素直にその好意に甘えた。
「……ご、ごめん。すぐ戻るから」
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