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仲間

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「…あれ?」
目を開けるとそこは病院?のような場所だった。

「良かったぁ…生きてて」
隣からシエルの安堵する声が聞こえた。
体が思うように動かなかったが、なんとか起き上がろうとするとシエルは「安静にしてなよ」と肩を叩かれ、医者を呼んだ。

医者には脈を測られ、「調子はどうですか?」と聞かれたので「とりあえず、元気です」と伝えると「リハビリを兼ねてから帰りましょうか」と日本の医者とほとんど変わらない対応をされたので、少し感動した。

医者が部屋から出ていくとシエルが俺の眠っていた時に何があったのか教えてくれた。

「まぁ、あんたは3日間も眠ってたわけだ。
その間に、燃えていた家の火は鎮火されて、被害者はあんたのおかげで0人だったよ。」

シエルに褒められて少し嬉しくなった。
すると、部屋のドアをノックする音が聞こえ、シエルが代わりに出ると、俺が助けた女の子と両親が訪ねてきた。

「おにーさん!」
と女の子は駆け寄ってくると、いくつものリンゴを持ってきてくれた。

「おぉ、ありがとうね」
と頭を撫でてあげると、嬉しそうに笑顔になっていた。

「本当にありがとうございました」と両親が頭を下げ
ていたので「いえいえ、大丈夫ですよ」と答えた。

少し雑談した後、女の子とその家族がが手を振り部屋を後にした。

「俺は無能だけど、あの子の命を救うことは出来たんだな」

「まぁ、それはあんたの心の強さ次第じゃない?
それが、今後のあんたに強く影響していくけどね」

シエルは持っていたカバンの中から紙を出してきた。

「これ…前に調べた冒険者のランクのやつなんだけど」

紙を眺めると冒険者のランクがZからEに上がっている。どうして上がったのかシエルに尋ねた。
「冒険者のランクを上げるには、魔物を倒すことだけじゃなくて、貢献度を上げることも大事なんだ。前にあの子を助けたみたいに人助けをたくさんすればそれなりにランクも上がっていくんだよ」

シエルは時計を確認すると、机に置いてあった紙をカバンにしまった。
「ごめんねもう少しゆっくり話したかったけど、私も仕事があるから…」

そしてシエルは去り際に「おだいじにー」と一言添えて部屋から出ていった。

先程まで話し相手がいた部屋には沈黙の時が流れた。
空いた窓から流れるすきま風が気持ちよく感じ、生きていることを実感させた。

「こんにちは…」
そっと部屋に入ってきた人から挨拶されたので振り向くと、そこには俺と同じく、入院している方だった。

「こんにちは」
彼はお辞儀をすると、俺の隣に置いてあるベットに入った。
彼の身体は歴戦の強者のような屈強で腕や首、そして顔にも切り傷が刻まれていた。

「あなたも冒険者の方なんですか?」
聞いてみると彼は「昔はそうでしたが、今は野菜とか売ってる農家ですよ」と気さくに答えてくれた。

「あなたも…ということはあなた自身も冒険者なんですか?」

「いえ…俺はただの無能なサラリーマンですよ」

サラリーマンという言葉を初めて聞いた彼が少し戸惑っていたので適当にお茶を濁した。

「そういえば冒険者ランクとかってどのくらいでした?」

と尋ねると「いえいえお恥ずかしいので」と遠慮していたので、もしかしたら俺と同じで低い人なのかもな
と思い「俺もあなたと同じくらいだと思うので、全然恥ずかしいことないですよ!」と励ますような感じで言うと「そうですか!」と彼の気分は高揚し、答えてくれることになった。

「私の冒険者ランクはAでしたよ」
その言葉に目を丸くした。
低いと勘違いしていた自分が恥ずかしくなった。

「それで…あなたのランクは…Aですか?」
おもむろに首を振ると「じゃあAよりのBだとか…?」
それに対して首を振ると彼はまた混乱していた。

とりあえず誤解を解こうと思い事実を話した。
「俺は…その…Eです…」
ボソッとした声で答えると
すると彼は大笑いした。
恥ずかしさのあまり、もうこの部屋から出ていきたくなっていた。

「すみません…先程の赤髪の女の子との話を盗み聞きしてたので、本当はあなたのランクも知ってたんですけど…まさかそんな反応するとは…」

「あぁ、そうだったんですね…」
とりあえず愛想笑いをしていたが内心は本気で泣きたくなっていた。

「でも凄いですよね、火事の中見ず知らずの女の子を助けるために突っ込むなんて、私には出来ませんよ」
と彼は感心していた。

「なぜそれを知ってるんですか…?」

「もう町の噂になってますからね、新しい英雄候補だ、とか言っている人も病院の中にいましたからね」

「それは嬉しい限りです」と鼻を伸ばしていると、彼は机に置いてあった写真立てを覗いた。

「きっとあなたみたいな誠実で勇敢のある、冒険者が多ければ、あんな悲惨な事件は起こらなかっただろうに…」

彼は寂しい表情を浮かべながら、写真立てを伏せた。

「過去に何かあったんですか?」
何も知らなかった俺は彼に事件の内容について尋ねると彼は口を閉じた。
その事が彼の古傷を広げてしまうような気がしたのですかさず「すみません、不謹慎な事を聞いてしまって…」と謝罪したが、彼は話し始めてくれた。

「あれは5年前の事でしたね。当時ある魔物が大量発生し、被害に遭う人が増えたんです。
その魔物を倒すために、ある英雄が町の外れにある村を囮に使い、魔物を全滅させようと計画を立てたんです。しかし、思っていた以上に勝手に囮にされた村の人々が魔物に襲われ、亡くなってしまったんです。
誰が考えてもそんな事は起こり得るとわかるはずなのに、実行してしまったのは、英雄という称号への信頼と裏で積まれた金です。
 そして、他の冒険者も報酬額が多いためたくさんの人が名を挙げました。
作戦に反対するものは、私とその村の住民しかいませんでした。
そして、実行された作戦に巻き込まれないよう村の住民を避難させようとしましたが、魔物の動きの早さ
によって避難民もすべてよし亡くなってしまったんです」

彼は写真に顔を近づけて涙を流した。

「なんで…あんなこと…」
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