4 / 14
胸、ザワつく夜
しおりを挟む
ギムレットは、メイファを抱き上げたまま部屋を移動した。
ベッドへ押し倒されると思った…。
(ここへ来ると決めた時から覚悟は出来てる…大丈夫…)
メイファは、目をギュッと閉じて身体を硬くした。
しかし、ギムレットはそうはせず、メイファを抱き上げたままベランダへ出た。
『見てごらんなさい、この景色を…』
夕焼けで赤く染った砂漠が遠く地平線まで続いている。
宮殿の周りは緑が生い茂って水源もあるが、それ以外のほとんどがカラカラに乾いた砂の世界である。
『私は、このデューク王国を少しでも緑豊かな国にしたい。馬鹿げてるとお思いになるかな?』
遠く地平線を見つめる真剣な眼差しのギムレットに見とれてしまっていたメイファ。
「…いえ、王国を率いるものとして、国を豊かにしようとすることは最も大切なことですわ」
『そうか…ケイトがそう言ってくれると心強い。伴侶として共にこの国の発展に務めてほしい。』
ギムレットは、ゆっくりとメイファを下ろして、肩を抱いた。
メイファも身を委ねるようにしてギムレットに寄り沿った。
静かな時間がすぎた。
『そろそろ冷えてきたね。砂漠の夜は意外と寒い、今日はゆっくり寝てくれ』
頭をポンポンと撫で、フフッと笑い、
『そう身構えなくともよい』
『望むところだわって…一体何を想像してるんだい…フフ』
そう言い残して笑いながらギムレットは部屋を出ていった。
かかって来い!と言わんばかりに身構えていただけに、肩透かしを食らったような気持ちだった。
同時に安心して力が抜けた…。
ベッドに突っ伏して今日一日のことを振り返っていた。
あれが悪評高いデューク王国のギムレット王子…私の夫となる男。
想像していたような野蛮な男ではなかった…
むしろ……。
あの瞳、あの指先、あの香り……。
思い出すと胸がザワつくようだった。
あぁ…いけないわ。
惑わされてはいけない!
あの男は祖国の敵!
私は、滅亡の危機にある祖国パナギア王国を陥れたデューク王国を許さない。
必ず復讐してやるんだ…。
きっと裏の顔があるはず、必ずやその本性を暴き、陰謀の数々を白日のもとに晒してやる。
まずはケイトとして受け入れてもらえたようだわ。
でも油断禁物ね。
……
ケイト姉様…
お元気かしら、また体調悪くされてないかしら…。
どうかアレクと幸せになって…。
明日から婚礼の儀式、三日三晩続くと言っていたわ…この慌ただしい中でさすがの私も耐えられるかしら。
ケイト姉様…会いたい…。
あの澄み渡った空の下で笑いたい…。
ホームシックで涙がこぼれ落ちたのが先か、眠りについたのが先か…分からないほどにスゥーーーッと眠ってしまったのであった。
ベッドへ押し倒されると思った…。
(ここへ来ると決めた時から覚悟は出来てる…大丈夫…)
メイファは、目をギュッと閉じて身体を硬くした。
しかし、ギムレットはそうはせず、メイファを抱き上げたままベランダへ出た。
『見てごらんなさい、この景色を…』
夕焼けで赤く染った砂漠が遠く地平線まで続いている。
宮殿の周りは緑が生い茂って水源もあるが、それ以外のほとんどがカラカラに乾いた砂の世界である。
『私は、このデューク王国を少しでも緑豊かな国にしたい。馬鹿げてるとお思いになるかな?』
遠く地平線を見つめる真剣な眼差しのギムレットに見とれてしまっていたメイファ。
「…いえ、王国を率いるものとして、国を豊かにしようとすることは最も大切なことですわ」
『そうか…ケイトがそう言ってくれると心強い。伴侶として共にこの国の発展に務めてほしい。』
ギムレットは、ゆっくりとメイファを下ろして、肩を抱いた。
メイファも身を委ねるようにしてギムレットに寄り沿った。
静かな時間がすぎた。
『そろそろ冷えてきたね。砂漠の夜は意外と寒い、今日はゆっくり寝てくれ』
頭をポンポンと撫で、フフッと笑い、
『そう身構えなくともよい』
『望むところだわって…一体何を想像してるんだい…フフ』
そう言い残して笑いながらギムレットは部屋を出ていった。
かかって来い!と言わんばかりに身構えていただけに、肩透かしを食らったような気持ちだった。
同時に安心して力が抜けた…。
ベッドに突っ伏して今日一日のことを振り返っていた。
あれが悪評高いデューク王国のギムレット王子…私の夫となる男。
想像していたような野蛮な男ではなかった…
むしろ……。
あの瞳、あの指先、あの香り……。
思い出すと胸がザワつくようだった。
あぁ…いけないわ。
惑わされてはいけない!
あの男は祖国の敵!
私は、滅亡の危機にある祖国パナギア王国を陥れたデューク王国を許さない。
必ず復讐してやるんだ…。
きっと裏の顔があるはず、必ずやその本性を暴き、陰謀の数々を白日のもとに晒してやる。
まずはケイトとして受け入れてもらえたようだわ。
でも油断禁物ね。
……
ケイト姉様…
お元気かしら、また体調悪くされてないかしら…。
どうかアレクと幸せになって…。
明日から婚礼の儀式、三日三晩続くと言っていたわ…この慌ただしい中でさすがの私も耐えられるかしら。
ケイト姉様…会いたい…。
あの澄み渡った空の下で笑いたい…。
ホームシックで涙がこぼれ落ちたのが先か、眠りについたのが先か…分からないほどにスゥーーーッと眠ってしまったのであった。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。
櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。
ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。
気付けば豪華な広間。
着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。
どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。
え?この状況って、シュール過ぎない?
戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。
現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。
そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!?
実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。
完結しました。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる