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14 老狼の語り。

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 「…じ、じぃ…何をする…俺も…父上とともに…」

ガクッ

 私は、オークの襲撃からアレク様を護るため洞窟へ無理やり避難させました。


 森は轟々と火を上げ、正気を失ったオークの集団はなりふり構わず暴れていました。血の雨が降り、響き渡る動物たちの咆哮と呻き。

 森の仲間たちも戦えるものは戦いました。家族と森を護りたい一心で。

 どのように戦い、どのようにオークを殲滅させたのか記憶は定かではありません。

 戦場での最後の記憶はただ1つ。オークと仲間たちの屍の上に、アレク様の父上が狼となり4本足でたたれている姿です。

 既に息は絶えておりました。

 背には洞窟のある丘を護るように…。
 

 気がつけば夜が明けていました。遠くから若き狼の遠吠えが聞こえてきました。

 私は頭からの失血が酷く意識を失い、それからひと月程経った頃目を覚ましました。
 避難させていた洞窟で保護されていた私は、目を覚ました時に初めてアレク様が1人旅立たれたと知りました。

 私は後悔しか残りませんでした。アレク様を父君と離れ離れにさせてしまったこと、国王を護れなかったこと。



 そして、傷が癒えた頃私も旅立ったのです。そこには目的がありました。まずはオークの襲撃の原因を探ること、魔窟の封印を解いた奴がいるはずだと…。

 ランピエーヌの森を壊滅に追い込んだ奴を突き止める、仇を打つために。私は命尽きるまで諦めない覚悟でございました。

 幸い私の特殊能力は嗅覚に特化していて、僅かな臭いも辿ることができるのです。オークの住処だった魔窟にたどり着いた私は、人の匂いを嗅ぎ分けたのでした。

「魔窟の住人とは違う匂い、この森の奥深くにあるこの場所に人の気配とは…怪しい…」
 そう思った私は、次にこの人の匂いを辿ることにしました。複数人の匂い、高貴な香水の匂いや魔法薬の匂いが入り交じったようだと感じました。

「おそらく、何処かのパーティだな…魔窟の秘宝荒らしか…封印された魔窟を荒らすことは非合法活動のはずだ…

ギルド発注の仕事であればこのような荒らし方をするはずが無い。」


そして、私は僅かな匂いを頼りにそのパーティを突きとめたのです。




たどり着いたそこはトリノ王国宮殿…。

そう、あなたの元婚約者ペデロ王太子、奴が高貴な香水を纏ったパーティのリーダーだったのです。


 ペデロの素行調査を開始しました。まだ10代だった彼は封じられた魔窟荒らしをしていたのです、そこで得た秘宝を見せびらかしたり、売りさばいて遊び歩いておりました。
 素行の悪さが問題になるとトリノ王国が全力で揉み消しにかかっていたのです。それゆえ表沙汰にはなりませんでした。国王は甘やかすばかり、側近は見て見ぬふり。秩序維持がなされぬだけでは無い、若気の至りで許される所業ではございません。


 あなたの元婚約者ペデロは、そのような男です。
 私は許しません。奴の息の根をこの手で止めてみせます。




アレクは静かに聞いていた。

しかし、その瞳は燃えるような赤色をしていた。

 
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