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第2章
白兎と猫
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ドアノブに手を掛ける。
僕の手なのか、ドアノブなのか、どちらが冷たいのか分からないが指先の冷えた感覚がする。
扉を開くと、そこには宇佐美がベットに腰かけていた。
彼女は、僕の姿を確認した後、猫宮の方を見ると睨んだ。
後から入った猫宮は、カチャンと扉を閉めた。
扉が閉まったのと同時に、宇佐美は口を開いた。
「…なぜ、猫宮君がいるの?」
問いかけられた猫宮は、回答せずにストンと絨毯の上に座った。
「まあまあ。そんな怒らないでよ。女の子の家に長居する訳にはいかないしさ。無駄話はやめようよ。」
ヘラりとした口調で言う。言葉では急げと言っているが、態度は間延びしているという矛盾。
それがより彼女を苛立たせたのか、彼女の顔は不機嫌を示していた。
このままでは険悪な雰囲気になってしまう。
なにか話さなくては。
「宇佐美さん。た、体調は大丈夫かな?」
こちらを見た彼女は微笑んだ。
「ええ、大丈夫よ。少し精神的に疲れていたみたい。どうぞ、透くんも座って?」
優雅な仕草で掌をすっと床に指した。
「ありがとう。」
言いながら座った。
「宇佐美さん。俺は、赤野さんについてどう思っているのか聞きたい。」
その言葉は、宇佐美を硬直できる魔法のように聞こえた。
その魔法を振り切り、問いで返す。
「猫宮君は、一体どこまで知っているの?」
もうこちらを見なくなった彼女は、俯きながら答えた。
そんな彼女を見つめながら、猫宮は答えた。
「そんなには知らない。ただ、赤野さんはやっと…
―――――― 自由になれるってことだけ。」
僕の手なのか、ドアノブなのか、どちらが冷たいのか分からないが指先の冷えた感覚がする。
扉を開くと、そこには宇佐美がベットに腰かけていた。
彼女は、僕の姿を確認した後、猫宮の方を見ると睨んだ。
後から入った猫宮は、カチャンと扉を閉めた。
扉が閉まったのと同時に、宇佐美は口を開いた。
「…なぜ、猫宮君がいるの?」
問いかけられた猫宮は、回答せずにストンと絨毯の上に座った。
「まあまあ。そんな怒らないでよ。女の子の家に長居する訳にはいかないしさ。無駄話はやめようよ。」
ヘラりとした口調で言う。言葉では急げと言っているが、態度は間延びしているという矛盾。
それがより彼女を苛立たせたのか、彼女の顔は不機嫌を示していた。
このままでは険悪な雰囲気になってしまう。
なにか話さなくては。
「宇佐美さん。た、体調は大丈夫かな?」
こちらを見た彼女は微笑んだ。
「ええ、大丈夫よ。少し精神的に疲れていたみたい。どうぞ、透くんも座って?」
優雅な仕草で掌をすっと床に指した。
「ありがとう。」
言いながら座った。
「宇佐美さん。俺は、赤野さんについてどう思っているのか聞きたい。」
その言葉は、宇佐美を硬直できる魔法のように聞こえた。
その魔法を振り切り、問いで返す。
「猫宮君は、一体どこまで知っているの?」
もうこちらを見なくなった彼女は、俯きながら答えた。
そんな彼女を見つめながら、猫宮は答えた。
「そんなには知らない。ただ、赤野さんはやっと…
―――――― 自由になれるってことだけ。」
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