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第二章その1 ~九州が大変よ!?~ いよいよ助けに行きます編
言いたくない時は目で威圧する
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「………………聞きたい事とは何だ」
画面に映る女神・岩凪姫は、静かにそう尋ねた。
どこかの社の中なのだろうか。木造の室内には太鼓や幣帛など、沢山の神祭具の類が見える。
椅子に座り、頬杖をついてこちらを眺める岩凪姫は、さすがに日本神話の女神たる風格があって、そうした祭具がよく似合うのだった。
「そ、その……俺達が戦ってる相手について、教えて欲しいんです」
「ほう……?」
女神の視線が鋭くなったのを感じ、誠は身が固くなった。
普段の岩凪姫は、例え厳しい態度をとっても、どこかしら情けが感じられる。
だが今はそれが影を潜め、完全に拒絶の目になっているように思えるのだ。
誠は若干たじろいだが、何とか勇気を搾り出した。
「……い、以前あなたは、餓霊は魔界の怨霊が受肉したものだと言ってましたよね。それが地の底から湧き出したから、助けに来たと」
「そうだが」
「でも今回……いや前回も、餓霊と違う、言葉を喋る相手がいました。今回は鬼神族と名乗ってましたが……」
「そうか」
「あいつら、明らかに餓霊を指揮してたし、餓霊もあいつらの言う事は聞いてた。だからその、日本が滅茶苦茶になった10年前の始まりに、関係してるんじゃないかって思うんです」
「関係している、かも知れんな」
女神は表情を変えず、淡々と言葉を返すのみである。
誠は若干焦りながらポケットを探り、鬼が寄越した宝玉を取り出した。
「…………約定珠か」
女神は少し目線を動かして呟いた。
「再戦しろって、投げてきたんです。こんな儀礼とか、文化みたいなものがあるんなら、相手の規模はある程度大きいはず。だとすればこの戦いの背後に、もっとでかい何かがあるんじゃないかって思うんです」
「…………」
女神は無言だったが、誠は尚も食い下がった。
「その、お伽話みたいだけど……何か遠い昔から、この国の裏で起きてた事があって、父さんや高千穂研の人達は、それに巻き込まれただけなんじゃないかって」
「……その事をお前が知ってどうする」
「戦いの、役に立ちます。敵の正体が分からなければ、安心して戦えないし……分かっていれば、それなりの対処が出来ます」
「それは鳳や神使達の仕事だ。あれらが陰ながら人々を守る間、お前達が戦えばいい。全てを一人でこなす事は出来まい」
「……っ!」
誠は内心焦ったが、それでも引き下がらなかった。
「……で、でも知りたいんです! もしかしたら、父さん達高千穂研の人は無実かもしれない。だったら、その事を証明したいって思うんです……!」
「……やれやれ、やっと本音が出たか」
女神は少し語気を弱め、諭すように言葉を続ける。
「黒鷹よ。お前の気持ちは理解した。だが私は、お前に嫌がらせで黙っているわけではない。はっきり言えば、それを伝える権限が無いのだ」
「権限……?」
「そうだ。私はあくまで、国家総鎮守の父の代行……八百万の神々の総代で来ているのだ。私そのものに決定権があるわけではない」
女神は珍しく傍らの杯にも手を触れず、誠の目を見つめて語った。
「勿論、人の世の情報であれば、それをお前が調べるのは自由だ。だが人の分を超えた摂理を知るには、それなりの資格がいる」
「資格……ですか」
誠は女神の言葉を繰り返す。
女神は頷き、最後にこう念押しした。
「お前がこの先日の本を守り、多くの人々を守ったならば、真実を知る権利が与えられるだろう。だがいずれにしろ、今言える事はこれだけだ。何度聞いても結果は変わらぬぞ」
女神はそれだけ言うと、神器の画面から姿を消した。
画面に映る女神・岩凪姫は、静かにそう尋ねた。
どこかの社の中なのだろうか。木造の室内には太鼓や幣帛など、沢山の神祭具の類が見える。
椅子に座り、頬杖をついてこちらを眺める岩凪姫は、さすがに日本神話の女神たる風格があって、そうした祭具がよく似合うのだった。
「そ、その……俺達が戦ってる相手について、教えて欲しいんです」
「ほう……?」
女神の視線が鋭くなったのを感じ、誠は身が固くなった。
普段の岩凪姫は、例え厳しい態度をとっても、どこかしら情けが感じられる。
だが今はそれが影を潜め、完全に拒絶の目になっているように思えるのだ。
誠は若干たじろいだが、何とか勇気を搾り出した。
「……い、以前あなたは、餓霊は魔界の怨霊が受肉したものだと言ってましたよね。それが地の底から湧き出したから、助けに来たと」
「そうだが」
「でも今回……いや前回も、餓霊と違う、言葉を喋る相手がいました。今回は鬼神族と名乗ってましたが……」
「そうか」
「あいつら、明らかに餓霊を指揮してたし、餓霊もあいつらの言う事は聞いてた。だからその、日本が滅茶苦茶になった10年前の始まりに、関係してるんじゃないかって思うんです」
「関係している、かも知れんな」
女神は表情を変えず、淡々と言葉を返すのみである。
誠は若干焦りながらポケットを探り、鬼が寄越した宝玉を取り出した。
「…………約定珠か」
女神は少し目線を動かして呟いた。
「再戦しろって、投げてきたんです。こんな儀礼とか、文化みたいなものがあるんなら、相手の規模はある程度大きいはず。だとすればこの戦いの背後に、もっとでかい何かがあるんじゃないかって思うんです」
「…………」
女神は無言だったが、誠は尚も食い下がった。
「その、お伽話みたいだけど……何か遠い昔から、この国の裏で起きてた事があって、父さんや高千穂研の人達は、それに巻き込まれただけなんじゃないかって」
「……その事をお前が知ってどうする」
「戦いの、役に立ちます。敵の正体が分からなければ、安心して戦えないし……分かっていれば、それなりの対処が出来ます」
「それは鳳や神使達の仕事だ。あれらが陰ながら人々を守る間、お前達が戦えばいい。全てを一人でこなす事は出来まい」
「……っ!」
誠は内心焦ったが、それでも引き下がらなかった。
「……で、でも知りたいんです! もしかしたら、父さん達高千穂研の人は無実かもしれない。だったら、その事を証明したいって思うんです……!」
「……やれやれ、やっと本音が出たか」
女神は少し語気を弱め、諭すように言葉を続ける。
「黒鷹よ。お前の気持ちは理解した。だが私は、お前に嫌がらせで黙っているわけではない。はっきり言えば、それを伝える権限が無いのだ」
「権限……?」
「そうだ。私はあくまで、国家総鎮守の父の代行……八百万の神々の総代で来ているのだ。私そのものに決定権があるわけではない」
女神は珍しく傍らの杯にも手を触れず、誠の目を見つめて語った。
「勿論、人の世の情報であれば、それをお前が調べるのは自由だ。だが人の分を超えた摂理を知るには、それなりの資格がいる」
「資格……ですか」
誠は女神の言葉を繰り返す。
女神は頷き、最後にこう念押しした。
「お前がこの先日の本を守り、多くの人々を守ったならば、真実を知る権利が与えられるだろう。だがいずれにしろ、今言える事はこれだけだ。何度聞いても結果は変わらぬぞ」
女神はそれだけ言うと、神器の画面から姿を消した。
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