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第一章
仮面舞踏会
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結局、デティは、準備や諸々で聖十二騎士の仕事に手を付けることもできず、舞踏会当日を迎えた。
この日のために急いで準備したドレスは薄い青色で、飾りも少なく落ち着いた感じに仕上がった。薄い絹を重ねて軽さを出し、その袖はレースで飾られており、胸元には生地と同色のビーズで飾りがつけられている。最低限の華やかさを施しつつ、流行のドレスよりは装飾を押さえたものだ。デティとしてはあまり目立ちたくないという思いだったのだが、逆にそれが、デティの清楚さを引き立てていた。
特にその黒い髪は、半分を結い上げ、残りを背中に流したままのスタイルである。腰に届くほどの長さの髪は、ふわりとしたドレスと対照的に、デティの印象を引き締めている。そんな黒髪に金粉を散らし、金や銀の装飾で飾りをつけていた。さらに、普段はしない化粧をし、準備を整える。
デティが鏡を振り返ると、そこにいたのは別人だった。綺麗だとは思ったが、その雰囲気は、表情の見えにくい灰色の瞳が冷たく近寄りがたいものに変えている。その瞳の色は、自分で見てもどこか人間らしさが欠けているようだった。
そんな風にじっと、鏡を見つめていたデティだが、ノックの音がして、鏡から目を逸らす。
「デティ、準備はできたかい?」
入ってきたのは、クラストだった。クラストは、ドレス姿のデティを見て、一瞬息を飲む。その蒼い瞳を揺らして何かを言いかけたが、思い直したように息をついた。そして、どこか恥ずかしそうに微笑む。
「綺麗だよ」
そう言う、クラストにデティは微笑み返した。
「ありがとう」
「そろそろ時間だ。行こう」
「うん」
デティはクラストと連れだって屋敷を出た。
城での仮面舞踏会は年に二回。春と秋の満月の日に行われる。その夜の月は、厚い雲に隠れて見えなかった。
城の本宮につき、馬車を降りた二人は、そのまま、控えの間へと案内された。高位貴族とされる者たちは、そのまま会場の大広間へ行くことはなく、まず、控えの間という、その家の者だけが使える部屋へと行く。そこで、服装を直し、開会直前に来る案内を待つのだ。また、舞踏会に疲れた時に何時でもこの部屋で休む事ができる。
そんな控えの間の質は家柄に比例する。もちろん、ブルーフィス家の控えの間は、とても広い。そして、大広間まで向うには遠くなく、だからと言って喧騒が伝わってくるほど近くもない。立地にしても、調度品にしても、最高級のものだった。
デティとクラストが着いたときには、すでに、普通の貴族たちは、会場に集まっているらしく、王宮の廊下を行き交う人も慌ただしかった。あまり待たずに案内があり、デティとクラストは仮面をつけ、二人で会場である大広間に向かった。
大広間は、大勢の人間の熱気で満ちていた。あふれる音、気配、匂いにデティは酔いそうだった。クラストの案内で、広間の奥の方に向かう。こういう無礼講の舞踏会であっても、身分によって、習慣的に集まる場所がある。中でも、ブルーフィス家を筆頭とする高位貴族たちは、一般的に入口から一番遠くに集まる。つまり、奥に行けば行くほど、知り合いが増えるわけだ。
ある程度、奥にきたところで、同じように仮面をつけた男性が近付いてきた。
「おや、お前が仮面舞踏会に来るなんて珍しいな」
どうやら、クラストの友人らしく、クラストも彼と挨拶を交わした。そして、クラストの知り合いが集まっているという場所まで連れて行ってもらった。そこには、数人の若い男性(見るからに貴族の御曹司だ)が集まっていた。その全員が、クラストの学院時代の級友だそうだ。
「で、クラスト。そちらの女性のことを聞いても?」
その中の一人が、デティに気付き、クラストに訊いた。仮面舞踏会という性質上、基本的には見知らぬ相手の立場や名前は聞かないルールだ。しかし、クラストが全く手放さない様子からどうしても気になったらしい。
「この子は、妹だよ」
「ああ、例の妹さん」
彼らは、納得したようにうなずいた。どうやら、みんな、デティのことを少なからず、クラストから聞いているようだ。
何人かは、デティにも声を掛け、少し話をしたが、取り立てて話題もなく、世間話や噂話ばかりだった。そうやって、クラストのそばで話をしたりしなかったりで、だいぶ時間が過ぎた。
デティの年では、級友もほとんどが、来ていないだろうから、特にすることもなかった。しかも、慣れない人込み、そして、匂いや音に、デティは疲れてきた。
やはり、こういう場は性に合わないな、と思いながら、クラストに声を掛ける。
「ちょっと疲れたから椅子に座って休んでるわ」
この舞踏会は、基本的に立食形式だ。しかし、疲れた人ように、窓とは反対の壁際に、椅子が並べてあり、誰でも座れるようになっているのだ。
「大丈夫? 控えの間に戻るかい?」
「いいえ、少し休めば大丈夫だから」
「僕も行くよ」
「兄様は、お友達とお話があるでしょう。一人で休めるわ」
「でも……」
まだ何か言いたそうなクラストを振り切って、デティは、壁際に歩いて行った。
クラストも、さすがに追うことはせず、心配そうに見ていたが、すぐに友人に呼ばれ、仕方無く、デティから目を離した。
「ふう」
壁際の椅子に腰を下ろしたデティは、息を吐いて、会場を見渡した。
広間の中央では、数人の男女が、楽団の奏でる舞曲に合わせて踊っている。その回りを取り囲むように、人々が食事し、談笑している。
デティは、そのな中に、ふと、見覚えのある人を見つけた。仮面は着けているが、そのしぐさ、身のこなしで何となく分かる。その人は、どこかの貴族の令嬢か、美しく着飾った女性と楽しそうに話していた。
ヴィスコンティだった。見つけた場所がらしいと言うか、なんと言うか。
しかし、そんなヴィスコンティのようすに、引っ掛かりをおぼえた。令嬢と親しげに話しているようで、その意識が他を向いている。その意識の向く方に目をやって、デティはそっと息を飲んだ。
クリプスト男爵だ。
目許を隠す赤いマスクをしていたが、デティには分かった。その気配が、他の人と明らかに違うのだ。それは、何だか、怖くなるような気配だった。
男爵から目を背けたデティは、そのまわりに良く知った人々をみつけた。
ギアツ、アイアス、そして、ルシスだ。
仮面をつけているとは言っても、はっきりと分かる。結局、仮面など形式にすぎないのだ。知っている人が見れば、誰だって分かってしまうように思えた。彼らもやはり、男爵を見張っているのだろう。しかし、いくら捜しても、ラウルの姿はなかった。もしかしたら、他の場所で、皆をまとめているのかもしれない。
少し、残念だった。
この前会った時は、叱られ、その前は、自分が八つ当たりのような事をしてしまった。ここで会ったなら、謝ろうと思っていたのだが。
そう、うまくはいかないらしい。
そう思った時だった。
不意に、デティの前に誰かが立った。クラストかと思ったが、服装が違う。
知り合いはいないはずだと考えていたが、そうでもなかったのか。
デティがそう考えていると、その人は、デティに話しかけてきた。
「あなたのような美しいレディが、お一人ですか?」
その声を聞いて、デティは驚いた。次いで、微笑する。その言葉が、あまりにもいつもの彼にそぐわなかったからだ。
「あら、あなたをお待ちしていたのですよ。騎士長様」
そう返すと、彼も小さく笑った。
「やっぱり、わかるか?」
「当たり前よ。声を聞いて分からない分けないでしょ」
そう答えると、彼――ラウルは苦笑した。そんなラウルに構わず、デティは話を逸らす。
「みんなは、彼を見張っているの?」
「気付いたか。この後、彼を捕縛するんだ。陛下からの許可が出たからな」
「証拠は?」
「ヴィットが男爵の屋敷に仕えている侍女から聞き出した。……そういうことは得意だからな、あいつ」
デティは、何となく納得して苦笑した。
「……デティ、君は手を出さないでくれよ」
心配そうにラウルは言った。
「わかってるわ。私には、他に役割があるしね」
「役割?」
不思議そうに首をかしげるラウルに、デティは楽しげに言った。
「そう、妖魔を封じることができるのは私だけでしょ」
その答えを聞いたラウルは安心したように微笑した。
「そうだな。その力が使えるのは君だけだからな。そこは任せるしかない。だが、なるべく危ないことはしないでくれよ?」
「わかってるわ」
デティがそう答えると、ラウルは不意に片手を差し出した。意味が分からず、デティが首を傾げるとラウルは笑って言った。
「約束の印に、一曲踊っていただけませんか? 姫君」
その問いにデティは思わず微笑み、手を取った。
「よろこんで」
ラウルはデティをダンスフロアーまで導く。曲は途中だったが、二人はすぐに流れに乗った。
もとが身のこなしの軽い二人である。二人の踊りは軽やかで、無駄がない。その上、デティが動く度に、その美しい黒髪が踊るのだ。周りで見ていた人達は、その美しさに目を奪われた。
一曲終わる頃には、会場中の視線が二人に向けられていた。なぞの美男美女のカップルが誰だか、その話で持ち切りだった。
踊り終えた二人は、そんな周りに気付きもせず、中央から端の人込みに紛れた。
この日のために急いで準備したドレスは薄い青色で、飾りも少なく落ち着いた感じに仕上がった。薄い絹を重ねて軽さを出し、その袖はレースで飾られており、胸元には生地と同色のビーズで飾りがつけられている。最低限の華やかさを施しつつ、流行のドレスよりは装飾を押さえたものだ。デティとしてはあまり目立ちたくないという思いだったのだが、逆にそれが、デティの清楚さを引き立てていた。
特にその黒い髪は、半分を結い上げ、残りを背中に流したままのスタイルである。腰に届くほどの長さの髪は、ふわりとしたドレスと対照的に、デティの印象を引き締めている。そんな黒髪に金粉を散らし、金や銀の装飾で飾りをつけていた。さらに、普段はしない化粧をし、準備を整える。
デティが鏡を振り返ると、そこにいたのは別人だった。綺麗だとは思ったが、その雰囲気は、表情の見えにくい灰色の瞳が冷たく近寄りがたいものに変えている。その瞳の色は、自分で見てもどこか人間らしさが欠けているようだった。
そんな風にじっと、鏡を見つめていたデティだが、ノックの音がして、鏡から目を逸らす。
「デティ、準備はできたかい?」
入ってきたのは、クラストだった。クラストは、ドレス姿のデティを見て、一瞬息を飲む。その蒼い瞳を揺らして何かを言いかけたが、思い直したように息をついた。そして、どこか恥ずかしそうに微笑む。
「綺麗だよ」
そう言う、クラストにデティは微笑み返した。
「ありがとう」
「そろそろ時間だ。行こう」
「うん」
デティはクラストと連れだって屋敷を出た。
城での仮面舞踏会は年に二回。春と秋の満月の日に行われる。その夜の月は、厚い雲に隠れて見えなかった。
城の本宮につき、馬車を降りた二人は、そのまま、控えの間へと案内された。高位貴族とされる者たちは、そのまま会場の大広間へ行くことはなく、まず、控えの間という、その家の者だけが使える部屋へと行く。そこで、服装を直し、開会直前に来る案内を待つのだ。また、舞踏会に疲れた時に何時でもこの部屋で休む事ができる。
そんな控えの間の質は家柄に比例する。もちろん、ブルーフィス家の控えの間は、とても広い。そして、大広間まで向うには遠くなく、だからと言って喧騒が伝わってくるほど近くもない。立地にしても、調度品にしても、最高級のものだった。
デティとクラストが着いたときには、すでに、普通の貴族たちは、会場に集まっているらしく、王宮の廊下を行き交う人も慌ただしかった。あまり待たずに案内があり、デティとクラストは仮面をつけ、二人で会場である大広間に向かった。
大広間は、大勢の人間の熱気で満ちていた。あふれる音、気配、匂いにデティは酔いそうだった。クラストの案内で、広間の奥の方に向かう。こういう無礼講の舞踏会であっても、身分によって、習慣的に集まる場所がある。中でも、ブルーフィス家を筆頭とする高位貴族たちは、一般的に入口から一番遠くに集まる。つまり、奥に行けば行くほど、知り合いが増えるわけだ。
ある程度、奥にきたところで、同じように仮面をつけた男性が近付いてきた。
「おや、お前が仮面舞踏会に来るなんて珍しいな」
どうやら、クラストの友人らしく、クラストも彼と挨拶を交わした。そして、クラストの知り合いが集まっているという場所まで連れて行ってもらった。そこには、数人の若い男性(見るからに貴族の御曹司だ)が集まっていた。その全員が、クラストの学院時代の級友だそうだ。
「で、クラスト。そちらの女性のことを聞いても?」
その中の一人が、デティに気付き、クラストに訊いた。仮面舞踏会という性質上、基本的には見知らぬ相手の立場や名前は聞かないルールだ。しかし、クラストが全く手放さない様子からどうしても気になったらしい。
「この子は、妹だよ」
「ああ、例の妹さん」
彼らは、納得したようにうなずいた。どうやら、みんな、デティのことを少なからず、クラストから聞いているようだ。
何人かは、デティにも声を掛け、少し話をしたが、取り立てて話題もなく、世間話や噂話ばかりだった。そうやって、クラストのそばで話をしたりしなかったりで、だいぶ時間が過ぎた。
デティの年では、級友もほとんどが、来ていないだろうから、特にすることもなかった。しかも、慣れない人込み、そして、匂いや音に、デティは疲れてきた。
やはり、こういう場は性に合わないな、と思いながら、クラストに声を掛ける。
「ちょっと疲れたから椅子に座って休んでるわ」
この舞踏会は、基本的に立食形式だ。しかし、疲れた人ように、窓とは反対の壁際に、椅子が並べてあり、誰でも座れるようになっているのだ。
「大丈夫? 控えの間に戻るかい?」
「いいえ、少し休めば大丈夫だから」
「僕も行くよ」
「兄様は、お友達とお話があるでしょう。一人で休めるわ」
「でも……」
まだ何か言いたそうなクラストを振り切って、デティは、壁際に歩いて行った。
クラストも、さすがに追うことはせず、心配そうに見ていたが、すぐに友人に呼ばれ、仕方無く、デティから目を離した。
「ふう」
壁際の椅子に腰を下ろしたデティは、息を吐いて、会場を見渡した。
広間の中央では、数人の男女が、楽団の奏でる舞曲に合わせて踊っている。その回りを取り囲むように、人々が食事し、談笑している。
デティは、そのな中に、ふと、見覚えのある人を見つけた。仮面は着けているが、そのしぐさ、身のこなしで何となく分かる。その人は、どこかの貴族の令嬢か、美しく着飾った女性と楽しそうに話していた。
ヴィスコンティだった。見つけた場所がらしいと言うか、なんと言うか。
しかし、そんなヴィスコンティのようすに、引っ掛かりをおぼえた。令嬢と親しげに話しているようで、その意識が他を向いている。その意識の向く方に目をやって、デティはそっと息を飲んだ。
クリプスト男爵だ。
目許を隠す赤いマスクをしていたが、デティには分かった。その気配が、他の人と明らかに違うのだ。それは、何だか、怖くなるような気配だった。
男爵から目を背けたデティは、そのまわりに良く知った人々をみつけた。
ギアツ、アイアス、そして、ルシスだ。
仮面をつけているとは言っても、はっきりと分かる。結局、仮面など形式にすぎないのだ。知っている人が見れば、誰だって分かってしまうように思えた。彼らもやはり、男爵を見張っているのだろう。しかし、いくら捜しても、ラウルの姿はなかった。もしかしたら、他の場所で、皆をまとめているのかもしれない。
少し、残念だった。
この前会った時は、叱られ、その前は、自分が八つ当たりのような事をしてしまった。ここで会ったなら、謝ろうと思っていたのだが。
そう、うまくはいかないらしい。
そう思った時だった。
不意に、デティの前に誰かが立った。クラストかと思ったが、服装が違う。
知り合いはいないはずだと考えていたが、そうでもなかったのか。
デティがそう考えていると、その人は、デティに話しかけてきた。
「あなたのような美しいレディが、お一人ですか?」
その声を聞いて、デティは驚いた。次いで、微笑する。その言葉が、あまりにもいつもの彼にそぐわなかったからだ。
「あら、あなたをお待ちしていたのですよ。騎士長様」
そう返すと、彼も小さく笑った。
「やっぱり、わかるか?」
「当たり前よ。声を聞いて分からない分けないでしょ」
そう答えると、彼――ラウルは苦笑した。そんなラウルに構わず、デティは話を逸らす。
「みんなは、彼を見張っているの?」
「気付いたか。この後、彼を捕縛するんだ。陛下からの許可が出たからな」
「証拠は?」
「ヴィットが男爵の屋敷に仕えている侍女から聞き出した。……そういうことは得意だからな、あいつ」
デティは、何となく納得して苦笑した。
「……デティ、君は手を出さないでくれよ」
心配そうにラウルは言った。
「わかってるわ。私には、他に役割があるしね」
「役割?」
不思議そうに首をかしげるラウルに、デティは楽しげに言った。
「そう、妖魔を封じることができるのは私だけでしょ」
その答えを聞いたラウルは安心したように微笑した。
「そうだな。その力が使えるのは君だけだからな。そこは任せるしかない。だが、なるべく危ないことはしないでくれよ?」
「わかってるわ」
デティがそう答えると、ラウルは不意に片手を差し出した。意味が分からず、デティが首を傾げるとラウルは笑って言った。
「約束の印に、一曲踊っていただけませんか? 姫君」
その問いにデティは思わず微笑み、手を取った。
「よろこんで」
ラウルはデティをダンスフロアーまで導く。曲は途中だったが、二人はすぐに流れに乗った。
もとが身のこなしの軽い二人である。二人の踊りは軽やかで、無駄がない。その上、デティが動く度に、その美しい黒髪が踊るのだ。周りで見ていた人達は、その美しさに目を奪われた。
一曲終わる頃には、会場中の視線が二人に向けられていた。なぞの美男美女のカップルが誰だか、その話で持ち切りだった。
踊り終えた二人は、そんな周りに気付きもせず、中央から端の人込みに紛れた。
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