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第1章

終~誰かのある日の昼下がりに~

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「ねぇ、由良くん。良けれb」
と、王子が言いかけた時。

「おーいっ!結斗っ?」

ドタバタと保健室へ駆け込んで来たのは、
翔だった。

「あっ、翔!」

僕を見た翔は、ハタと静止する。その顔は非常に驚いた表情をしていた。

あっと思い、ハッとする。

僕は、半裸だった。

「ほーら、由良くん?いろいろ終わったし、服、着よっか?」

と、すごい笑顔で話しかけるのは王子である。

「っは?え、結斗…いろいろって」

と、呆然とする翔。
そして、王子を見る。僕には翔がどんな顔で王子を見ていたのか分からなかった。

「え?いや、違って!ただ、僕は、怪我を有無を確認してもらっただけだよ!」

何故か焦る僕。

「ああ、なんだ、そういうことね。」

翔はホッとしたように言った。僕はそそくさと体操服を着る。

翔はジロっと王子を見ると、

「…へぇー、王子って面倒見がいいんだねぇ~。
性格まで素敵なんてねぇ~?」

と、翔が茶化すように言う。

……まったく、翔は性格さえどうにかすれば、モテるのに……

そんな挑発をさらりと受け流す王子。

「クスクスっ。王子だなんて大袈裟だよ。面倒見がいいとかじゃなくて、

___ただ、あの時、彼の近くにいたからだよ?」

と、笑顔でしれっと答える。

翔は、王子を見て何か呟く。その呟きは僕の位置からは聞こえない。
 
そして僕の方へ顔を向ける翔。

「もうすぐ、保健室の先生が来るけど…見てもらうか?」

「いや、もう元気だよ。」

と、ベットから立つと、ふらっとする。

「おおっとっ」

と、サッと翔に支えられる。

「熱中症なんだから、ゆっくり動いた方がいいぞ」

…やはり、
周りからしたらと見なされているのか…。

納得する頭の片隅では、どこか腑に落ちないところがある。

でも、思い出すなと危険信号が発される。

ま…いっか!

「もう、下校時刻だから、ほれ、鞄持ってきたから帰ろーぜ!」

「ありがとう!」

この男は、性格は、まぁ良くないが、自分の好いている人には、とてつもなく優しい。

僕は、あっと気づき王子を見る。

「園宮くんは、どうするの?」

ボーッと僕の方を見ていた彼は、はっと気づき、

「じゃあ僕は、結斗くんが元気になったことを先生方に伝えておくよ。

…それじゃ、またね」

にこやかに手を振られた。

ふむ………やっぱり、気遣いまでできるのか…まるで翔と大違いだ…。

何かを察した翔は、くるりと振り向く。
「結斗ー?今失礼なこと考えてたー?」

「えっ!ち、違うよっ!!」


いつも通り、僕らは帰路に着いた。




そう、思えばこの時から

とうの昔に止められた

2つの時の歯車は、ゆっくり、きしみながら動いていった。
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